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職責
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04
「仕事も家庭もうまくいかなくなって、ストレスからコカインに手を出した。そういうことですか?それとも、うまくいってたころからやってた?」
「黙秘します」
藤野が即答する。
(証拠はそろっているのに、無駄なことを)
江田島はわざと鼻で笑ってやる。
藤野が一瞬こちらをにらむが、すぐに視線を落とす。
証拠がそろってようが、黙秘だけは続けてやるとばかりに。
「黙秘しますって言うのは、いつからやってたか話したくないって意味?それとも、コカインの使用そのものについて?」
「答えたくありません」
どう答えようと、コカインの使用を認めたように解釈される。
そう判断した藤野が、返答を避ける。
(馬鹿のくせに、中途半端に知恵が回る。害悪としか言いようがないな)
江田島はそう思わずにはいられない。
これで、ろくに仕事もできず人間関係も築けないただの馬鹿なら、まだましだったろう。
だが、なまじ小知恵の廻る大馬鹿は始末に負えない。
外面だけは良く、弁も立ち、そろばん勘定もそれなりにできる。
こう言う手合いは、周りを巻き込んで盛大に破滅する。
江田島は、この手の人間を何人も起訴してきた。
破滅するならひとりで勝手にすればいいものを、といつも思う。
「証言は、参考人によってばらばらです。あなたがコカインを始めたと推測される時期から様子が変わった、と言う人もいる。もともとよく怒鳴る人で、様子は変化がなかったという人もいる」
「言われてる意味がよくわかりません」
質問を変えた江田島に、藤野が応じる。
ただ黙秘だと言わないのは、自分に不利な証言をした者たちに、理不尽に腹を立てているからだろう。
誰であろうと自分を悪く言う者は許さない。
この男はそういう考えの持ち主だ。
「まあ説明申し上げると、私の仕事はあなたを裁判にかけて終わりではないんです。薬物使用の進み具合と依存の度合いによっては、専門医をつける必要がある。というより、確実に医師のケアを受ける必要があるでしょう。しゃばに出てからまたやられちゃ困るんです。きちんと薬抜いて、二度と手を出さないようにしておかないと」
また、藤野の目に殺意が宿る。
罪人扱いの次は病人扱いか、と。
(本当に反省してないな)
江田島は改めて呆れる。
自分の非を認めず人のせいにして、決して責任を取ろうとしない。悔いることもしない。
指摘されると理不尽に逆上する。
なんとまあ、ずうずうしいことか。
「でも、だからって自白しなきゃならないわけでもないでしょ?」
「それはそうですよ。最初に言った通り、話したくないことは話さなくていいんですから」
「じゃあ、黙秘します」
「わかりました」
江田島は質問を変えることにする。
さっきから、藤野が外面を取り繕いきれなくなっている。
理不尽な立腹で、本性が出始めているのだ。
そのうち、よけいなことまでしゃべり出すことだろう。
「では、次です。あなたのおかした傷害致死事件の被害者のことです」
江田島は、パワハラの果てに理不尽に命を奪われた若者のことについて聞くことにする。
藤野が必死で外面を貼り付けなおす。
“あんなやつが死んだくらいで逮捕され裁かれるのは理不尽だ”と思っている。
だが、それを知られてしまえば量刑に悪影響がある。それをわかっているのだ。
「仕事も家庭もうまくいかなくなって、ストレスからコカインに手を出した。そういうことですか?それとも、うまくいってたころからやってた?」
「黙秘します」
藤野が即答する。
(証拠はそろっているのに、無駄なことを)
江田島はわざと鼻で笑ってやる。
藤野が一瞬こちらをにらむが、すぐに視線を落とす。
証拠がそろってようが、黙秘だけは続けてやるとばかりに。
「黙秘しますって言うのは、いつからやってたか話したくないって意味?それとも、コカインの使用そのものについて?」
「答えたくありません」
どう答えようと、コカインの使用を認めたように解釈される。
そう判断した藤野が、返答を避ける。
(馬鹿のくせに、中途半端に知恵が回る。害悪としか言いようがないな)
江田島はそう思わずにはいられない。
これで、ろくに仕事もできず人間関係も築けないただの馬鹿なら、まだましだったろう。
だが、なまじ小知恵の廻る大馬鹿は始末に負えない。
外面だけは良く、弁も立ち、そろばん勘定もそれなりにできる。
こう言う手合いは、周りを巻き込んで盛大に破滅する。
江田島は、この手の人間を何人も起訴してきた。
破滅するならひとりで勝手にすればいいものを、といつも思う。
「証言は、参考人によってばらばらです。あなたがコカインを始めたと推測される時期から様子が変わった、と言う人もいる。もともとよく怒鳴る人で、様子は変化がなかったという人もいる」
「言われてる意味がよくわかりません」
質問を変えた江田島に、藤野が応じる。
ただ黙秘だと言わないのは、自分に不利な証言をした者たちに、理不尽に腹を立てているからだろう。
誰であろうと自分を悪く言う者は許さない。
この男はそういう考えの持ち主だ。
「まあ説明申し上げると、私の仕事はあなたを裁判にかけて終わりではないんです。薬物使用の進み具合と依存の度合いによっては、専門医をつける必要がある。というより、確実に医師のケアを受ける必要があるでしょう。しゃばに出てからまたやられちゃ困るんです。きちんと薬抜いて、二度と手を出さないようにしておかないと」
また、藤野の目に殺意が宿る。
罪人扱いの次は病人扱いか、と。
(本当に反省してないな)
江田島は改めて呆れる。
自分の非を認めず人のせいにして、決して責任を取ろうとしない。悔いることもしない。
指摘されると理不尽に逆上する。
なんとまあ、ずうずうしいことか。
「でも、だからって自白しなきゃならないわけでもないでしょ?」
「それはそうですよ。最初に言った通り、話したくないことは話さなくていいんですから」
「じゃあ、黙秘します」
「わかりました」
江田島は質問を変えることにする。
さっきから、藤野が外面を取り繕いきれなくなっている。
理不尽な立腹で、本性が出始めているのだ。
そのうち、よけいなことまでしゃべり出すことだろう。
「では、次です。あなたのおかした傷害致死事件の被害者のことです」
江田島は、パワハラの果てに理不尽に命を奪われた若者のことについて聞くことにする。
藤野が必死で外面を貼り付けなおす。
“あんなやつが死んだくらいで逮捕され裁かれるのは理不尽だ”と思っている。
だが、それを知られてしまえば量刑に悪影響がある。それをわかっているのだ。
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