2 / 26
第一章 王子様はみんなに愛されている
2
しおりを挟む
こちらの世界では、庶子を正妻の猶子とすることはよく行われる。愛人の子という不安定な立場を補強するために。もちろん、正妻の同意が必要なのは言うまでもない。加えて、後に嫡子の男の子が生まれた場合跡目争いに発展する危険もある。が……。
「わたくしがアンドレイ様の母になるのですね!?アレクサンドル様のお子の母親になれるのですね!?もちろんお受けしますわ!両親にも早速伝えます!」
まだ幼いながらも母性が強い少女は、目を輝かせる。
彼女自身はまだ子を成すには早い。身体がこれから成熟するところだし、まだまだ学ばなければならないことがあまたある。アレクサンドルの子を産みたいと言っても、周りが承知しない。だが、愛しい婚約者の子であるアンドレイを猶子として、いろいろ面倒を見る。これならば、誰にも反対されずに母親になれる。元々、エステレーラはアンドレイを気に入っていて歳の離れた弟のようにかわいがっていたのだ。
「うっうっ……。ふえええええん……!」
「あら……。大変……わたくしとしたことが……」
少女が興奮して大きな声を出したために、赤ん坊が目を覚ましてしまう。
「よしよし。どうか泣き止んでくださいましなー……」
エステレーラは、ベビーベッドからアンドレイを抱き上げて必死であやす。だが、あやす側がオタオタしていると、それが赤ん坊にまで伝わってしまうものだ。むずがるのはなかなか止まらなかった。
「エステレーラ様……。少し落ち着いてくださいませ。失礼します……」
美熟女と言っていいメイド長がアンドレイを受け取り、微笑みながら静かにささやきかける。気持ちいいのか、赤ん坊はすぐに眠ってしまう。
「も……申し訳ございません……。母親になれるのが嬉しくてつい……」
エステレーラは泣きそうになる。この辺は、母性的でも年相応の女の子だ。
「気にする必要はありません。最初からできるものではないのです」
「そうとも。メイド長や執事たちもいる。みんなから教わりながら覚えていけばいい」
努めて優しい表情と声で、里実とアレクサンドルがフォローする。
「はい。頑張り……!いえ……頑張ります……」
同じ失敗は繰り返さないと、少女は小声になる。
かくして、13歳の少女の母親奮戦記が幕を開けるのだった。が……。
「あれ……ミルクがうまく溶けない……?」
お湯と粉ミルクの扱いに慣れなかったり……。
「あああっ……!失敗……また汚してしまいましたあ……」
おしめを替える時に限って、赤ん坊が大人しくしてくれなかったり……。
「あらあら……。そっちへ行ってはだめよ……!」
伝い歩きを覚えたアンドレイがどこに行くか、気が気でなかったり……。
少女は母になることの大変さを、身をもって体験するのだった。が……。
「はい、あんよが上手。うん、上手上手」
子どもが立ち上がり、自力で歩けるようになった。その姿を見て、エステレーラは幸せそうになる。どれだけ苦労が多くとも、母親をやるのは楽しかった。
「彼女には大変かと思ったけど、いいお母さんじゃないか」
「確かに。しかし、あれではまだまだ母子というよりお姉ちゃんと弟ですなあ」
遊び疲れてしまい、同じベッドの上で並んで眠るエステレーラとアンドレイ。その微笑ましい姿を見て、アレクサンドルと里実は笑顔になった。
「わたくしがアンドレイ様の母になるのですね!?アレクサンドル様のお子の母親になれるのですね!?もちろんお受けしますわ!両親にも早速伝えます!」
まだ幼いながらも母性が強い少女は、目を輝かせる。
彼女自身はまだ子を成すには早い。身体がこれから成熟するところだし、まだまだ学ばなければならないことがあまたある。アレクサンドルの子を産みたいと言っても、周りが承知しない。だが、愛しい婚約者の子であるアンドレイを猶子として、いろいろ面倒を見る。これならば、誰にも反対されずに母親になれる。元々、エステレーラはアンドレイを気に入っていて歳の離れた弟のようにかわいがっていたのだ。
「うっうっ……。ふえええええん……!」
「あら……。大変……わたくしとしたことが……」
少女が興奮して大きな声を出したために、赤ん坊が目を覚ましてしまう。
「よしよし。どうか泣き止んでくださいましなー……」
エステレーラは、ベビーベッドからアンドレイを抱き上げて必死であやす。だが、あやす側がオタオタしていると、それが赤ん坊にまで伝わってしまうものだ。むずがるのはなかなか止まらなかった。
「エステレーラ様……。少し落ち着いてくださいませ。失礼します……」
美熟女と言っていいメイド長がアンドレイを受け取り、微笑みながら静かにささやきかける。気持ちいいのか、赤ん坊はすぐに眠ってしまう。
「も……申し訳ございません……。母親になれるのが嬉しくてつい……」
エステレーラは泣きそうになる。この辺は、母性的でも年相応の女の子だ。
「気にする必要はありません。最初からできるものではないのです」
「そうとも。メイド長や執事たちもいる。みんなから教わりながら覚えていけばいい」
努めて優しい表情と声で、里実とアレクサンドルがフォローする。
「はい。頑張り……!いえ……頑張ります……」
同じ失敗は繰り返さないと、少女は小声になる。
かくして、13歳の少女の母親奮戦記が幕を開けるのだった。が……。
「あれ……ミルクがうまく溶けない……?」
お湯と粉ミルクの扱いに慣れなかったり……。
「あああっ……!失敗……また汚してしまいましたあ……」
おしめを替える時に限って、赤ん坊が大人しくしてくれなかったり……。
「あらあら……。そっちへ行ってはだめよ……!」
伝い歩きを覚えたアンドレイがどこに行くか、気が気でなかったり……。
少女は母になることの大変さを、身をもって体験するのだった。が……。
「はい、あんよが上手。うん、上手上手」
子どもが立ち上がり、自力で歩けるようになった。その姿を見て、エステレーラは幸せそうになる。どれだけ苦労が多くとも、母親をやるのは楽しかった。
「彼女には大変かと思ったけど、いいお母さんじゃないか」
「確かに。しかし、あれではまだまだ母子というよりお姉ちゃんと弟ですなあ」
遊び疲れてしまい、同じベッドの上で並んで眠るエステレーラとアンドレイ。その微笑ましい姿を見て、アレクサンドルと里実は笑顔になった。
21
あなたにおすすめの小説
泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。
ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。
高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。
そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。
文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
学園の卒業パーティーで卒業生全員の筆下ろしを終わらせるまで帰れない保険医
ミクリ21
BL
学園の卒業パーティーで、卒業生達の筆下ろしをすることになった保険医の話。
筆下ろしが終わるまで、保険医は帰れません。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる