賢者転生〜世界最強の賢者、赤ん坊からやり直す〜

KAORUwithAI

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第14話 魔力を体外へ

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 体内循環の訓練が安定してきた頃、
 ルークは次の段階へ進むことを決めた。

(……そろそろ、外だな)

 魔力を感じ、巡らせ、制御する。
 ここまでは“内側”の話だ。

 だが魔法とは、本来――
 外へ出して、初めて意味を持つ。

 問題は場所だった。

「……おうちの、なかは、だめ」

 ルークがそう言うと、セシリアとミアは顔を見合わせた。

「危ないってこと?」

「……うん」

 体外放出は、制御を誤れば破裂や暴発につながる。
 家の中でやるのは論外だった。

 そこで三人が向かったのは、
 村外れの、人がほとんど来ない空き地だった。

 草が伸び、石が転がるだけの場所。
 畑からも家からも、少し距離がある。

「ここなら……だいじょうぶ」

 ルークはそう言って、二人を向かい合わせに座らせた。

「きょうは……からだの、そと」

「外に出すんだよね」

「……うん」

 セシリアとミアの表情には、期待と不安が混じっていた。

 体内循環と違い、
 体外放出は“結果”がはっきり見える。

 成功も失敗も、誤魔化せない。

「まず……ぼく、みせる」

 ルークは、ほんの一瞬だけ集中した。

 体内を巡る魔力を、
 掌へと集め、指先から――。

 ふわり。

 空気が、わずかに揺れる。

 風でも光でもない。
 だが、確かに“何か”が外へ出た。

「……いまの?」

「……うん」

 二人は、目を見開いた。

「すご……」

「でも、地味ね」

「……これで、いい」

 派手さはいらない。
 重要なのは、制御された放出だ。

「じゃあ……つぎ」

 最初に挑戦したのは、ミアだった。

 目を閉じ、呼吸を整え、
 体内の魔力を掌へ導く。

「……」

 だが。

 何も起こらない。

「……でない」

「……だいじょうぶ」

 ルークは落ち着いて言った。

「いまは……でなくて、いい」

「え?」

「……うごかす、れんしゅう」

 ミアは何度か試したが、
 結果は同じだった。

「……むずかしい」

「……つぎ、セシリア」

 セシリアは深く息を吸い、
 真剣な表情で掌を前に出した。

(……集中)

 彼女は、体内循環の感覚を思い出す。
 巡らせ、集め、出口を意識する。

「……っ」

 次の瞬間。

 ――ぱんっ。

 乾いた音と共に、
 空気が弾けた。

「きゃっ!?」

 衝撃に驚き、
 セシリアは思わず後ろへ倒れ――。

「……っ!」

 しりもちをついた拍子に、
 手首を強くひねってしまった。

「……いった……」

 顔を歪めるセシリア。

 それを見た瞬間、
 ルークの表情が変わった。

(……まずい)

 彼はすぐに駆け寄り、
 セシリアの手首をそっと取る。

「……うごかさないで」

「……うん」

 軽い捻挫だ。
 だが、放っておく理由はない。

 ルークは、意識を集中し――
 治癒魔法を掛けた。

 淡い温かさが、手首を包む。

 腫れが引き、
 痛みが、すっと消えていく。

「……あれ?」

 セシリアが、目を瞬かせる。

「……いたくない」

「……なおった」

 セシリアは一瞬、呆然とした後――
 すぐに、ぱっと顔を明るくした。

「……ありがと」

 そう言って、
 彼女は屈み込み――
 ルークの頬に、ちゅっとキスをした。

「……!」

 ルークが固まる。

 それを見ていたミアは、
 むっと頬を膨らませた。

「……ずるい」

「え?」

「いまの、ずるい」

「お礼よ?」

「……むぅ」

 ミアはぷいっと顔を逸らし、
 すぐに前を向いた。

「……次、わたし」

 今度は、先ほどよりも集中している。

 呼吸。
 循環。
 そして――出口。

「……っ」

 掌の前で、
 空気が、ふわりと揺れた。

 今度は、弾けない。

 破裂もしない。

 ただ、確かに――
 外へ出た。

「……できた?」

 不安そうに聞くミアに、
 ルークははっきり頷いた。

「……できた」

「……!」

 ミアの顔が、一気に明るくなる。

「……すごい?」

「……すごい」

 その言葉を聞いた瞬間、
 ミアは一歩近づいてきて、
 小さく言った。

「……じゃあ、あたま、なでて」

「……え?」

「ほめるとき、なでるでしょ?」

 ルークは一瞬戸惑ったが、
 そっと、ミアの頭に手を置いた。

 なでなで、と軽く撫でる。

「……」

 ミアは、頬を赤くして、
 にへっと笑った。

「……えへ」

 それを見て、
 セシリアが腕を組む。

「……なに、その差」

「さっき、キスしたでしょ」

「……う」

 小さな言い合い。

 だが、空気はどこか柔らかかった。

 それから三人は、
 休憩を挟みながら訓練を続けた。

 出力を抑え、
 暴れないように、
 同じ形で何度も。

 最初は不安定だった放出も、
 夕方には――。

「……これなら」

「……だいじょうぶ」

 二人とも、
 安定して魔力を体外へ出せるようになっていた。

 日は傾き、
 空がオレンジ色に染まる。

(……順調すぎるな)

 ルークは内心でそう思ったが、
 それを口には出さなかった。

 今は、喜んでいい。

 三人で、確実に前へ進んでいる。

 そして――。

(……これ以上は、まだ早い)

 無詠唱も、
 もっと高度な魔法も。

 それは、もう少し先の話だ。

 ルークは、二人の笑顔を見ながら、
 静かに次の段階を思い描いていた。

 この先に待つものを――
 まだ、誰も知らないまま。
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