詩《うた》をきかせて

生永祥

文字の大きさ
3 / 54

☆第3話 憧憬《しょうけい》

しおりを挟む
 キーンコーンという大きなチャイムの音が、学校の教室中に鳴り響く。その音を合図に、教室内の生徒達が一斉に席を立ち、前後左右のクラスメートに声をかける。
 中には急いで鞄を抱えて、廊下を走り出て行く生徒もいる。

 そんな賑やかな放課後の様子を横目で見ながら、小夜子は学校鞄に忍ばせていた詩集にすっと手を伸ばした。

 そして文庫サイズの詩集を手に取ると、昼休みに挟んでいた、緑色の和紙で出来た栞を右手で抜き取って、お目当てのページを左手でパラッと開いた。

 急いで本に書かれている文字を目で追う。
 昼休みに読みかけていてまだ途中だった詩の続きが、午後の授業中、小夜子はずっと気になっていたのだ。

 息も付かずに、一気に一編の詩を読む。

 自分の中にある全神経を集中させて、小夜子は作者の紡いだ言葉に耳を傾けた。

 そして無我夢中で最後まで詩を読み終えると、小夜子は開いていた本を一旦パタンと閉じて、ふーっと一気に息を吐き出した。

 その瞬間、自分の全身の力が抜けていくのが分かった。

――あぁ、今回も素敵だったなぁ。

 本を読み終えた時に生まれる、独特な満足感と読後感に酔いしれながら、小夜子はふと教室の窓に目をやった。
 すると曇天の空からチラチラと雪が舞いはじめている事に気が付いた。

――あの詩のシーンも、こんな感じだったのかなぁ。

 小夜子はこの間、市立図書館の詩集コーナーで偶然見つけた、『カラタチバナ』という詩の一節を思い出していた。
 あの詩を読んだ瞬間、小夜子は自分の身体に鳥肌が立っている事に気が付いた。

 雪の『白』とカラタチバナの『赤』のコントラストが鮮明に浮かんで、なんて綺麗な詩なのだろうと思った。
 そして『僕』と『貴女』の関係性に、強い憧れを抱いた。

――私もあの詩のようなシーンに出会ってみたいなぁ。

 ふと浮かんだ自分の思いに、強い驚きと恥ずかしさを感じる。小夜子は段々と自分の身体が熱くなり、耳が火照っている事に気が付いた。

 そんな恥ずかしさを振り払うと、小夜子は机の上に置いていた詩集を鞄に詰めて、急いで教室から出て行った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

哲子67歳★恋して焦げて乱れ咲き♪

obbligato
恋愛
67歳、二次元大好き独身女子のぶっとんだ恋愛劇。 ※哲子は至って真面目に恋愛しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

そうして君は僕を知る

琉慧
恋愛
 人は誰しも、他人には明かす事の出来ない悩みを持っている。 綾瀬優紀も例に漏れず、とある悩みを抱える高校生であった。  悩みとは、誰かに打ち明け、共感を得る事によって状態が好転する場合もある。 しかし彼の場合、自らの抱える悩みを打ち明かしたとしても、誰からも共感される事など無いだろう。  だから彼は語らない。 その頑なな黙秘が自分を騙し続ける行為であると知りながらも。 「僕は私(ぼく)を認めない」

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...