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第241話 戦いの果て、帰還の途へ
朝焼けが、瓦礫の山を静かに照らしていた。
かつて聖なる象徴であったはずの大聖堂は、今や原形を留めない。
崩れ落ちた石壁、折れた尖塔、散乱する瓦礫――
そこに、昨日までの狂気と暴走の痕跡が、はっきりと残されていた。
アルフたちは、その跡地に背を向けるように歩き出す。
夜の戦いを越え、ようやく訪れた朝。
冷たい空気が肺に沁み込み、身体に残る疲労をはっきりと意識させる。
だが、それでも足は止まらなかった。
「……歩けるか」
シオンが、傍らの黒龍――ルーナを気遣うように声をかける。
ルーナは、まだ顔色が優れない。
だが、両脇を支える存在があった。
「無理はするな」
カノンが、低い声で言う。
反対側では、シエラがそっと腕を貸していた。
三体の古代龍が、ひとりの同胞を支えながら歩く光景は、どこか不思議で、しかし自然だった。
「……ありがとう」
ルーナが、小さく呟く。
その声は弱々しいが、確かに生きている声だった。
少し後ろを歩いていたアルフは、その様子を見つめながら、静かに歩調を合わせる。
「もう大丈夫だ」
そう声をかけると、ルーナはゆっくりと顔を上げた。
「……本当に?」
「約束する。もう誰にも、こんなことはさせない」
アルフの言葉に、嘘はなかった。
それは決意であり、誓いだった。
ルーナは一瞬目を伏せ――
そして、小さく、しかし確かに頷いた。
その背後では、王都軍が慌ただしく動いている。
崩壊した教会跡地はすでに完全に制圧され、
残党の司祭や騎士たちは武装を解除され、次々と拘束されていた。
抵抗する者はいない。
ある者は虚ろな目で地面を見つめ、
ある者は自らの行いを悔いるように唇を噛み、
またある者は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「これで……終わりだな」
誰かがそう呟いた。
終わったのだ。
禁忌は止められ、狂気は断ち切られた。
だが、同時に思う。
――終わらせるだけでは、足りない。
その想いを胸に抱いたまま、アルフは歩き続ける。
「アルフ」
不意に、声をかけられた。
振り返ると、ルカとルナがそこにいた。
二人とも、戦いの疲労を隠しきれてはいない。
それでも、何も言わずにアルフの両側へ回り、そっと支える。
「……すまない」
「いい」
ルナが短く言った。
「今は、無理しないで」
ルカも、静かに頷く。
言葉は少ない。
だが、それで十分だった。
仲間として、家族として、そこにいる。
それだけで、アルフの胸は少しだけ軽くなった。
しばらく歩いた先で、ひとりの男が合流してきた。
「アルフ様」
クレオスだった。
夜明けの光を背に、彼は深く息を整えている。
「先に向かい王城へ向かい国王への報告は、私が行ってきます」
即座に、そう告げた。
「教会、禁呪、黒龍……全てを正確に伝える必要があります」
アルフは頷いた。
「頼む」
「おまかせ下さい」
クレオスは一礼すると、踵を返す。
去り際、ちらりと黒龍を見る。
「……必ず、守り抜いて下さい」
「当然だ」
アルフは即答した。
クレオスはそれ以上何も言わず、王都へ向かって駆けていった。
その背を見ながら、フレイとクレハが前に出る。
「アルフ」
フレイが口を開く。
「我らも同行する」
「ルーナの護衛だ」
クレハが続ける。
「王都へ向かう道中、何が起きるかわからぬ」
アルフは少し考え――
そして、深く頷いた。
「頼む」
それは、命を預けるという意味でもあった。
こうして、進む道は決まった。
ルーナを守りながら、王都へ。
戦いの終わりを、正式に告げるために。
歩きながら、アルフの脳裏には、ひとつの光景が浮かぶ。
――ニーベル村。
果樹園。
畑。
朝の霧。
子どもたちの笑い声。
ラファの穏やかな顔。
村の仲間たちの声。
「……ちゃんと、話さないとな」
小さく呟く。
何があったのか。
何を守ったのか。
何を失い、何を得たのか。
その全てを、帰ったら伝えよう。
朝焼けの中、一行は歩き続ける。
瓦礫の地を離れ、
戦場を後にし、
それぞれの“帰る場所”へ向かって。
戦いは終わった。
だが――
その果てに続く道は、確かにここから始まっていた。
かつて聖なる象徴であったはずの大聖堂は、今や原形を留めない。
崩れ落ちた石壁、折れた尖塔、散乱する瓦礫――
そこに、昨日までの狂気と暴走の痕跡が、はっきりと残されていた。
アルフたちは、その跡地に背を向けるように歩き出す。
夜の戦いを越え、ようやく訪れた朝。
冷たい空気が肺に沁み込み、身体に残る疲労をはっきりと意識させる。
だが、それでも足は止まらなかった。
「……歩けるか」
シオンが、傍らの黒龍――ルーナを気遣うように声をかける。
ルーナは、まだ顔色が優れない。
だが、両脇を支える存在があった。
「無理はするな」
カノンが、低い声で言う。
反対側では、シエラがそっと腕を貸していた。
三体の古代龍が、ひとりの同胞を支えながら歩く光景は、どこか不思議で、しかし自然だった。
「……ありがとう」
ルーナが、小さく呟く。
その声は弱々しいが、確かに生きている声だった。
少し後ろを歩いていたアルフは、その様子を見つめながら、静かに歩調を合わせる。
「もう大丈夫だ」
そう声をかけると、ルーナはゆっくりと顔を上げた。
「……本当に?」
「約束する。もう誰にも、こんなことはさせない」
アルフの言葉に、嘘はなかった。
それは決意であり、誓いだった。
ルーナは一瞬目を伏せ――
そして、小さく、しかし確かに頷いた。
その背後では、王都軍が慌ただしく動いている。
崩壊した教会跡地はすでに完全に制圧され、
残党の司祭や騎士たちは武装を解除され、次々と拘束されていた。
抵抗する者はいない。
ある者は虚ろな目で地面を見つめ、
ある者は自らの行いを悔いるように唇を噛み、
またある者は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「これで……終わりだな」
誰かがそう呟いた。
終わったのだ。
禁忌は止められ、狂気は断ち切られた。
だが、同時に思う。
――終わらせるだけでは、足りない。
その想いを胸に抱いたまま、アルフは歩き続ける。
「アルフ」
不意に、声をかけられた。
振り返ると、ルカとルナがそこにいた。
二人とも、戦いの疲労を隠しきれてはいない。
それでも、何も言わずにアルフの両側へ回り、そっと支える。
「……すまない」
「いい」
ルナが短く言った。
「今は、無理しないで」
ルカも、静かに頷く。
言葉は少ない。
だが、それで十分だった。
仲間として、家族として、そこにいる。
それだけで、アルフの胸は少しだけ軽くなった。
しばらく歩いた先で、ひとりの男が合流してきた。
「アルフ様」
クレオスだった。
夜明けの光を背に、彼は深く息を整えている。
「先に向かい王城へ向かい国王への報告は、私が行ってきます」
即座に、そう告げた。
「教会、禁呪、黒龍……全てを正確に伝える必要があります」
アルフは頷いた。
「頼む」
「おまかせ下さい」
クレオスは一礼すると、踵を返す。
去り際、ちらりと黒龍を見る。
「……必ず、守り抜いて下さい」
「当然だ」
アルフは即答した。
クレオスはそれ以上何も言わず、王都へ向かって駆けていった。
その背を見ながら、フレイとクレハが前に出る。
「アルフ」
フレイが口を開く。
「我らも同行する」
「ルーナの護衛だ」
クレハが続ける。
「王都へ向かう道中、何が起きるかわからぬ」
アルフは少し考え――
そして、深く頷いた。
「頼む」
それは、命を預けるという意味でもあった。
こうして、進む道は決まった。
ルーナを守りながら、王都へ。
戦いの終わりを、正式に告げるために。
歩きながら、アルフの脳裏には、ひとつの光景が浮かぶ。
――ニーベル村。
果樹園。
畑。
朝の霧。
子どもたちの笑い声。
ラファの穏やかな顔。
村の仲間たちの声。
「……ちゃんと、話さないとな」
小さく呟く。
何があったのか。
何を守ったのか。
何を失い、何を得たのか。
その全てを、帰ったら伝えよう。
朝焼けの中、一行は歩き続ける。
瓦礫の地を離れ、
戦場を後にし、
それぞれの“帰る場所”へ向かって。
戦いは終わった。
だが――
その果てに続く道は、確かにここから始まっていた。
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2026.03.30 内容紹介一部修正