賢者転生〜世界最強の賢者、赤ん坊からやり直す〜

KAORUwithAI

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第1話 人生二周目の始まり

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 ここセフィリア王国で
俺、ゼノン・マギウスは魔法の研究に
人生のすべてを捧げた男だ。

 火、水、風、土。
 古典四属性から始まり、雷、氷、光、闇、空間、時間、精神。
 ありとあらゆる系統を学び、編み、壊し、再構築し、ついには「不可能」と
された無詠唱魔法すら完成させた。

「ゼノン先生……」

 ベッドの周囲には、かつての弟子たちが集まっていた。
 皆、いい年をしている。白髪混じりの者もいれば、すでに孫がいると聞いた者もいる。

 俺は天井を見つめながら、ゆっくりと息を吐いた。

「泣くな。わしは魔法の境地に立てた事
そしてお前たちの様な優秀な弟子に恵まれて幸せだった。」

 そう言うと、何人かが苦笑した。
 だが、彼らの目は赤い。

 壮絶な人魔大戦を乗り越え魔界を封印し
そして幾人もの魔術師を生み出した俺は、
いつの間にか、世界最強の賢者と呼ばれるようになっていた。

 人生に悔いがあるかと聞かれれば――。

「概ね、満足だ」

 本心だった。
 魔法は楽しかった。研究は刺激的だった。
 世界の法則を一つ解き明かすたび、心が震えた。

 だが。

 ――一つだけ、後悔がある。

(……女の子と、付き合ったことがない)

 いや、誤解しないでほしい。
 別に禁欲主義だったわけでも、女性が嫌いだったわけでもない。

 ただ、タイミングがなかったのだ。

 学生時代は研究、研究、研究。
 周りが「彼女ができた」「初デートだ」と騒いでいる横で、俺は魔法陣の改良をしていた。

 大人になれば――。

『結婚しました』
『子供が生まれました』
『家を建てました』

 同級生から届く連絡は、そんなものばかりだった。

 俺?
 俺はと言えば、「第七層魔力循環理論の再検証」だ。

「どチクショー……」

 死の間際になって、そんな言葉が口をついて出るとは思わなかった。

(魔法の才能があっても、モテなかった)

 これは真実である。

 いや、誘われたことがないわけじゃない。
 ただ、研究が忙しかった。
 あと、正直に言うと、何を話せばいいのかわからなかった。

(……一度くらい、甘い想いをしてもよかったじゃないか)

 手を伸ばせば届いたかもしれない。
 それでも、俺は魔法を選び続けた。

(もし、生まれ変わるなら)

 視界が徐々に暗くなる。

(次は……モテたい。女の子と、付き合ってみたい)

 そんな、あまりにも俗っぽい願いを最後に抱きながら――
 俺は息を引き取った。

 ――はずだった。

「……ん?」

 妙だ。

 闇が来ない。
 代わりに、ざわざわとした音が聞こえる。

「よかった……泣いてる……生きてるわ」

「元気な子だな」

 人の声?

 俺はゆっくりと意識を浮上させる。
 重たい瞼を開こうとすると、勝手に開いた。

 そこにいたのは、知らない男女だった。

 若い。
 いや、俺から見れば、やけに大きい。

「……?」

 俺は何か言おうとして、代わりに「うー」と声を出した。

「ほら、手を動かしてる」

 反射的に手を伸ばす。

 ――小さい。

(……は?)

 目の前にあるのは、どう見ても赤ん坊の手だった。
 しわしわで、短くて、力も入らない。

(これは……俺の手、なのか?)

 瞬間、すべてを理解した。

(ああ、なるほど)

 記憶はある。
 思考もはっきりしている。
 だが、身体だけが圧倒的に未完成。

(俺は……転生したんだな)

 魔法理論的に考えれば、魂の情報保存と再構築。
 可能性としては否定できない。

 否定できないが――。

(よりにもよって、赤ん坊スタートか)

 天井を見上げながら、俺は心の中でため息をついた。

(まあ、いい)

 次の人生があるなら、今度こそ。

(魔法も極める。だが、それだけじゃない)

 俺は小さな手を握りしめる。

(今度こそ、恋をしてやる)

 賢者としての記憶を持ったまま、
 新しい人生が、静かに始まった。
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