ゲイホストだったけど、異世界でカリスマ男妾になるから 外伝 愛しい子供たちは今日も美しく淫らです

ブラックウォーター

文字の大きさ
5 / 26
第一章 王子様はみんなに愛されている

しおりを挟む
 ある平日の午後。王宮の執務室前。
「やあ、ここにいたのか。殿下は中かな?」
「これは……ハインツ様……。お疲れ様です……。はい、殿下は執務室にいらっしゃいます……」
 近衛の略装に身を包んだハインツは、少年を呼び止める。最近入った侍従のひとりだ。彼の目は潤んで、ほおは朱に染まっている。
(これは……。全く我が親分は……)
 19歳の近衛長は、目頭を押さえる。栗毛と琥珀色の瞳が目を引く美貌が、苦い気分で台無しになっている。
「ハインツ・シュタイナー。入ります」
「うむ。入ってくれ」
 ノックして返事を待ち、おしゃれな作りのドアを開ける。中にはわずかだが、汗と男の精のにおいがする。この部屋の主も、事後の雰囲気を漂わせている。メンズメイクが汗で微妙に乱れ、高級なシャツのすそが不自然にボトムスからはみ出している。
「殿下。先ほど退出した侍従となにをなさっていたのです?」
「なにをと言われても……。新入りだし親睦を深めていたのだが?」
 アンドレイ・カレコフは金髪碧眼の美貌をしれっとした笑顔にする。
「身体を重ねてですか?」
 ゴミ箱を漁ると、目当てのものはすぐに見つかる。セックスの処理をした紙だ。
「バレたか。まあいいじゃないか。侍従と仲がいいに越したことはないだろう?」
 美貌の王子は、全く罪悪感を感じている様子がない。
(全く……。成長する方向が違うだろうに……)
 ハインツは胸の内で嘆息する。
 同い年の19歳。幼いころは父親の血のために暗めだった髪色は、今ではすっかり豊かで輝くようなブロンドになっている。かつては細く背が低いのがコンプレックスだった。が、今ではすらりとした長身に変身した。容姿は成長するごとに美貌で知られた母、要するに現国王に似てきた。今では誰もが振り返ってみる美青年だ。
(とても美しくて魅力的な青年なのに……。それを色事ばかりに使うんだから……)
 ハインツは目頭を指で押さえる。
 アンドレイは容姿だけでなく人としての器量も優れている。母譲りの才能に加え、准母であるエステレーラから厳しくも優しく教え導かれた人格。そして、父である里実から受け継いだ知恵と知識。王宮でも逸材と誉れが高い。
 が、本人が興味があるのはもっぱらセックスのことだけ。その要望から男にも女にもモテるものだから、調子に乗っている。
「全く来る侍従来る侍女に手を出してしまわれて!あなた様は王位継承者なのですよ!?」
 思わず大声を出してしまう。
 純粋に心配だ。高貴な生まれであり英才教育を受けたエリート。誰もが憧れ期待する器量の仁。それが、両刀の上にヤリチンであるなど。噂が広まればスキャンダルだ。
「王位継承者と言ったって、所詮5番目じゃないか。まずお鉢は回ってこないだろう?」
 脳天気な王子には暖簾に腕押しだった。
 王妃であるエステレーラには子どもが5人。上の4人が男だ。継承権については、嫡子と庶子では年齢にかかわらず前者が優先される。徳川吉宗を上回る身内の不幸がない限りは、アンドレイが王位を継ぐことはない。
「そういう問題では……!」
 ハインツはその言葉を最後まで言うことができなかった。金髪碧眼の美貌が、いつの間にかすぐ目の前にあったからだ。吸い込まれるような美しい瞳には、明らかに欲情の色が混じっていた。幼いころからの付き合い故にわかる。彼は自分を求めている。
「殿下……。なりません……!まだ日が高いし……職務中ですぞ……」
 拒絶の言葉も弱々しい。アンドレイの素晴らしさをハインツは知っているから。
「急ぐ仕事は終わったよ。それに、ぼちぼちティータイムだ。ゆっくりしよう?んん……」
 穏やかに優しく、唇を奪われる。信じられないほど甘い。力が抜けてしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。

ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。 高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。 そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。 文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

学園の卒業パーティーで卒業生全員の筆下ろしを終わらせるまで帰れない保険医

ミクリ21
BL
学園の卒業パーティーで、卒業生達の筆下ろしをすることになった保険医の話。 筆下ろしが終わるまで、保険医は帰れません。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

ネガティブなΩがスパダリαから逃げる

ミカン
BL
オメガバース

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

処理中です...