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第一章 王子様はみんなに愛されている
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「せいっ!」
「てやああっ!」
王宮の庭に建てられた剣術練習場。元気な声が響く。
少年たちがそれぞれふたり一組になり、練習刀で立ち会っている。
「はああっ!」
「しまったっ……!」
練習場の一角、背が高くがっしりした少年の一撃が決まる。小柄で細い方の刀が手から弾き飛ばされる。
「それまで!」
指導係の号令で決着が宣言される。
「ま……参った……」
「お疲れ様でした」
勝利した少年が防具であるマスクを外す。10歳とは思えないほど大人びた雰囲気の少年だ。美しいだけでなく、不思議な色香をまとっている。
「強いなあ……。ハインツは……」
同い年のアンドレイが汗を拭いながら言う。
練習相手の少年はハインツ・シュタイナー。シュタイナー子爵家の4男で、アンドレイの付き人として奉公に出されている。役職名は大仰だが、要するにお世話係兼遊び相手だ。貴族の子弟にはよくある。将来人の上に立つときに備えて、子分を持つ親分の立場を経験させておこうというわけだ。幼い時分から。
(でも……これじゃ立つ瀬ないでしょ僕……)
練習を終えて、他の少年たちの立ち会いを見学しながら思う。脇に立つハインツを見やる。身体は大きく、肩幅もどんどん成長している。顔つきも、もう男の子から男へと成長しかけている。
一方の自分は、なかなか背が伸びず細いままだ。よく女の子のようだとからかわれる。剣術も同い年の間では強い方だが、ハインツには全く勝てない。
付き人を従えるというのは楽なことではない。試練の側面も持っている。親分がだらしなく無力なら、子分に容赦なく馬鹿にされ従ってもらえない。そしてその醜態を周りにさらしてしまうことになる。
(どうしたら……ハインツみたいに強くかっこよくなれるんだろう……)
思春期に入ったばかりの少年は、悩み続けた。
…………………………………………………
「アンドレイ?アンドレイ聞こえていますか!?」
「は……はいっ!?なんでしょう?」
夕食時。大きくきれいな声に、アンドレイは白昼夢から引き戻される。
「なんでしょうではなくてよ?せっかくのシチューが冷めてしまいますよ?」
声の主であるエステレーラが、心配そうな顔で問うてくる。
アンドレイの生誕から10年を経た。すっかり美しくノーブル、そしてセクシーな大人の女に化けている。夫であるアレクサンドルとの間に実子がふたりいる(里実に協力してもらって膣内射精を受けた)。が、猶子であるアンドレイを分け隔てなく愛し、教え導いている。
「あ……ああ……。そうですね……」
あいまいに応じた少年は、食事を再開する。が、またすぐにスプーンが止まってしまう。
「どうしたの?食欲がないのかしら?」
「そういうわけではないのですが……」
「なら、母様に話してご覧なさい。わたくしはあなたの母なのです」
エステレーラの言葉に、アンドレイは一瞬考える。自分がからかわれている原因のひとつに、母と仲がよすぎることがある。いつまでも甘えん坊を思われているのだ。
「ひとりで悩んでいても、恐らく解決しませんよ?」
ともあれ、大人の美貌が心配そうになると弱い。
「その……。僕は背が低くてひょろっとしたままで……」
周りが成長していくのに、自分だけ女の子のようであることに悩んでいる。包み隠さず話すことにする。確かに、ひとりで悩んでいてもどうにもならない。
「心配することはありませんよ、アンドレイ」
話を傾聴していたエステレーラは、にっこりと微笑んだ。
「てやああっ!」
王宮の庭に建てられた剣術練習場。元気な声が響く。
少年たちがそれぞれふたり一組になり、練習刀で立ち会っている。
「はああっ!」
「しまったっ……!」
練習場の一角、背が高くがっしりした少年の一撃が決まる。小柄で細い方の刀が手から弾き飛ばされる。
「それまで!」
指導係の号令で決着が宣言される。
「ま……参った……」
「お疲れ様でした」
勝利した少年が防具であるマスクを外す。10歳とは思えないほど大人びた雰囲気の少年だ。美しいだけでなく、不思議な色香をまとっている。
「強いなあ……。ハインツは……」
同い年のアンドレイが汗を拭いながら言う。
練習相手の少年はハインツ・シュタイナー。シュタイナー子爵家の4男で、アンドレイの付き人として奉公に出されている。役職名は大仰だが、要するにお世話係兼遊び相手だ。貴族の子弟にはよくある。将来人の上に立つときに備えて、子分を持つ親分の立場を経験させておこうというわけだ。幼い時分から。
(でも……これじゃ立つ瀬ないでしょ僕……)
練習を終えて、他の少年たちの立ち会いを見学しながら思う。脇に立つハインツを見やる。身体は大きく、肩幅もどんどん成長している。顔つきも、もう男の子から男へと成長しかけている。
一方の自分は、なかなか背が伸びず細いままだ。よく女の子のようだとからかわれる。剣術も同い年の間では強い方だが、ハインツには全く勝てない。
付き人を従えるというのは楽なことではない。試練の側面も持っている。親分がだらしなく無力なら、子分に容赦なく馬鹿にされ従ってもらえない。そしてその醜態を周りにさらしてしまうことになる。
(どうしたら……ハインツみたいに強くかっこよくなれるんだろう……)
思春期に入ったばかりの少年は、悩み続けた。
…………………………………………………
「アンドレイ?アンドレイ聞こえていますか!?」
「は……はいっ!?なんでしょう?」
夕食時。大きくきれいな声に、アンドレイは白昼夢から引き戻される。
「なんでしょうではなくてよ?せっかくのシチューが冷めてしまいますよ?」
声の主であるエステレーラが、心配そうな顔で問うてくる。
アンドレイの生誕から10年を経た。すっかり美しくノーブル、そしてセクシーな大人の女に化けている。夫であるアレクサンドルとの間に実子がふたりいる(里実に協力してもらって膣内射精を受けた)。が、猶子であるアンドレイを分け隔てなく愛し、教え導いている。
「あ……ああ……。そうですね……」
あいまいに応じた少年は、食事を再開する。が、またすぐにスプーンが止まってしまう。
「どうしたの?食欲がないのかしら?」
「そういうわけではないのですが……」
「なら、母様に話してご覧なさい。わたくしはあなたの母なのです」
エステレーラの言葉に、アンドレイは一瞬考える。自分がからかわれている原因のひとつに、母と仲がよすぎることがある。いつまでも甘えん坊を思われているのだ。
「ひとりで悩んでいても、恐らく解決しませんよ?」
ともあれ、大人の美貌が心配そうになると弱い。
「その……。僕は背が低くてひょろっとしたままで……」
周りが成長していくのに、自分だけ女の子のようであることに悩んでいる。包み隠さず話すことにする。確かに、ひとりで悩んでいてもどうにもならない。
「心配することはありませんよ、アンドレイ」
話を傾聴していたエステレーラは、にっこりと微笑んだ。
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