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第四章 褐色肌の歌い手はジゴロ……?

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「こんなもんかな……。このケーキ当たりだったし」
 息子と友人のために、お茶とケーキを用意して持っていく。最近裏街にできた菓子屋が美味しいところで、王都中から客が来るほどだ。今朝も、並んでようやく買うことができたほどだった。
「フリードリヒ、お茶が入ったよ。入っていいかい?」
「ああ、ありがとう母ちゃん。入ってよ」
 息子の部屋をノックして、ふといやな予感に襲われる。ドアを開けて、それは的中する。
「またあんたたちは……」
 カトリーンは嘆息しつつも、乙女のようにほおを染める。なぜなら、部屋の中にいる少年ふたりは、生まれたままの姿だったからだ。父親譲りのまっすぐな黒髪と母譲りの褐色肌が目を引くフリードリヒ。栗毛と白くきめ細かい肌のフェリクス。実に対照的だ。
 14歳ともなれば、身体も成熟してがっしりしてくる。しばらく前まで男か女かわからないほど細かった体格は、日ごとに男らしく逞しくなっていく。もう何年もすれば、美しくがっしりとしていることだろう。
 であればこそ、裸で過ごすのは目のやり場に困る。ふたりとも天使のように美しい顔立ちだから余計に。
「あんたたちは……。パンツぐらい履きなさいよ……」
 ふたりの美しい裸を直視できないまま、テーブルの上にお茶とケーキを置く。小さいころから、フリードリヒの困った癖だった。すぐに服を脱いで裸になりたがる。屋外で生まれたままの姿にならないだけましだが、なんとかならないものか。
「だって、この方が涼しいし楽なんだもの」
 まったく悪びれた様子もなく、フリードリヒが応じる。なんでいけないの?人に迷惑掛けてるわけじゃないし。目がそう言っていた。
「フェリクスも、あんまり変にフリードリヒの真似するんじゃないよ」
「いいじゃないですか。気持ちいいし。それに部屋の中なんですから」
 栗毛の少年もまた、自分が異性に裸をさらしていることをなんとも思っていない。股間にぶら下がっているものは、かつてのかわいいソーセージではない。成長し男の器官として機能し始めているにもかかわらずだ。
「わかったよ。ごゆっくり……」
 それ以上カトリーンは何も言えなかった。美しい裸族の少年ふたりの好きにさせておくとしよう。トレーを手にその場を辞する。
(まあ、いつまでも子どもじゃないだろうし……。逆に言えば子どもである今だからこそゆるされることなんだけど……)
 今は幼い少年たちも年齢を重ねれば、そのうち分別も身につくだろう。そう信じるというか、諦めるしかなかった。
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