詩《うた》をきかせて

生永祥

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☆第47話 動揺と安堵

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 冬四郎が去った後、病院の中央ロビーで、小夜子が出会ったのは母だけではなかった。

 母が姿を現した、その五分後。

 小夜子が玄関の方を見てみると、なにやら見覚えのある背丈をした男性が、こちらに近付いて来るのが分かった。

 その姿を認識した小夜子は、そそくさと急いで後ろを向いて逃げようとする。

 だが打算的な小夜子の作戦は、事情を知らない小夜子の母の行動によって打ち破られた。

「あら、若菜先生。先日はどうもありがとうございました」

 ギクリとして後ろを振り返ると、そこには太めの国語辞典くらいの大きさの箱を持った若菜の姿があった。
 若菜とにこやかに挨拶を交わす母は、急いで逃げようとする小夜子の腕をぎゅっと掴んで離さない。

「お、お母さん、お願い。離して!」
「何を言っているの。若菜先生はあなたの命の恩人なんですからね。今すぐきちんとお礼を言いなさい!」

 小夜子にやっと聞こえるくらいの小声でそう言うと、母は嫌がる小夜子を無理矢理、若菜の前に立たせた。

 小夜子と若菜との距離が、一気に五十センチメートル程までに縮まる。その距離の近さに、びっくりした小夜子は慌てふためいた。
 若菜の顔をチラリと見た小夜子の顔が一瞬で真っ赤に染まる。

「ちょっと飲み物とお菓子でも買って来ますね」と言うと母は小夜子を置いて、隣の売店の方へと歩いて行った。

 そんな母の行動を心底恨んだ小夜子は、ドギマギとしながら若菜の方に目をやる。

 すると若菜は自分の前で緊張する小夜子に向かって、「身体の調子はどうだ?」と呟いた。
 そして若菜は小夜子を、自分の後ろにあるベンチへと座らせた。

「だ、大丈夫です」と言って、小夜子がきちんとベンチに座った事を確認すると、若菜は無言のまま、小夜子の隣に腰を下ろした。

 若菜が手にしていた小さな箱を、ゆっくりとベンチの上に置く。
 その時、若菜はチラリと小夜子の顔色を確認した。

 この間、公園で倒れた時に青ざめていた小夜子の顔は、今では真っ赤に色付いている。
 そんな小夜子の表情を確認した若菜は、ゆっくりと安堵の息を吐き出した。

 だがそんな若菜の行動に気が付かないほど、小夜子はとても緊張していた。そしてその心臓はドキドキと高鳴っていた。
 中々小夜子は、若菜と目を合わす事が出来ない。
 ぐるぐると回る思考の中で何を話そうかと、必死に小夜子が考えていた、その時だった。

 沈黙を破るかのように、不意に若菜が重たい口を開いた。
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