ある日おっぱいのついたイケメンになったら王子様な彼女に乙女にされて

ブラックウォーター

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第四章 浮気のけじめを

06 再び彷徨いの波間に

「忘れないで下さい。私怒ってるんですから。湊ちゃんのことは今でも好きですけど、浮気は嫌です」
「うん……。本当にごめん……なんて謝っていいか……」
 湊は平身低頭するしかなかった。舞に言われたとおりだ。彼女の機嫌が直るまで謝り続けるしかない。
 しょんぼりした様子の彼氏を見かねたか、雪美は優しい笑顔になる。
「この数日、どんな感じでしたか? 私が考えている間」
「それはもう怖いし悲しかった……このまま別れるって言われたらどうしようって……」
 雪美が顔を近づけ、目をのぞき込んでくる。
「それを罰だと思って下さい。浮気したんですから」
「はい……十分理解できました……。自分がなにしたのか……」
 再び湊は平伏する。
(調子に乗っちゃだめだ。謝罪と埋め合わせはこれからだしな……)
 雪美の中で、自分の株は暴落していると思わなければならなかった。いくら彼女が優しくとも、下がった評価を回復するのは容易ではない。
 謝って話し合ってご機嫌を取って。元に戻るには大変な苦労がいる。
(さて……そうと決まれば……。どう梓と東村を説得するかだけど……)
 湊は思案する。
 が、まともなアイディアはまるで浮かんでこない。
 梓は話し合えばなんとかなるかも知れない。だが、その彼女である東村になんというべきか見当もつかなかった。
(いっそ……東村を梓に依存するように仕向けるか……? 梓ならできないかな……。言いなりにしてみんなで付き合うのを認めさせるのは……)
 そんなことを一瞬大真面目に考えて、すぐにアホらしいと思い直す。エロゲーや官能小説ではないのだ。
『梓は好きだけど、他の男とか……まして女同士なんて絶対いや!』
 東村がそう怒るのが目に浮かぶ。
「湊ちゃん、さっそくいろいろ考えてますね。でも、あんまり姑息なやり方は逆効果かと思いますけど?」
「う……確かに……」
 エスパーのように不埒な思考を見透かす雪美に、湊は言葉もなかった。
「梓君と東村さんの説得は湊ちゃんの責任です。でも、私も一緒にどうするか考えますから。みんなで幸せになるために」
 美少女が苦笑交じりに優しく言う。湊には感謝しかなかった。
 男としてとても情けない話だが、今は雪美が絶対に必要だ。この難局は、とてもひとりでは乗り切れない。
「うん……。雪美ちゃんのお知恵を借りたいよ」
 湊は改めて、雪美と善後策を話し合い始めるのだった。
……………………………………………………………………………………………………
「湊ちゃん、私行きたいところがあるんです。ご一緒してくれますね?」
 茶房から出たとき、雪美がためらいがちに切り出す。
 表現は軟らかいが、湊に拒否する権限を認めない言葉だった。そもそも、異論を挟む気などみじんもないが。
 ふたりは手をつなぎ、茶房を出た。
 雪美と一緒に向かった先は、なんとラブホテルだった。
(やばい……うれしいけどめちゃくちゃ緊張する……)
 先にシャワーを使った湊は、雪美がシャワーを浴びる音を聞きながらベッドに腰掛けて待っている。
 女だったとき、彼女とひとつの布団で触れ合った。だが、男に戻ってからはとくになにもない。自分は未だ童貞ということになる。
(うまくできるかな……?)
 心臓が破裂しそうになる。女から男に戻って、見える世界がだいぶ変わった気がする。
 女同士だったときは、恥ずかしかったが自然に雪美と交われた。
 だが、男に戻った今はどうしていいかまるでわからない。彼女の繊細な心と体を傷つけてしまわないか。そんなことばかり考えてしまう。
 シャワーの音が止む。しばらくして、雪美が裸にバスタオルを巻いた姿で出てくる。長く美しい髪をシュシュでアップにしているのが、なんだか新鮮に思える。
 可憐な少女は、恥ずかしそうにベッドの隣に座る。
「その……雪美ちゃん……いいんだよね……?」
「もちろんです……。今思えば……待っていないでもっと私から積極的になるべきだったかなって……。梓君に先を越されて……少し悔しいんです……」
 雪美が手を重ねてくる。
「好きだよ、雪美ちゃん……」
「私も……湊ちゃんが大好きです……。キスして下さい……」
 ふたりは抱き合い、恋人同士のキスを交わす。
 バスタオルが脱ぎ捨てられ、生まれたままの姿で肌を触れ合わせる。
「お口で……させて下さい……」
「うん……お願い……」
 仰向けになった湊に、雪美が口奉仕を始める。
(…………!?)
 湊は一瞬目を疑った。梓に奉仕されているように錯覚したのだ。
 目を見開いて見れば、自分のものに舌を這わせているのは雪美だ。
「じゅる……どうですか……? 湊ちゃん……」
「ああ……気持ちいいよ……」
 雪美の口奉仕は、確かに心地よかった。可憐な少女が必死で奉仕する姿は、男をそそる。練習したのだろう。唇も舌も、よく動く。
 だが、梓の奉仕と比較するとどうしても稚拙に感じてしまう。舌の動きが若干単調だし、吸い込む力も弱い。
(って……なに比較してんだ……? 失礼だろ……今は雪美ちゃんだけ見てないと)
 そう思う。
 だが、雪美が口で湊を果てさせるには、そこそこ時間がかかった。梓と違い、意思に関係なく搾り取られるような感覚もない。
 賢者タイムは最悪の気分だった。またも、雪美と触れ合っているときに梓に目移りしている自分に、自己嫌悪を感じて止まなかった。
「今度は……俺が舐めてもいいかな……?」
「はい……私のも……いっぱい舐めて下さい……」
 真っ赤になって両手で顔を覆いながらも、可憐な少女は股を開く。
 舌を這わせると、花びらはすぐにトロリと潤っていく。焦らず時間をかけて、少女の身体を高めていく。
 やがて、雪美は穏やかに絶頂を迎えた。シーツを思い切りつかみ、白く美しい裸体をブルンと震わせる。
(大丈夫……ちゃんとできてる……)
 愛おしい人を口で果てさせたことは、湊にとって大きな自信となった。
「雪美ちゃん、入れてもいいよね……?」
「はい……来て下さい……湊ちゃん……」
 コンドームを装着した湊を、雪美は抱きかかえるように受け入れようとする。
(う…………?)
 またしても湊は、梓を抱いているかのような錯覚に襲われる。美しい男の娘が、色っぽく自分を見上げているように見えた。目をこらせば自分が触れているのはやはり雪美だ。
 この期に及んでも、自分は雪美と梓を比べている。
 自己嫌悪を、優しく彼女を愛することで希釈しようとする。
(これが……セックス……男と女の……)
 湊は生まれて初めての感覚に歓喜する。
「湊ちゃん……! 湊ちゃん……好きです……!」
「俺も好きだよ……雪美ちゃん……!」
 思い切り抱き合って愛を囁き会いながら、ふたりは交わる。
 長くは持たなかった。湊の下腹部から、すぐに熱いものが駆け上がってくる。
 我慢せず、欲望を思い切り放った。
 その瞬間だった。
(なんだ……力が入らない……すごく……眠い……)
 この感覚は記憶にある。
 急に猛烈な眠気と脱力感に襲われる。温泉宿で雪美と触れ合っていたときと同じだ。
 間違いない。性別転換の予兆だ。
(なんてこった……またこうなるのかよ……。やっと雪美ちゃんと愛し合えたのに……)
 意識が急速に暗闇に落ちていく。身体が言うことを聞かず、雪美を押しつぶさないよう脇に倒れ込むのが精一杯だった。
「雪美……ちゃん……」
 彼女に必死で助けを求めるが、それも儚い。
「湊ちゃん……!? 大丈夫ですか? 湊ちゃん?」
 自分を心配そうに見る雪美の声が、どんどん遠ざかる。
 抵抗むなしく、湊は意識を失った。
(これからだったのに……幸せになるのは……幸せにするのは……)
 それが、記憶にある最後の思考だった。

(ここは……)
 目覚めたのは、病院のベッドの上だった。
(まさか……また……?)
 胸に手をやってみる。ある。今度は股間に手を伸ばす。ない。間違いなく、湊はまた女になっていた。
「気がついたんですね。よかった」
 きれいで透き通った声がした。間違いようがない。雪美だった。
「雪美ちゃん……」
 女は涙を流すことで、一緒に悲しみや苦しみを外に出すのだという。そうすることで壊れてしまわないようにする、ある種の防衛本能だ。
 彼女の顔を見ると、湊は涙を抑えられなかった。また登ったはしごを外してしまった。
 自分が優柔不断であるばかりに。
 確信があった。セックスの最中、雪美と湊を比べていたのが性別転換の原因だ。
 申し訳なさに、湊はただ泣くしかなかった。
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