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第一章 王子様はみんなに愛されている
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王宮の一角にある子ども部屋。
「やれやれ、やっと眠ってくれたか……」
「育児って大変だな……」
アレクサンドルと里実は疲れ果てた顔をしていた。すやすやと眠る赤ん坊、我が子アンドレイを前にして。当たり前だが、赤ん坊はとにかく手がかかる。腹が減った、排泄しておむつの中が気持ち悪いと言っては泣く。なにかにびっくりしたり、寂しくても泣く。
そのたびに周りが面倒を見る必要がある。アレクサンドルは第一王子であり、王室の資産や人材をかなり自由に使える立場にある。が、メイドや執事たちに任せっきりも不安だと自分たちで育児をする習慣をつけている。
「言うほど簡単じゃなかったね」
「ああ、赤ん坊とはかくも手強い存在だったとは」
ふたりとも、特に自分がお腹を痛めたアレクサンドルは息子を愛している。だが、育児を見るのとやるのとは大違いだった。アンドレイが寝付くまで、大して重労働をしたつもりもないのに身体も心も疲労しきっていた。
「おふたりともお疲れ様でした。お茶が入りましたから一緒しませんか?」
アレクサンドルの婚約者、エステレーラ・フェルナンデス伯爵令嬢が言う。せっかく寝た子を起こさないよう、声を潜めて。ノーブルな育ちの彼女は、ポットでお茶を煎れる仕草まで妙に優雅だ。それでいて、顔立ちと体つきはまだ幼いギャップがたまらない。13歳である今しか見ることのできない姿と言えた。
「おお、ありがとうございます。エステレーラ様」
「お茶をもらおう。少し休憩だ」
里実とアレクサンドルはソファーに腰掛けると、伯爵令嬢の入れたお茶で一服する。アンドレイ向けのおもちゃがその辺に散乱しているが、片付けるのは後。とにかく今は休みたい。
(うむ。相変わらずエステレーラ様が煎れるお茶はうまい)
里実はその味を堪能する。エステレーラの特技の一つだ。熱すぎずぬるすぎず、葉も絶妙な加減に蒸されていてうまみが引き出されている。疲れた体と心に刺さる味だ。
「かわいいですわね。さすが、アレクサンドル様と里実様の赤ちゃんだけはあります」
エステレーラは、ベビーベッドの上で寝息を立てるアンドレイを見て目を細める。だが、少しばかり寂しそうだった。
「わたくしの赤ちゃんをアレクサンドル様に抱かせて差し上げられるのは……いつになることでしょうか……」
少女が物憂げな表情になる。女の子は自分をレディと思いたがるものだ。そして、びっくりするくらいの早さで大人になる。里実がアレクサンドルと子を成したことで、焦り始めている。まだ若いのだし、急ぐこともないだろうに。
(どうだろうか?例の懸案事項を話してみちゃ?)
(そうだな。今のエステレーラには必要なことだ)
里実は、愛おしい王子とアイコンタクトをする。おしゃまなお嬢さんの背伸びと片付けず、大人になる支援をしてあげようと。
「エステレーラ様、大切なお話しがあります」
「実は私からもだ。そなたに相談事がある」
ふたりはそろって真剣な表情になる。
「なんですの?おふたりとも改まって……」
少女は不安と期待が入り交じった表情になる。
「はい。実は、我が子アンドレイをエステレーラ様の猶子に迎えては頂けないかと思います」
「うむ。フェルナンデス伯爵家が外戚についてくれれば、心強いからね」
「え……?アンドレイ様をわたくしの猶子に……?」
エステレーラの表情に歓喜と困惑が交互に浮かぶ。嬉しそうになったり目を見開いたり、忙しいことだ。
「やれやれ、やっと眠ってくれたか……」
「育児って大変だな……」
アレクサンドルと里実は疲れ果てた顔をしていた。すやすやと眠る赤ん坊、我が子アンドレイを前にして。当たり前だが、赤ん坊はとにかく手がかかる。腹が減った、排泄しておむつの中が気持ち悪いと言っては泣く。なにかにびっくりしたり、寂しくても泣く。
そのたびに周りが面倒を見る必要がある。アレクサンドルは第一王子であり、王室の資産や人材をかなり自由に使える立場にある。が、メイドや執事たちに任せっきりも不安だと自分たちで育児をする習慣をつけている。
「言うほど簡単じゃなかったね」
「ああ、赤ん坊とはかくも手強い存在だったとは」
ふたりとも、特に自分がお腹を痛めたアレクサンドルは息子を愛している。だが、育児を見るのとやるのとは大違いだった。アンドレイが寝付くまで、大して重労働をしたつもりもないのに身体も心も疲労しきっていた。
「おふたりともお疲れ様でした。お茶が入りましたから一緒しませんか?」
アレクサンドルの婚約者、エステレーラ・フェルナンデス伯爵令嬢が言う。せっかく寝た子を起こさないよう、声を潜めて。ノーブルな育ちの彼女は、ポットでお茶を煎れる仕草まで妙に優雅だ。それでいて、顔立ちと体つきはまだ幼いギャップがたまらない。13歳である今しか見ることのできない姿と言えた。
「おお、ありがとうございます。エステレーラ様」
「お茶をもらおう。少し休憩だ」
里実とアレクサンドルはソファーに腰掛けると、伯爵令嬢の入れたお茶で一服する。アンドレイ向けのおもちゃがその辺に散乱しているが、片付けるのは後。とにかく今は休みたい。
(うむ。相変わらずエステレーラ様が煎れるお茶はうまい)
里実はその味を堪能する。エステレーラの特技の一つだ。熱すぎずぬるすぎず、葉も絶妙な加減に蒸されていてうまみが引き出されている。疲れた体と心に刺さる味だ。
「かわいいですわね。さすが、アレクサンドル様と里実様の赤ちゃんだけはあります」
エステレーラは、ベビーベッドの上で寝息を立てるアンドレイを見て目を細める。だが、少しばかり寂しそうだった。
「わたくしの赤ちゃんをアレクサンドル様に抱かせて差し上げられるのは……いつになることでしょうか……」
少女が物憂げな表情になる。女の子は自分をレディと思いたがるものだ。そして、びっくりするくらいの早さで大人になる。里実がアレクサンドルと子を成したことで、焦り始めている。まだ若いのだし、急ぐこともないだろうに。
(どうだろうか?例の懸案事項を話してみちゃ?)
(そうだな。今のエステレーラには必要なことだ)
里実は、愛おしい王子とアイコンタクトをする。おしゃまなお嬢さんの背伸びと片付けず、大人になる支援をしてあげようと。
「エステレーラ様、大切なお話しがあります」
「実は私からもだ。そなたに相談事がある」
ふたりはそろって真剣な表情になる。
「なんですの?おふたりとも改まって……」
少女は不安と期待が入り交じった表情になる。
「はい。実は、我が子アンドレイをエステレーラ様の猶子に迎えては頂けないかと思います」
「うむ。フェルナンデス伯爵家が外戚についてくれれば、心強いからね」
「え……?アンドレイ様をわたくしの猶子に……?」
エステレーラの表情に歓喜と困惑が交互に浮かぶ。嬉しそうになったり目を見開いたり、忙しいことだ。
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