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01 金髪ギャルのアイデンティティ

刺激が強すぎて

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09

 教室へと戻った椿姫は、治明の顔を見るやりんごのように真っ赤になってしまう。
 「おかえり。どう?帰れそう?
 そろそろ帰った方が良いと思うんだが」
 「う…うん…。そだね…」
 椿は恥ずかしさでまともな返事が返せずにいた。
 学園のトイレで自慰をして、しかも治明に愛撫されるのを想像して初めてのオーガズムを迎えてしまった。
 (それなんてエロゲ?)
 顔から火が出そうだった。

 「ねえ治明…。気づいてる…?」
 「え…なにが…?」
 治明は、質問の意味がわからないようだった。
 おそらく、女の子の“経験”の中でも具体的な部分は注意してみないとわからないのだろう。
 治明自身がそう言っていたから間違いない。
 「だ…だから!アイコン確認してみなって!」
 恥ずかしさからヤケ気味に、椿姫は大声を出してしまう。
 どうせ、特殊能力でいずれは治明に知れることだ。
 今気づいてもらったほうが、後になって恥ずかしくならずにすむ。
 「アイコン…?
 ええと…」
 治明は椿姫を注意深く観察し始める。
 (ばかばか…。そんなに見るなって…。
 よけいに恥ずかしいじゃない…)
 自分の“経験”を観察されている。
 その事実に、椿姫はまた顔から火が出そうになる。
 そして、治明も椿姫の言葉の意味に気づいたらしい。
 「ええと…つまりそういうこと…?」
 「そういうことです」
 椿姫は治明の顔を見ることができないまま、短く返答する。
 治明のビジョンでは、先ほどまで未経験だったオーガズムを示すアイコンが経験済みに変わっていることだろう。
 (うううー…。このまま消えてしまいたい…)
 実は純情乙女である椿姫にとって、それは耐えられないほど恥ずかしい事だった。
 「まあその…おめでとう…かな?」
 「あ…ありがと…」
 「お赤飯でも差し入れるべきかな?」
 「よしてよ…!
 初めてイった記念なんて…なんの羞恥プレイよ…?」
 気まずい空気の中、そんな会話を交わす2人。
 そして、そのあとは沈黙が流れる。
 沈黙を先に破ったのは治明だった。
 「なんか…。俺も冷えたから便所に…。
 椿姫ちゃん、先帰ってていいよ」
 「あ…治明…」
 一方的に宣言して、治明は教室を出て行くのだった。

 男子トイレの個室にこもった治明が出てきたのは、20分も後だった。
 「におい、残ってないよな…」
 治明は鼻で残り香がないか確認する。
 美少女で、純情乙女な処女ビッチである椿姫が、学園のトイレで自慰をして、生まれて初めてのオーガズムを経験した。
 その事実は、DTである治明には刺激が強すぎた。
 (結局2回も抜いちゃったな…)
 椿姫がトイレの中で自分を慰めて絶頂に達している。
 その場面を想像すると、1回果てたくらいでは収まらなかったのだ。
 いつもより大量の白く生臭いものをトイレットペーパーで処理して、トイレの個室を出たときには、窓の外は暗くなり始めていた。
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