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決戦編
第100話「総攻撃の火の粉」
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その夜は、いつもと違っていた。
深夜零時を過ぎ、ミッドナイトマートの照明が淡く光り始める頃には、すでに街全体がざわめきに包まれていた。店の外からは、甲冑の擦れる音や兵士たちの掛け声が途切れることなく聞こえ、まるで街そのものが鼓動を刻んでいるかのようだった。
「……音がいつもより多いですね」
ニナがレジの奥で声を潜める。彼女の両手は棚に並べる商品の上で止まったまま、窓の外へと向けられていた。
レンもつられるように顔を上げ、ガラス越しに夜の闇を覗き込む。
遠く、街の外れの方で赤い閃光が走り、夜空を一瞬だけ照らした。次いで地面を震わせるような轟音が届き、窓ガラスがかすかに揺れた。
「……始まったのか」
レンの低いつぶやきに、ニナは小さく頷いた。
⸻
それからしばらく、店の周囲は落ち着かない空気に包まれ続けた。
数人の兵士が駆け込んできて、パンや水袋、栄養ゼリーを籠に放り込み、息を荒げながら会計を済ませる。
「前線が押されてる。すぐ戻らなきゃ」
そう吐き捨てるように言い残し、彼らは夜の闇に消えていった。
扉が閉まるたびに、レンとニナは互いに顔を見合わせた。いつもの「またお越し下さいませ」が、今日は祈りの言葉のように胸に重く響いた。
⸻
しばらくして、地の底から響くような鬨(とき)の声が店の前まで届いた。
「おおおおおおおっ!」
兵士たちの叫び声が夜を震わせ、次いで剣と剣がぶつかる甲高い金属音が連続して響く。
レンは思わずレジ台の下に身をかがめた。だが窓越しに目を向けると、視界の端に、信じられないものが映り込んだ。
街の外、闇の向こうから吹き荒れる炎。その炎が爆ぜ、火の粉となって宙に舞い、風に乗って街の方角へ押し寄せてくる。
赤く揺らめく火の粉は、遠目にもはっきりと見えた。まるで夜空に無数の流星が落ちてきたかのように。
「……店からでも見えるなんて」
ニナが蒼白な顔で呟く。彼女の声はかすれて震えていた。
⸻
火の粉はすぐに消えたが、その直後に響いたのは、耳を塞ぎたくなるような爆発音だった。
「ドォォォォン!」
街の奥まで揺さぶる轟音に、商品棚の缶詰がカタカタと音を立てて震える。
「レンさん……これ、大丈夫なんですか」
「……わからない。けど――」
レンはニナの肩に手を置き、できるだけ落ち着いた声で言った。
「俺たちはここでいつも通り店を続ける。それしかできないから」
ニナは強く唇を噛みしめ、やがて小さく頷いた。
⸻
その直後、扉が勢いよく開いた。
「急げ! 水と食料を!」
泥にまみれた兵士たちが駆け込んできて、次々に商品を籠へと投げ込む。レジに並ぶ兵士の顔は煤に黒く汚れ、額からは血が流れている者もいた。
レンは慌てずにレジを打ち、袋詰めを続ける。ニナは横で水筒やパンを手際よくまとめ、震える声でそれでも笑顔を添えた。
「どうぞ……お気をつけて」
兵士たちは無言で袋を受け取り、再び夜の闇に駆け戻っていった。扉が閉まると同時に、再び外から剣戟の音が押し寄せてくる。
⸻
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
レンは兵士たちの背に向かって、いつもの言葉をかけた。
だが今夜ばかりは、その一言が胸を締めつけた。
――次に彼らが戻って来られる保証は、どこにもないのだから。
深夜零時を過ぎ、ミッドナイトマートの照明が淡く光り始める頃には、すでに街全体がざわめきに包まれていた。店の外からは、甲冑の擦れる音や兵士たちの掛け声が途切れることなく聞こえ、まるで街そのものが鼓動を刻んでいるかのようだった。
「……音がいつもより多いですね」
ニナがレジの奥で声を潜める。彼女の両手は棚に並べる商品の上で止まったまま、窓の外へと向けられていた。
レンもつられるように顔を上げ、ガラス越しに夜の闇を覗き込む。
遠く、街の外れの方で赤い閃光が走り、夜空を一瞬だけ照らした。次いで地面を震わせるような轟音が届き、窓ガラスがかすかに揺れた。
「……始まったのか」
レンの低いつぶやきに、ニナは小さく頷いた。
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それからしばらく、店の周囲は落ち着かない空気に包まれ続けた。
数人の兵士が駆け込んできて、パンや水袋、栄養ゼリーを籠に放り込み、息を荒げながら会計を済ませる。
「前線が押されてる。すぐ戻らなきゃ」
そう吐き捨てるように言い残し、彼らは夜の闇に消えていった。
扉が閉まるたびに、レンとニナは互いに顔を見合わせた。いつもの「またお越し下さいませ」が、今日は祈りの言葉のように胸に重く響いた。
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しばらくして、地の底から響くような鬨(とき)の声が店の前まで届いた。
「おおおおおおおっ!」
兵士たちの叫び声が夜を震わせ、次いで剣と剣がぶつかる甲高い金属音が連続して響く。
レンは思わずレジ台の下に身をかがめた。だが窓越しに目を向けると、視界の端に、信じられないものが映り込んだ。
街の外、闇の向こうから吹き荒れる炎。その炎が爆ぜ、火の粉となって宙に舞い、風に乗って街の方角へ押し寄せてくる。
赤く揺らめく火の粉は、遠目にもはっきりと見えた。まるで夜空に無数の流星が落ちてきたかのように。
「……店からでも見えるなんて」
ニナが蒼白な顔で呟く。彼女の声はかすれて震えていた。
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火の粉はすぐに消えたが、その直後に響いたのは、耳を塞ぎたくなるような爆発音だった。
「ドォォォォン!」
街の奥まで揺さぶる轟音に、商品棚の缶詰がカタカタと音を立てて震える。
「レンさん……これ、大丈夫なんですか」
「……わからない。けど――」
レンはニナの肩に手を置き、できるだけ落ち着いた声で言った。
「俺たちはここでいつも通り店を続ける。それしかできないから」
ニナは強く唇を噛みしめ、やがて小さく頷いた。
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その直後、扉が勢いよく開いた。
「急げ! 水と食料を!」
泥にまみれた兵士たちが駆け込んできて、次々に商品を籠へと投げ込む。レジに並ぶ兵士の顔は煤に黒く汚れ、額からは血が流れている者もいた。
レンは慌てずにレジを打ち、袋詰めを続ける。ニナは横で水筒やパンを手際よくまとめ、震える声でそれでも笑顔を添えた。
「どうぞ……お気をつけて」
兵士たちは無言で袋を受け取り、再び夜の闇に駆け戻っていった。扉が閉まると同時に、再び外から剣戟の音が押し寄せてくる。
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「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
レンは兵士たちの背に向かって、いつもの言葉をかけた。
だが今夜ばかりは、その一言が胸を締めつけた。
――次に彼らが戻って来られる保証は、どこにもないのだから。
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