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異世界の異変
第19話「王都からの急報」
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深夜の店内は静まり返っていた。冷蔵庫の低い駆動音と、壁掛け時計の針が進む音だけが響いている。
「カラン」
不意にドアが開き、重い靴音が床を叩いた。鎧の金具がわずかに鳴り、兵士が二人、足早に入ってきた。
一人はまだ若く、肩から大きな荷袋を下げている。もう一人は髭をたくわえた年長の兵士で、手にした巻物状の地図をカウンター横に広げた。紙の上に指を走らせながら、低く言う。
「王都から緊急命令だ。明朝には北へ出発する」
荷袋の中へ、乾パンや干し肉、保存水が次々と放り込まれていく。若い兵士の動きは急ぎながらも慣れたものだった。
レンはレジの前に立ち、表情を変えずにカゴを受け取る。
「いらっしゃいませ」
声はいつも通り。だが、その耳は兵士の一言一句を逃さない。
「物資は足りるか?」
「足りなきゃ現地調達だ。だが……あの辺りはもう危うい」
そんな断片的な会話が、冷えた空気を揺らして届いてきた。
会計を終えると、年長の兵士は缶コーヒーを一つ手に取り、プルタブを開けた。
「助かった」
短く言って一口含み、疲れた目を細める。
レンは深くお辞儀をして送り出す。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
「カラン」
扉が閉まり、二人の背中が夜の闇に消えていった。
レジの奥に立ちながら、レンはしばらくその方向を見つめ続けていた。
(北へ……王都からの命令……一体何が広がっているの……?)
店内のBGMが止まった静けさの中で、胸のざわめきだけがやけに大きく響いていた。
「カラン」
不意にドアが開き、重い靴音が床を叩いた。鎧の金具がわずかに鳴り、兵士が二人、足早に入ってきた。
一人はまだ若く、肩から大きな荷袋を下げている。もう一人は髭をたくわえた年長の兵士で、手にした巻物状の地図をカウンター横に広げた。紙の上に指を走らせながら、低く言う。
「王都から緊急命令だ。明朝には北へ出発する」
荷袋の中へ、乾パンや干し肉、保存水が次々と放り込まれていく。若い兵士の動きは急ぎながらも慣れたものだった。
レンはレジの前に立ち、表情を変えずにカゴを受け取る。
「いらっしゃいませ」
声はいつも通り。だが、その耳は兵士の一言一句を逃さない。
「物資は足りるか?」
「足りなきゃ現地調達だ。だが……あの辺りはもう危うい」
そんな断片的な会話が、冷えた空気を揺らして届いてきた。
会計を終えると、年長の兵士は缶コーヒーを一つ手に取り、プルタブを開けた。
「助かった」
短く言って一口含み、疲れた目を細める。
レンは深くお辞儀をして送り出す。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
「カラン」
扉が閉まり、二人の背中が夜の闇に消えていった。
レジの奥に立ちながら、レンはしばらくその方向を見つめ続けていた。
(北へ……王都からの命令……一体何が広がっているの……?)
店内のBGMが止まった静けさの中で、胸のざわめきだけがやけに大きく響いていた。
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