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忍び寄る影編
第36話「影の歩み」
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深夜。
カランと扉が鳴り、鎧の金具をかすかに鳴らしながら騎士団員が数名入ってきた。夜更けのせいか、顔には疲れが濃く刻まれている。それでも目だけは鋭く、周囲を警戒する視線を絶やしていなかった。
彼らは無言で店内を回り、保存食や干し肉、瓶詰めの水を次々とかごへ入れていく。その量は通常の買い物ではなく、まるで遠征前の備蓄のようだった。
レジにかごを置くと、若い隊員が小声で同僚に漏らす。
「……奴らは、人のように歩くんだ。だが影の中から、突然現れる」
「影の中から?」
隣の隊員が、眉をひそめて聞き返す。
「ああ。火の届かない闇から、すっとな。音もなく。歩き方は確かに人と変わらないのに……気配がまるでない。目を逸らした瞬間、すぐ傍に立っていたりするんだ」
別の隊員が苛立つように吐き捨てる。
「剣を抜いて構えても、奴らは闇に戻るみたいに消える。斬ることもできねぇ。影を相手にしてるみたいで……背筋が凍った」
レンはバーコードを読み取る手を一瞬止めかけた。
だがすぐに笑顔を取り戻し、あくまで平静を装ってレジを打ち続ける。
ニナは袋詰めをする指先を強く握り、震えを抑えようとしていた。彼女の耳にも、騎士たちの低い声が突き刺さっている。
「影に狙われてるような気分だ……見えない敵ほど、厄介なものはない」
そう吐き出す隊員の声は、店内の冷蔵庫の低い唸りと蛍光灯の振動音に溶け込み、かえって不気味さを増幅させた。
会計を終えた騎士団員たちは、缶コーヒーを握りしめ「これで夜通しでも持つ」と互いに声を掛け合い、袋を抱えて扉の向こうへ消えていった。
カラン――扉が閉まる音が、妙に重く店内に残る。
レンはいつもの声で言葉を投げた。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
しかし胸の奥では、不安が冷たい霧のように広がっていた。
(影から現れる……やはり、ただの噂じゃない。もう町のすぐ外まで迫っているのかもしれない)
蛍光灯の白い光が、今夜はやけに頼りなく思えた。
カランと扉が鳴り、鎧の金具をかすかに鳴らしながら騎士団員が数名入ってきた。夜更けのせいか、顔には疲れが濃く刻まれている。それでも目だけは鋭く、周囲を警戒する視線を絶やしていなかった。
彼らは無言で店内を回り、保存食や干し肉、瓶詰めの水を次々とかごへ入れていく。その量は通常の買い物ではなく、まるで遠征前の備蓄のようだった。
レジにかごを置くと、若い隊員が小声で同僚に漏らす。
「……奴らは、人のように歩くんだ。だが影の中から、突然現れる」
「影の中から?」
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「ああ。火の届かない闇から、すっとな。音もなく。歩き方は確かに人と変わらないのに……気配がまるでない。目を逸らした瞬間、すぐ傍に立っていたりするんだ」
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レンはバーコードを読み取る手を一瞬止めかけた。
だがすぐに笑顔を取り戻し、あくまで平静を装ってレジを打ち続ける。
ニナは袋詰めをする指先を強く握り、震えを抑えようとしていた。彼女の耳にも、騎士たちの低い声が突き刺さっている。
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そう吐き出す隊員の声は、店内の冷蔵庫の低い唸りと蛍光灯の振動音に溶け込み、かえって不気味さを増幅させた。
会計を終えた騎士団員たちは、缶コーヒーを握りしめ「これで夜通しでも持つ」と互いに声を掛け合い、袋を抱えて扉の向こうへ消えていった。
カラン――扉が閉まる音が、妙に重く店内に残る。
レンはいつもの声で言葉を投げた。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
しかし胸の奥では、不安が冷たい霧のように広がっていた。
(影から現れる……やはり、ただの噂じゃない。もう町のすぐ外まで迫っているのかもしれない)
蛍光灯の白い光が、今夜はやけに頼りなく思えた。
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