ブラック男の終点

ブラックウォーター

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録音

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05

「あなたが彼に暴力や暴言を働くようになったいきさつを、確かめていきます。これは、彼がデジタルレコーダーに録音していたものです」
 江田島がそう言うと、藤野が舌打ちする。
 パワハラを働いておいて、録音するなど理不尽だと逆恨みしているのだ。
 パソコンで音声を再生する。
 藤野の聞くに堪えない理不尽で下劣な罵詈雑言が、部屋に響く。
『勝手に飯食う権利あると思ってんのか!?』
「さて、ここですが、あなたとしては、なぜ彼が食事を取ってはいけないと思ったんです?」
「黙秘します」
 藤野がにべもなく即答する。
 言い訳などできないと、自覚しているらしい。
 法律も道理もない。
 自分の気分や好き嫌いがルール。
 自分の気まぐれに、人が従って当然と思っている。
「では次です」
 パワハラそのものの藤野の怒鳴り声が、再生され続ける。
 後ろで立ち会っている、年配の警部補が眉をひそめる。
 当然だ、聞くに堪えない。
 こんな理不尽な罵詈雑言を他人にぶつけるのを当然と思っている方こそ、どうかしている。
『人と話してる時に笑うな!』
「これについてはどうです?なんで笑ってはいけないんです?」
「黙秘します…」
 藤野の表情に、再び殺意が宿る。
 自分の罵詈雑言を聞かされ続けて、理不尽な怒りと逆恨みが沸点に達している。
(馬鹿なやつだ)
 江田島は内心で嘆息する。
 すでに逮捕され、証拠もそろっているのだ。
 悔い改めて自分を変えるなら、今がその機会のはずだ。
 なのに、目の前の愚劣な男は、自分を顧みることも、変わろうとすることもしない。
 胸の中で、自分のパワハラや犯罪を必死で正当化している。
(まあいい)
 江田島は、藤野が感情的になっておしゃべりになることを期待して、音声の再生と質問を繰り返す。

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