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☆第44話 一番好きな詩《うた》
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小夜子が冬四郎と打ち解けるまで、そんなに時間はかからなかった。
話してみると冬四郎は見た目とは違い大変な読書家で、様々な分野の本に精通している事が分かった。
小夜子が自身の興味がある本について質問をすると、その一つ一つに冬四郎は丁寧に答えを返すのだった。
「ところで嬢ちゃん。嬢ちゃんが一番好きな、本のジャンルって何なんだ?」
会話の途中で、冬四郎が徐に小夜子にそう質問をする。すると小夜子は「詩だよ!」と冬四郎に元気よく返事をした。
出会った当初は敬語で話していた小夜子だったが、冬四郎から「敬語はよしてくれ。俺の柄じゃねぇ」と言われてから、小夜子はずっとため口で話している。
すると冬四郎は「嬢ちゃんらしいな」と言って、ふっと微笑んだ。
「なぁ、嬢ちゃんは、どんな詩人が好きなんだ?」
「えっと、田井中玄さんとか、倉松紅さんとか……。あ、最近は天野柚木也さんが好きだよ」
「へぇ、天野柚木也ねぇ」
「マイナーなところを攻めたな」と言って、冬四郎が笑う。
そんな冬四郎の様子に「とーさんは読んだことがあるの?」と小夜子が嬉々として質問をする。
「そうだな。奴の作品は全部読んでいるぞ」
そう言って冬四郎は病院の中央ロビーの天井を見上げる。
中央が吹き抜けになっている天井は、日当りがよく、冬四郎の頭のずっと上の方まで続いていた。
「とーさんは、詩の中で一番どれが好きなの?」
唐突に小夜子から質問を受けた冬四郎は、細い両の腕を組んで悩み始めた。
「……うーん。一番好き、ねぇ。今まで聞かれても答えたことがなかったな」
そう呟いて、冬四郎は小夜子の方をチラリと見やる。
すると小夜子が目を輝かせながら、今か今かと答えを待っている事に冬四郎は気が付いた。
「……全く。嬢ちゃんには、敵わねぇなぁ」
そう言って笑うと冬四郎は徐に、自身の紺色のちゃんちゃんこのポケットの中をまさぐった。
そして手の平サイズに折られた、A4サイズの白いルーズリーフを小夜子の前に差し出す。
突然、冬四郎がポケットから取り出したルーズリーフに、小夜子が強い興味を示した。
よく見てみるとルーズリーフの端が所々千切れている。
顔を近づけてルーズリーフを見てみると、所々日焼けをして変色し、よれよれになっている事に小夜子は気が付いた。
「これ、何なのかなぁ?」
「開けてみたら分かるぞ」
「私が開けて見ても、大丈夫?」
「おう、良いぞ」
冬四郎から了承を得た小夜子は、白いルーズリーフをペラッと開くと、黒のボールペンで丁寧に書かれた一編の詩を読み出した。
話してみると冬四郎は見た目とは違い大変な読書家で、様々な分野の本に精通している事が分かった。
小夜子が自身の興味がある本について質問をすると、その一つ一つに冬四郎は丁寧に答えを返すのだった。
「ところで嬢ちゃん。嬢ちゃんが一番好きな、本のジャンルって何なんだ?」
会話の途中で、冬四郎が徐に小夜子にそう質問をする。すると小夜子は「詩だよ!」と冬四郎に元気よく返事をした。
出会った当初は敬語で話していた小夜子だったが、冬四郎から「敬語はよしてくれ。俺の柄じゃねぇ」と言われてから、小夜子はずっとため口で話している。
すると冬四郎は「嬢ちゃんらしいな」と言って、ふっと微笑んだ。
「なぁ、嬢ちゃんは、どんな詩人が好きなんだ?」
「えっと、田井中玄さんとか、倉松紅さんとか……。あ、最近は天野柚木也さんが好きだよ」
「へぇ、天野柚木也ねぇ」
「マイナーなところを攻めたな」と言って、冬四郎が笑う。
そんな冬四郎の様子に「とーさんは読んだことがあるの?」と小夜子が嬉々として質問をする。
「そうだな。奴の作品は全部読んでいるぞ」
そう言って冬四郎は病院の中央ロビーの天井を見上げる。
中央が吹き抜けになっている天井は、日当りがよく、冬四郎の頭のずっと上の方まで続いていた。
「とーさんは、詩の中で一番どれが好きなの?」
唐突に小夜子から質問を受けた冬四郎は、細い両の腕を組んで悩み始めた。
「……うーん。一番好き、ねぇ。今まで聞かれても答えたことがなかったな」
そう呟いて、冬四郎は小夜子の方をチラリと見やる。
すると小夜子が目を輝かせながら、今か今かと答えを待っている事に冬四郎は気が付いた。
「……全く。嬢ちゃんには、敵わねぇなぁ」
そう言って笑うと冬四郎は徐に、自身の紺色のちゃんちゃんこのポケットの中をまさぐった。
そして手の平サイズに折られた、A4サイズの白いルーズリーフを小夜子の前に差し出す。
突然、冬四郎がポケットから取り出したルーズリーフに、小夜子が強い興味を示した。
よく見てみるとルーズリーフの端が所々千切れている。
顔を近づけてルーズリーフを見てみると、所々日焼けをして変色し、よれよれになっている事に小夜子は気が付いた。
「これ、何なのかなぁ?」
「開けてみたら分かるぞ」
「私が開けて見ても、大丈夫?」
「おう、良いぞ」
冬四郎から了承を得た小夜子は、白いルーズリーフをペラッと開くと、黒のボールペンで丁寧に書かれた一編の詩を読み出した。
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