上 下
32 / 50
モノグサ彼氏とラブラブ大作戦っ!

Chapter 32

しおりを挟む
 


 バスローブの前を閉じるため、腰に巻き付けていた紐を解かれた俺は、合わせを左右に開かれただけで、何も身に着けていない姿を天馬の前に晒すことになった。
 お風呂から上がってすぐに羽織ったバスローブは、俺の身体からだいぶ水気を吸い取ってくれていたけれど、完全に乾ききっていない俺の身体はまだしっとりとしていて、お風呂で温まった体温もそのままだった。
 だけど、俺はこの熱くなった身体の火照りが、お風呂上がりのせいなのか、今したばかりの天馬とのキスによって身体が熱を帯び始めたせいなのかがよくわからなかった。
 多分、どっちも当て嵌まるんだろうけれど、こうして天馬に組み敷かれてキスをされた俺の身体は完全に火がついて、ゆっくりと蕩け始めていた。
 きっと、身体の奥から湧き上がってくる熱を全て吐き出すまで、冷めることはないだろう。
「綺麗な身体だな」
 俺の裸なんてもう何度も見ているはずなのに、改めてまじまじと見詰められたうえ、挙げ句に褒められたりすると、俺は恥ずかしいのと嬉しいのとで、どういう顔をしていいのかがわからなかった。
「それに、白くて、柔らかそうで美味しそうだ」
「ぁっ、んっ……」
 加えて、俺の身体を「美味しそう」だなんて言いながら触れてくる天馬の手が、俺の薄い胸を優しく撫でるようにしてきた瞬間、身体がゾクゾクって震えるような快感が走った俺は、ギュッと目を閉じて、小さな声を漏らしてしまった。
 これまでこの手に何度も気持ち良くしてもらってきたと知っている俺の身体は、天馬の手に少しでも触れられると、その時の刺激や快感を思い出してしまうのか、身体が一気に疼き出してしまうのである。
 天馬の手に優しく撫でられただけで、感じて目を閉じてしまった俺ではあったけれど、天馬が今どんな顔をして俺を見ているのかが気になったから、勇気を出してギュッと閉じてしまった目を薄く開いてみると――。
「っ……!」
 天馬は愛しさを込めた優しい瞳で俺を見詰めていたから、その瞳に心が震えた俺は、手を伸ばして天馬に強く抱き付いた。
「お?」
 俺がいきなり天馬に抱き付いたものだから、天馬はちょっとびっくりしたみたいではあった。
「どうした? 智加。怖いのか?」
 そして、俺が急に怖気づいたと思ったらしく、天馬に抱き付く俺の身体を抱き返してくれて、俺の背中をよしよしって撫でてくれた。
 そんな風に天馬に甘やかされるのが大好きな俺ではあるけれど、天馬との初エッチに怖気づいたわけでは決してない。そこは天馬に誤解をして欲しくなかったから
「ううん。怖いんじゃなくて、天馬のことが大好きだなって思って」
 と答えると、天馬はきょとんとした顔になってから
「この状況でそんなことを言ってくるか。智加は」
 何故かほんのちょっと怖い顔になって、俺を責めるみたいな目で見詰めてきた。
(え? 俺、何かいけないことでも言っちゃった?)
 俺はただ、天馬が大好きだよって気持ちを素直に伝えただけなのに。天馬は何やらお気に召さなかったようで、俺は不安になってしまった。
 そんな気持ちがすぐに顔に出てしまう俺は、頼りなさそうにハの字に下がった眉毛と、如何にも“困っています”って顔で天馬を見た。
 俺の顔を見て、俺が不安を感じていることが一目でわかった天馬は、怒っているようにも見える顔を一転させ、屈託のない笑顔を見せてきた。
「なんだ、その顔。怒ったんじゃないよ。ただ、俺が色々と我慢してるってのに、智加が無邪気で可愛いことを言ってくるから、どうしてやろうかなって」
「えっと……」
 顔は笑っているのに、言っていることはちょっとだけ怖い天馬だった。
(どうしてやろうかな、って……)
 天馬は俺をどうするつもりで、俺はどうされちゃうんだろう。
 っていうか、色々と我慢してるって? 天馬は一体何を我慢しているんだろう。
 さっきまでうたた寝をしていた天馬だから、ようやくスイッチが入ったところなんじゃないかと思っていたんだけれど。
「天馬って我慢してるの?」
 気になるから聞いてみた。
 正直者で素直な天馬は、普段から思っていることはわりとなんでも言ってくれるから、日常生活の中で我慢していることはあまりなさそうにも見える。
 天馬からの答えはこうだった。
「ん? そりゃ俺だって我慢していることくらいはある。初めて智加とエッチなことをした時から、ずっと智加のことを抱きたいと思っていたし」
「あ……」
「まあ、俺は智加と付き合う前から、智加をずっとそういう目で見ていたわけではあるんだけどな。智加が俺でヌいてるって知って、実際に智加とやらしいことをしたら、智加とシたいって気持ちもそりゃ強くなるだろ」
「あうぅ……」
 全く恥ずかしがる様子もなく、赤裸々に語られる天馬の本音に俺の方が恥ずかしくなる。
 天馬が俺と付き合う前から俺のことを好きになってくれていた話は聞いたし、俺をそういう対象として見てくれている話も聞いたけど、こうして改めて言われると結構恥ずかしいものがあるよね。もちろん、嬉しいって気持ちも大きいけれど。
「でも、前にも言ったように、いざ最後までってなるとタイミングってものがわからなかったし、なまじ智加とエッチなことをしているから、いつもの延長みたいになるのが嫌だと思ってさ。タイミングを探しつつも暴走しそうになる性欲を抑えていたんだ」
「そうだったんだ……」
 いつもいっぱい天馬に気持ち良くしてもらっている俺が、物足りなさを感じてしまうのは性欲が強すぎるせいなのかな? って思っていたけれど、俺と一緒に気持ち良くなっている天馬も物足りなさを感じていたことを知ってホッとした。
 ちょっと恥ずかしい気持ちにはなっちゃうけれど、こうして本音を話してもらうたびに、俺と天馬が同じ気持ちであることが判明していくのは嬉しい。
「だけど、こうして一臣や光稀が思わぬサプライズでお膳立てしてくれたから、智加と最後までスるタイミングを掴めたっていうか、きっかけを与えてもらったって感じで助かったかもな」
「そうだね」
 お互い積極性にやや欠けると思っている俺は、今の天馬の言葉には激しく同意である。
 俺も天馬も恋愛事にはちょっと不器用だし、不慣れなところも沢山あるからさ。傍から見ている一臣や光稀は、なかなか思うように進展しない俺達が、見ていてもどかしくなることもあるのかもしれない。
 だからこそ、今回の天馬へのご褒美サプライズをこんなにも豪華にして、俺と天馬が初エッチせざるを得ない空気を作ってくれたのかもしれないよね。
 今日はびっくりするのことと戸惑うことに忙しくてちゃんとお礼を言えなかったけれど、明日二人に会った時は改めてちゃんとお礼を言わなくちゃだよね。
「とは言っても、俺、実は今めちゃくちゃ緊張してるんだけどな」
「え?」
 俺の目にはいつもと変わらない天馬の姿に見えていたのに。天馬本人が「めちゃくちゃ緊張してる」なんて言うものだから、一瞬耳を疑いそうになってしまった。
 俺はこの部屋に入った時からずっと緊張しっぱなしだったけれど、天馬も緊張しているんだ。うたた寝なんかしていたから、完全にリラックスしているのかと思っていたよ。
 でも、俺は一人になった時間も落ち着かなくてそわそわしているだけだったけれど、天馬は一人になった瞬間、気が抜けちゃっただけなのかもしれないよね。
 だって、お風呂に入る前の天馬はそれなりに落ち着かなさそうにしていたし、緊張のせいか、ぎこちなさみたいなものもあったもん。一人になった途端、その緊張感から解放されたついでに睡魔に襲われた……ってことだったのかもしれない。
 だけど、こうして目が覚めた後に俺と初エッチをする流れになってしまったら、いくらエッチなことはしてきた仲でも緊張してくれるのかな。
 お互いにめちゃくちゃ緊張しているなんて、如何にも初めてって感じで嬉しいな。
「智加のことはずっと抱きたいと思ってたけど、俺にはちゃんとした経験がないからな。自分が上手くできる自信はないし、ちゃんと智加を気持ち良くさせてやれるかどうかもわからない。もしかしたら智加に無理をさせてしまうかもしれないが、できる限り優しくする」
「天馬……」
 もう……天馬ったらそんなことを気にしているんだ。そんなことを言ったら、いつも天馬にされるがままに気持ち良くなって、ただ喘いでいるだけの俺はどうなっちゃうの? 完全に受け身なだけで、天馬にしてあげられることなんて何もないのに。
「だ……大丈夫だよ。そんなこと言ったら、俺もちゃんとした経験なんてないから、上手くできる自信なんてないし」
 自信だったら俺の方こそ全然ないと思ってしまう俺は、初めてのセックスに不安を感じている天馬を、どうにかして励ましてあげたかった。
 と言うより何よりも、いつも俺が天馬からの愛撫にどんな風に感じているのかを見ている天馬が、俺を気持ち良くさせる自信がないというのもおかしな話であるようにも思う。そんなことがあるはずないのにさ。
 だから
「それに、俺、天馬がいつもシてくれること、全部気持ちいいと思ってるよ。天馬が俺を気持ち良くさせられないなんてことは絶対にないんだから」
 実際の自分の体験に基づいて励ましてあげると、これは結構効果があったようで、天馬の顔がちょっとだけ安心したのが見てわかった。
「だから、心配しなくても大丈夫。天馬はいつだって俺をいっぱい気持ち良くしてくれるんだか……」
 もっと天馬を安心させてあげようと思って続けた言葉は最後まで言うことができなかった。
 何故ならば、天馬の唇が俺の唇を塞いできたからで、今度は最初から激しいキスに、俺の頭の中はあっという間に真っ白になってしまいそうだった。
「あ……ん……」
 どうしよう……。キスしているだけなのに物凄く気持ちいいし、感じちゃう。
 天馬とするキスはいつだって気持ちいいし感じちゃうけど、いつもと少しだけ違うように感じてしまうのは、気持ちが昂ぶり過ぎちゃっているせいだろうか。
 天馬との初エッチの期待と緊張感で、俺の感情の昂ぶりは最高潮と言っていいくらいだもん。
「ん……ふぁっ……んんっ……」
 絡め取られた舌をちゅうぅっと強く吸われると、それだけでイきそうなくらいに感じた。
 キスをしているだけなのに、腰から下がもぞもぞともどかしそうに動いてしまう俺は、天馬にもっと色々して欲しいって催促しているみたいで、恥ずかしいんだけれど身体の疼きを抑えることもできなくて……。
「んっ、ぁ……天馬……天馬ぁ……」
 どうしようもなく感じてしまう自分の身体が怖くなった俺は、泣きそうな声を上げながら天馬にギュッと抱き付いた。
 天馬はそんな俺の身体を優しく抱き返してくれたけど、キスはやめてくれなかった。
 そして、いっぱい吸われた唇が腫れぼったく感じるようになった頃、ちゅっ、と音を立てるキスをしてから、ようやく俺の唇を解放してくれた。
「キスだけで随分とそそられる顔になったな」
「んん……だってぇ……」
 俺の唇を解放してくれた天馬は、天馬からのキスですっかり蕩けきった顔になってしまっている俺に満足そうだった。
 そんな天馬に言い訳の一つでも言い返したいところだったけれど、頭がぼーっとしている俺は、何も考えられないし、何も言い返すことができなかった。
 全く……。キスだけで人をこんなに骨抜きにしてしまう人間が、「自信がない」だなんてにわかには信じられないし、とても緊張しているようにも見えないんだけど。
 天馬からされることに俺が翻弄されてしまうのはいつものことだけど、毎度毎度、すぐに意識が飛びそうになるくらいに感じてしまうのはどうにかならないものかな。キスだけでこんなにぼーっとなっちゃうようじゃ、本当に天馬と最後までできるのかが心配になってきちゃうよ。
「智加。本当に最後までシていいのか?」
 頼りなく揺れる俺の瞳に、天馬は俺が迷い始めたのかと思ったらしい。
 改めて確認してくる天馬に、俺は小さく頷くと
「うん。俺、天馬とちゃんとしたエッチを最後までシたい」
 小さくはあったけれど、はっきりした声でそう答えた。
「そっか」
 俺の言葉に柔らかく微笑む天馬の顔は本当に優しくて、格好良くて。俺はそんな天馬の表情を見ると、愛しさで胸が締め付けられそうになった。
 天馬と付き合うまでは、まともな恋愛らしいものを何一つしてこなかった俺は、生まれて初めて付き合うことになった相手のことを、こんなにも好きになれたことを幸せに思う。
 まさか自分が自分と同じ男を好きになるとは思っていなかったし、男同士ということで、この先色々と問題が生じることもあるだろうけれど、それが原因で俺が天馬との関係に疲れるなんてことはなさそうだし、天馬への気持ちが冷めてしまう日が来るなんてことも考えられない。
 むしろ、俺の一生涯の相手は天馬だけであって欲しいと思っているし、天馬とならどんな困難も乗り越えていけるような気がする。
 なんて、まるで恋愛ドラマの主人公みたいな思考になってしまう俺だけど、天馬と出逢い、天馬を好きになったことで、自分の日常が一気にドラマチックなものへと変化したように感じている俺だから、俺の思考がそうなってしまうのも仕方がないというものだ。
 俺は天馬との出逢いに運命や奇跡みたいなものを感じている。
 そして、その運命や奇跡すらも感じている天馬と、身も心も一つに結ばれようとしている今。多少の不安はあっても、迷いなんてものがあるはずがなかった。
「天馬……大好き……」
 迷うどころか待ち遠しいと思っている気持ちを、その一言に込めて言うと
「俺も大好きだよ。智加」
 うっとりしてしまうくらいの優しい声でそう返してくれた天馬は、俺のおでこにキスをしてくれて、それが合図だったかのように天馬からの愛撫が始まった。
 天馬の大きな手に身体の至る所を優しく撫でられながら、キスもいっぱいされる。
 身体中のどこにキスをされても気持ちが良くて、天馬の手や唇が俺の身体に触れてくるたびに、唇から漏れる俺の声はどんどん甘くなっていった。
「ぁんっ……ぁっ……やぁっ……んん……」
 俺の身体を優しく愛撫しながら、俺の身体から完全にバスローブを取り除いてしまった天馬は、一糸纏わぬ姿でベッドの上に横たわる俺の胸の小さな膨らみを、舌の先で押し潰すように舐めてきた。
 天馬とエッチなことをするたびに、どんどん乳首で感じられるようになった俺は、天馬に乳首を愛撫されると身体中が熱くなって、蕩けてしまいそうになるくらいに感じてしまう。
「ぁんんっ……ぁっ、あ……んぅ……」
 俺の反応を確かめながら、唇だけじゃなく、指も使って俺の乳首を攻めてくる天馬に、俺は身体を捩りながら感じて、感じる声もいっぱい出してしまう。
 薄いピンク色だった乳首は、天馬の唇と指先の両方から虐められることで赤く腫れたみたいになっていき、そうなることでどんどん感度が良くなっていく。
「ゃんっ……ぁっ、ん……ぁあっ……んんっ……」
「気持ちいいのか? 智加」
「ぅんっ……んんっ……気持ちぃ……気持ちいいよぉ……」
「ほんと、智加はいやらしい身体になったな。乳首だけでこんなに感じるようになって」
 最初は感じているのかどうかもよくわからなくて、ただ擽ったいだけに感じる場所だったのに。天馬がいっぱい俺の乳首を弄ったせいで、どんどん気持ち良くなる場所になってしまった。
「て……天馬がいっぱい弄るから……だから俺、乳首で気持ち良くなる身体になっちゃったんだよ?」
「そうだな。俺が智加の身体をこんな風にしたんだよな」
「んんっ……」
 片方を意地悪くキュッと摘んで揉まれながら、もう片方はちゅうぅって強く吸い上げられた。
「あぁんっ……ぁ、ん……ゃあっ……」
 そうされちゃうと背中がしなるくらいに感じちゃって、天馬に胸を突き出すみたいな格好になっちゃうんだけど、天馬はベッドから浮いた俺の背中の下に手を挿し入れてきて、俺の上半身を自分の顔に近付けるようにして持ち上げてしまうと、俺の乳首をもっといっぱい吸ってきた。
「ゃんっ……ぁ、ん……ダメっ……ダメぇ……」
 乳首に与えられる刺激が強くなると、頭の中が“気持ちいい”って感覚だけに支配されていく。
 男の俺が乳首でこんなに気持ち良くなってしまうなんてことも、天馬が教えてくれたことだった。
「ん? ダメなのか?」
「んんっ……ダメぇ……気持ち良くなりすぎちゃうから……あんまりいっぱい弄っちゃやだよぉ……」
 自分で自分の言っていることがよくわからなくなりそうだけど、乳首を弄られているだけで気持ち良くてイってしまいそうになる俺は、まだイきたくない、って必死だった。
「可愛いな。そんなに気持ちいいのか。じゃあ乳首はやめて、今度はこっちを弄ってやる」
「へ……ぁっ、ぁあんんっ……!」
 そう言った天馬の手が胸の上から身体のラインに沿って下に移動していったかと思ったら、もうすっかり勃ち上がっている俺のナニをキュッて握ってきたから、俺は大袈裟なほどに身体を大きく震わせてしまった。
 一体いつからソコがそうなっていたのかと言うと、最初からだ。最初に天馬とキスをした時からだ。
 俺から寝ている天馬に触れるだけのキスをした時は、ちょっとした戯れのつもりだったからまだ大丈夫だったけれど、その後、天馬が起きていたと知り、天馬におねだりされて自分から天馬に二度目のキスをした時には、身体はもう反応し始めていた。
 俺からのキスをきっかけに、天馬からの本格的なキスが始まると、天馬とのキスが気持ちいいと感じる俺の身体はあっという間に火照ってしまい、ナニもすっかり勃ち上がってしまっていたという次第。
 天馬が俺のバスローブの前を開いた時点で俺のナニはしっかり勃ち上がってしまっていたわけだから、天馬には俺のナニがどうなっているのかはバレちゃっているわけだけど、その時は天馬もあえて何も言ってこなかった。
 だけど、俺のナニが勃ち上がっていることは知っているから、これ以上乳首を弄られるのは嫌だという俺の要望を受け入れた天馬が次に触ってきたのが、天馬とのキスと、天馬からの乳首への愛撫ですっかり気持ち良くなってしまい、先端から透明な蜜を滴らせるほどになっている俺のナニだった。
「やぁん……ぁんっ……ダメっ……ダメだよぉ……そっちの方がもっと感じちゃうからぁ……」
 乳首を弄られるのも充分に気持ち良くなって感じちゃうけど、勃ち上がってしまっているうえ、透明なぬるぬるをいっぱい零しているナニを上下に擦られる方がもっと感じちゃう。身体中の血液が沸騰しそうなくらいに熱くなって、天馬の手の動きに合わせて腰が勝手に揺れてしまうのも恥ずかしいよぉ……。
「さっきから“ダメ”って言ってばっかりだな。でも、智加はいっぱい感じると、すぐに“ダメ”とか“嫌”とか言ってくるだけで、本当は“ダメ”でも“嫌”でもないんだよな?」
「んっ……んんっ……天馬の意地悪ぅ……わかってるなら言わないでよぉ……」
 天馬からの意地悪な指摘を俺は素直に認めた。
 確かに、俺は口では「ダメ」だの「嫌」だのとよく言ってしまうけれど、実際は全然「ダメ」でも「嫌」でもない。
 ただ、天馬からの愛撫でいっぱい感じている自分の姿を見られるのが恥ずかしくて、ついつい「ダメ」とか「嫌」とか言ってしまうだけだった。
 これまでの経験上、天馬もそれは充分にわかっているから、俺が「ダメ」とか「嫌」とか言ったところで、ただの照れ隠しくらいにしか思っていなかった。
 だから、俺がどんなに口では「ダメ」とか「嫌」とか言ったところで基本的には聞き入れてくれないし、むしろ俺をもっと感じさせようとしてきたりさえする。
 でもって、口では「ダメ」だの「嫌」だのと言いながらも、天馬からの愛撫にしっかり感じてしまう俺は、チョロいくらい簡単に天馬に追い詰められてしまうのである。
「やっ、ぁ……ぁんっ……ぁ、んんっ……ダメっ……そんなにいっぱい弄ったら、俺……イっちゃいそうだよぉ……」
 天馬の手に扱き上げられる俺のナニは、自分の零した透明な蜜でぬるぬるになり、天馬の手が俺を上下に擦り上げるたびに、くちゅくちゅと濡れた音を立てた。
(このままじゃ天馬と一つになる前にイっちゃうよぉ……)
 そのことに気持ちが物凄く焦るんだけど、天馬はそんな俺の焦りを知ってか知らずか、俺のナニを一層強く扱き上げてくるだけじゃなく、俺を扱き上げるのと一緒に、一度は弄るのをやめてくれた乳首にまで吸い付いてきたから、俺はもう堪らない。
「あぁんっ……ゃっ、だぁ……ぁっ、ぁんっ……っちゃぅ……イっちゃうよぉ……」
 乳首を吸われることも、ナニを弄られることも、どっちも堪らなく感じちゃうのに、その二つを一緒に攻められると俺はもう我慢なんてできない。
「ぁんっ……ゃんっ……天馬っ……天馬ぁ……」
 腰がガクガクと揺れ始め、ひたすら喘ぎながら天馬の名前を呼ぶしかできなくなって――。
「ぁ、あっ……んっ……ゃあっ、ん……ぁ……んぁあっ!」
 天馬の手に急き立てられるようにナニを擦られて、乳首もちゅうぅって強く吸われた瞬間、俺は身体をビクビクッと痙攣させながら射精をしてしまった。
「ぁ……んん……あー……」
 天馬の手の中に白濁を放ったと同時に、俺の意識も一瞬飛んだ。
 射精の快感が身体中を駆け巡って、身体がふわふわと宙に浮いているような心地良さを感じる。
「今日はまた随分とあっという間にイったな。そんなに気持ち良かったのか?」
「ん……うん……」
 自分でもあっという間にイってしまったと思った俺は、天馬の言葉に素直に頷いた。
 俺が元々感じやすい身体なのか、それとも、天馬のせいでそういう身体になってしまったのかはわからないけれど。とにかく、天馬からの愛撫にはいつもすぐに追い詰められちゃって、わりとあっという間にイってしまうけれど、今日はいつもより感じやすくなっているような気がする。
 天馬との初エッチへの期待と緊張感で気持ちが昂ぶっているせいももちろんあるだろうけれど、一臣と光稀が用意してくれたホテルのデラックスルームという特別な空間が、俺の気持ちを益々盛り上げてくれているんだろうな。
 こんな場所で天馬との初エッチを迎えられるなんて、一生忘れられないいい思い出になること間違いなしだしさ。
 もっとも、特別な場所なんかじゃなくたって、俺にとっては初体験にもなる天馬との初エッチは、いつ、どこで、どんなものになろうとも、一生忘れられない大切な思い出になるんだけどね。
「雰囲気に吞まれちゃっているせいもあるのかも。今日の俺、いつもより感じやすくなってるみたい」
 射精の余韻でぼーっとしてしまう俺が、恍惚とした表情でそう付け足すと、天馬は小さく笑って
「智加は元々感じやすい身体なのに、更に感じやすくなってるなんて楽しみだな」
 なんて言った。
 だから、俺の身体をそんな風にしたのは天馬だよ。
 わからない、じゃなかった。仮に俺の身体が元々感じやすかったとしても、そのことを俺に気付かせ、俺の身体を天馬からの愛撫に感じやすく開発していったのは天馬だった。俺の身体がこうなっちゃったのは間違いなく天馬のせいだよね。
「だから……天馬が俺の身体をそうしたんだよ?」
 それなのに、天馬には元々俺の身体が感じやすくてエッチだと思われているような言い方をされたことに不満を覚え、唇を尖らせて言い返したら、天馬は謝る代わりに、尖らせた俺の唇にちゅっ、てキスをしてきた。
 そんな風に天馬からキスしてもらったことが嬉しかった俺は、秒で天馬を許してあげるのだった。
 ああ、もう……なんだか物凄くラブラブしてて、俺と天馬ってしっかり愛し合っている恋人同士なんだな、って実感しちゃうなぁ。
 天馬と付き合い始めてこうなるまでの間に、俺がそれなりにしてきた努力を思い返すと、感動すら覚えちゃうよ。
 中には全く無意味で、無駄な努力もあったとは思うけど。
「そうだったな。智加の身体は俺がそうしたんだったな」
「そうだよ」
 甘い戯れのような会話を交わしながら笑う俺達は、最初に感じていた緊張感はどこへやら……。今の俺達には、お互いを愛しく思う気持ちしかないように感じられた。
「智加の身体をそんな風にした責任と、これから俺が智加にすることの責任はちゃんと取ってやるよ」
「天馬……」
「一生な」
「……うんっ!」
 まるでプロポーズをしてもらえたような気分になれる天馬の言葉に、俺は死ぬほど嬉しそうな顔になって大きく頷いた。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ロリコンな俺の記憶

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:4,203pt お気に入り:16

お高い魔術師様は、今日も侍女に憎まれ口を叩く。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:759pt お気に入り:120

勘違いしちゃってお付き合いはじめることになりました

BL / 完結 24h.ポイント:2,898pt お気に入り:550

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,053pt お気に入り:457

番いのαから逃げたいΩくんの話

BL / 連載中 24h.ポイント:1,675pt お気に入り:1,021

【完結】マァマァ夫人のおかげです【番外編追加中】

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,387pt お気に入り:324

処理中です...