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第一章 不穏な客たち
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「いやあ、温泉があると聞いてたけど、よもや露天風呂とは嬉しい誤算だ」
露天風呂の大浴場。誠は思い切り両手脚を伸ばす。空はまだ明るいが、さすがは田舎。星がポツポツと見え始めている。
「うまい構造ですね。ドーム球場みたいに屋根を開けられるようになってるんだ」
篤志が、こんなところでもビデオカメラを回している。上を見れば、扇状にたたむことができる屋根が目に入る。雨が降ったときは閉じればいいわけだ。
「いやー。ありがたいぜ。久しぶりにのびのびと風呂に入れる」
少し離れた場所では、修一が広い風呂を満喫している。彼の大きくゴツい身体では、普通の風呂はさぞ狭いことだろう。
「失礼しますよ」「湯加減はどうですか?」
新たに男二人が入ってくる。倉木と従業員のブラウバウムだ。
「やっぱり……鍛えられますね……」
「ああ……あれが戦いのプロの身体か……」
篤志と誠がヒソヒソする。元軍人の二人の身体は、鍛えられ引き締まっている。だが、他のどんな職業、スポーツ選手や肉体労働者とも違う。戦うために必要な最低限の筋肉をつけ、洗練した。そんな感じだ。
(あれは……銃創かな……?)
倉木もブラウバウムも、今は癒えた傷がいくつもある。彼らが戦ってきた場所が、いかに凄絶だったかが伺い知れる。その時だった。
「え……ちょっと……」
素っ頓狂な声が聞こえる。
「どうしたんすか、先輩?」
声の主である修一の方を振り返る。
「あれ……あれ……」
仰天した表情で、脱衣所の方を指さしている。そちらに視線を向けて、誠も眼が飛び出そうになる。
(え……誰あのきれいな女の子……?)
そこにあったのは、華奢だが妖艶な少女の姿だったからだ。髪の色と顔つきからして日本人ではない。男湯に入ってきているのはもちろん、あんなかわいい娘がそもそもいただろうか。
「ちょ……こっち男湯だよ……?」
そんな間抜けな言葉しか出てこない。
「え……知ってますけド……?」
きれいな声で応答が返ってくる。が、その声に聞き覚えがあった。
(この声どっかで……。あ、そうか……)
ようやく誠の中で状況が整理される。
「ああ……なんだニコライ君か……。びっくりしたあ……」
「ニコライ君……?」
「言われてみれば……」
誠に続いて、修一と篤志も自分たちが勘違いしていたことに気づく。細身で、年齢の割に色っぽいのでわからなかった。ついでに湯煙でぼやけていたこともある。
美少女の正体はニコライだった。元々ジェンダーレスな美貌の持ち主であることに加えて、まだ二次性徴の途中だからだろう。腰は細いのにお尻が大きめだ。身長が百六十センチに満たないこともあるだろう。正面から見ると、少女にしか見えない。長い前髪をヘアピンで固定しているのも、妙に女っぽい。
ヨーロッパ人は東洋人に比べて、大人っぽく見えるせいだろう。一見して十二歳とは思えない。
「すみませんネ……女っぽくて……。これでも気にしてるんデス」
ニコライが苦笑いになる。本人は、あまりジェンダーレスで色っぽい外見をよく思っていないらしい。
(よく見れば……胸はないし……。ちゃんとついてるじゃないか……)
かけ湯をする彼の股間を覗き見る。まだ発育途上ではあるものの、そこにはちゃんとある。
「やばい……不覚にも……おち×ちんついててもいいかもと思っちまった……。あれだけかわいくてセクシーならと……」
修一が、必死で不思議な世界に入りそうな誘惑と戦っている。
「少しだけ同意できるのが悔しいです……。そういう趣味の人の気持ちがわかるような気がしてしまう……」
誠も、男の娘やジェンダーレス男子というものの魅力に気づいてしまった気がした。ニコライが横で湯に浸かっていると、どうにも落ち着かない二人だった。
整った横顔に、ドキドキしてしまう。その時だった。
「あら、いいところじゃない」
「そうですね。景色もいいし、お風呂場のインテリアもおしゃれだし」
檜の壁の向こうから、黄色い声がする。
「お、女衆が入浴始めたっぽいな……」
篤志が湯から上がり、壁を探り始める。
「篤志君。なにをしようとしちゃってるわけなの?」
修一が、疑いの目で声をかける。
「いやあ……覗ける隙間でもないものかなー……なんて……」
篤志が振り向いて応答する。
「それは無駄ですよ」
ブラウバウムが不敵な顔で言う。
「そうですとも。覗きができるなどとは、宿泊施設にあってはならないことです。定期的に点検して隙間は塞ぐようにしてあります。壁が高いのも、上から覗かれないためですから」
倉木が真面目な顔で言う。
「ちぇ、だめか……」
篤志が舌打ちする。
「ふふふ。諦めるのはまだ早い。サイバトロン戦士諸君、私にいい考えがある!」
それまで口を利かなかった誠が、急にドヤ顔になる。どこぞのロボットアニメの司令官よろしく、いいことを思いついたらしい。
露天風呂の大浴場。誠は思い切り両手脚を伸ばす。空はまだ明るいが、さすがは田舎。星がポツポツと見え始めている。
「うまい構造ですね。ドーム球場みたいに屋根を開けられるようになってるんだ」
篤志が、こんなところでもビデオカメラを回している。上を見れば、扇状にたたむことができる屋根が目に入る。雨が降ったときは閉じればいいわけだ。
「いやー。ありがたいぜ。久しぶりにのびのびと風呂に入れる」
少し離れた場所では、修一が広い風呂を満喫している。彼の大きくゴツい身体では、普通の風呂はさぞ狭いことだろう。
「失礼しますよ」「湯加減はどうですか?」
新たに男二人が入ってくる。倉木と従業員のブラウバウムだ。
「やっぱり……鍛えられますね……」
「ああ……あれが戦いのプロの身体か……」
篤志と誠がヒソヒソする。元軍人の二人の身体は、鍛えられ引き締まっている。だが、他のどんな職業、スポーツ選手や肉体労働者とも違う。戦うために必要な最低限の筋肉をつけ、洗練した。そんな感じだ。
(あれは……銃創かな……?)
倉木もブラウバウムも、今は癒えた傷がいくつもある。彼らが戦ってきた場所が、いかに凄絶だったかが伺い知れる。その時だった。
「え……ちょっと……」
素っ頓狂な声が聞こえる。
「どうしたんすか、先輩?」
声の主である修一の方を振り返る。
「あれ……あれ……」
仰天した表情で、脱衣所の方を指さしている。そちらに視線を向けて、誠も眼が飛び出そうになる。
(え……誰あのきれいな女の子……?)
そこにあったのは、華奢だが妖艶な少女の姿だったからだ。髪の色と顔つきからして日本人ではない。男湯に入ってきているのはもちろん、あんなかわいい娘がそもそもいただろうか。
「ちょ……こっち男湯だよ……?」
そんな間抜けな言葉しか出てこない。
「え……知ってますけド……?」
きれいな声で応答が返ってくる。が、その声に聞き覚えがあった。
(この声どっかで……。あ、そうか……)
ようやく誠の中で状況が整理される。
「ああ……なんだニコライ君か……。びっくりしたあ……」
「ニコライ君……?」
「言われてみれば……」
誠に続いて、修一と篤志も自分たちが勘違いしていたことに気づく。細身で、年齢の割に色っぽいのでわからなかった。ついでに湯煙でぼやけていたこともある。
美少女の正体はニコライだった。元々ジェンダーレスな美貌の持ち主であることに加えて、まだ二次性徴の途中だからだろう。腰は細いのにお尻が大きめだ。身長が百六十センチに満たないこともあるだろう。正面から見ると、少女にしか見えない。長い前髪をヘアピンで固定しているのも、妙に女っぽい。
ヨーロッパ人は東洋人に比べて、大人っぽく見えるせいだろう。一見して十二歳とは思えない。
「すみませんネ……女っぽくて……。これでも気にしてるんデス」
ニコライが苦笑いになる。本人は、あまりジェンダーレスで色っぽい外見をよく思っていないらしい。
(よく見れば……胸はないし……。ちゃんとついてるじゃないか……)
かけ湯をする彼の股間を覗き見る。まだ発育途上ではあるものの、そこにはちゃんとある。
「やばい……不覚にも……おち×ちんついててもいいかもと思っちまった……。あれだけかわいくてセクシーならと……」
修一が、必死で不思議な世界に入りそうな誘惑と戦っている。
「少しだけ同意できるのが悔しいです……。そういう趣味の人の気持ちがわかるような気がしてしまう……」
誠も、男の娘やジェンダーレス男子というものの魅力に気づいてしまった気がした。ニコライが横で湯に浸かっていると、どうにも落ち着かない二人だった。
整った横顔に、ドキドキしてしまう。その時だった。
「あら、いいところじゃない」
「そうですね。景色もいいし、お風呂場のインテリアもおしゃれだし」
檜の壁の向こうから、黄色い声がする。
「お、女衆が入浴始めたっぽいな……」
篤志が湯から上がり、壁を探り始める。
「篤志君。なにをしようとしちゃってるわけなの?」
修一が、疑いの目で声をかける。
「いやあ……覗ける隙間でもないものかなー……なんて……」
篤志が振り向いて応答する。
「それは無駄ですよ」
ブラウバウムが不敵な顔で言う。
「そうですとも。覗きができるなどとは、宿泊施設にあってはならないことです。定期的に点検して隙間は塞ぐようにしてあります。壁が高いのも、上から覗かれないためですから」
倉木が真面目な顔で言う。
「ちぇ、だめか……」
篤志が舌打ちする。
「ふふふ。諦めるのはまだ早い。サイバトロン戦士諸君、私にいい考えがある!」
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