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01

トランジスタグラマーな妹は露出がしたい

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 03
 学園の中、昼休み、旭は再び憑依アプリで亜子に憑依していた。
 「うう…?トイレに行きたい…」
 亜子が強い尿意を覚えているのが伝わって来る。女の子の尿意は、男とはぜんぜん違うように感じる。女の子の方が尿道が短いため、おしっこを我慢するのが大変だと何かで読んだのを思い出す。
 「そうだ!いいこと思いついた!」
 ただ用を足すのはもったいない。亜子の露出願望を叶えてあげるとしよう。下腹部に力を入れて、尿意を堪えながら、亜子(旭)は最上階の隅っこにあるトイレに向かう。思った通り、場所が悪く不便なトイレには誰もいなかった。
 「亜子も一緒に楽しもうじゃないか」
 そう言って、亜子(旭)はスマホを操作し、憑依の割合を調節する。100%憑依していれば意識まで乗っ取ってしまい、憑依されている側は眠っているのと同じ状態だ。が、95%では、身体を完全に支配した状態で、意識だけは保たせることができる。
 「さあ、始めるぞ…けっこうドキドキするな…」
 亜子(旭)は、男子トイレの方に入っていく。
 “え…私なにしてるの?おトイレ行きたいけどそっちじゃない!”
 亜子が困惑するのが伝わって来る。意識が2つあるみたいで変な感じだ。
 亜子(旭)は、男子トイレの個室に入る。トイレットペーパーを取るために。
 “なに…なんなの…?おトイレするんじゃないの…?”
 大丈夫だよ亜子、用はちゃんと足させてあげるからね。内心でそうつぶやきながら、トイレットペーパーを巻きだしてたたみ、ポケットに入れた亜子(旭)は、小便器の前に立つ。
 「こうかな…。けっこう難しいもんだな…」
 “やだやだ!男の子じゃないんだから、立ったままおしっこなんて無理!”
 どれだけ叫ぼうとしても抵抗しようとしても、身体が勝手に動いてしまう状況に、亜子が悲鳴を上げている。
 大丈夫だよ亜子。女の子だって立ちションできるんだから。
 亜子(旭)は、スカートの裾を口にくわえ、がに股で腰を突き出したハレンチなポーズをとり、パンツのクロッチ部分を横にずらす。
 “やめて!お願いやめて!絶対無理!パンツとかふともも汚れちゃうからあ!”
 必死で声にならない声を上げる亜子を意に介さず、亜子(旭)は女の子の立ちションの下準備を始める。まずは軽く大陰唇をなで、小陰唇を充血させていく。興奮して来て、女の部分がぱっくりと開いてきたら、クリトリスの皮をむいて露出させてしまう。
 “やだあ!こんなところで自慰をしてるなんて…恥ずかしいよお…!”
 女の子が立ちションをするときは、軽くマスターベーションをして小陰唇とクリトリスを露出させるのがこつなのだ。こうすることで、おしっこが周りに滴って汚してしまうことを避けることができる。
だが、そんなことは知らない亜子は、自分が何かに操られて男子トイレでがに股で何の脈絡もなく自慰を始めてしまったようにしか思えなかった。
 「そろそろいいかな…じゃあ…」
 しゃあああああああああああーーーーーーーーー
 亜子(旭)が尿道の力を抜いて、下腹部に思い切り力をいれると、勢いよく黄色い飛沫がほとばしっていく。
 “あああ…!信じられない!私…立ったままおしっこしてる…!立ちションしちゃってるよお…!”
 亜子の恥ずかしさとみじめな気分が、旭にも伝わって来る。
 恥ずかしいけど、それが心地いいだろ?素直になって良いんだよ、亜子?
 「すごいな…女の子のおしっこってこんな風に出るんだ…」
 亜子(旭)は、女の身体で放尿する感覚にちょっとした感動を覚えていた。おしっこを我慢するのが大変だった反面、思い切り放尿して膀胱がすごい勢いで軽くなっていく感覚が心地良い。
 しゃあああああああああああーー
 “あああ…おしっこ出てる…。ずっと我慢してたからこんなにいっぱい…。気持ちいいよお…♡”
 放尿の解放感に、男子トイレの小便器で立ちションをしている倒錯した興奮が重なって、亜子が変な気分になっていくのが旭にも感じられた。
 「亜子…男子トイレで立ちションするのが気持ちいいんだね?興奮するんだね?」
 “やだ…どうしよう♡これ…すごく気持ちいい…♡立ちション…癖になりそう…”
 亜子が立ちションの気持ちよさに屈して、理性を手放して堕ちたのを感じて、旭は満足する。そうだ、露出が好きでなにが悪いのか。気持ち良くなれるなら、それは素敵なことじゃないか。
 「終わったな。ちょっと気をつけて処理しないと…」
 長く続いた放尿がやっと終わるが、旭は油断せず後始末をすることにする。女の子はいわゆるション切れが悪いこともあると聞くからだ。2,3度腰を振って、ぴっぴっと残った滴を散らす。ハレンチな感じだが、汚さないためには重要だ。
 次いで、ポケットから取り出したトイレットペーパーで、股間を拭いていく。これを怠ると、女の子はすぐ股間が不潔になったり、パンツにマン筋ができたりするから油断できない。
 「あ…濡れてる…」
 亜子(旭)は、トイレットペーパーに尿とは明らかにちがう、透明でぬるぬるしたものが染みこんでいることに気づく。亜子が、ハレンチな男子トイレでの立ちションに興奮して濡らしてしまったのだろうか…。
 「我慢できない…。ここでマスターベーションしちゃお…!あんっ…♡」
 亜子(旭)はクリトリスを皮越しに上下に撫でる。
 「だめだめえっ♡!すぐイっちゃうっ…!ああああああああっ…♡!」
 “ああ…感じる…クリちゃん気持ちいい…♡イくっ…!”
 亜子(旭)と亜子が同時にアクメに達する。亜子(旭)は、なんだか2人分のアクメが同時に押し寄せてきたような気がして、危うく立っていられなくなりそうになる。
 亜子(旭)の蜜壺から、ぴゅっぴゅっと愛液が溢れてくる。
 「はあはあ…気持ち良かった…。
 あ、いけね…。また股間汚しちゃったよ…」
 愛液で折角拭いた股間がまたぐっしょりと濡れてしまった。トイレットペーパーは立ちションの後始末に全部使ってしまった。
 亜子(旭)は、がに股でパンツのクロッチをずらしたまま指で押さえた不自由なポーズのまま、トイレットペーパーを取りに個室へと歩いて行かなければならなかった。
 そのあと、亜子(旭)は憑依アプリで憑依の割合を100%に一度戻して亜子の意識をなくす。そして、教室に戻って亜子の席に座ってから、憑依を解除したのだった。
 ぐにゃりと視界が歪んで、亜子から自分の身体に戻ったのを旭は感じる。亜子の方を見ると、真っ赤になって周囲をきょろきょろと見回している。男子トイレでなにかに操られるように立ちションをして、あまつさえその恥ずかしさに興奮してマスターベーションをしたことが、夢か現実かわからないようだ。
 その仕草が妙に可愛くて、旭は亜子を愛おしく感じると同時に、もっと亜子を恥ずかしい気持ちにさせたい、もっと亜子を露出大好きにしたいという欲望を抑えられなくなるのだった。
 次はもっと恥ずかしく、気持ち良くしてあげるからね、亜子。

 04
 次の日の放課後、旭は再び亜子に憑依する。と言っても今回は完全に操るのではなく、憑依の割合は80%。身体は完全に旭の意のままだが、意識は保たれて、自分に起きていることをはっきりと認識することができる。
 いろいろと仕込みをして、また憑依の仕方を工夫して亜子の感覚にちょっとした干渉をかける形としたりと苦労したが、その分感慨も深い。
さあ、始めるよ亜子。

 「うう…」
 亜子は、放課後突然激しい便意と尿意に襲われる。時々便秘をするとはいえ最近は調子が良かったのに、今朝はどういうわけか下腹部に力が思うように入らず、出すことができなかったのだ。それが、突然腸が激しく蠕動して、汚いものを押し出そうとし始める。
 それに、なんだかやたらのどが渇いて水分をとり続けていたから、膀胱がすごく重い。
 「恥ずかしいし…なるべく人のいないところで…」
 まだ終業から間がないから、学園の中は生徒たちでごった返している。
 え…どうして…そっちじゃない…!
 亜子の足は、勝手に人通りの多い区画に向かっていく。トイレの個室に入ってしまえば中でなにをしているかなんてわかりっこない。それは頭ではわかっているが、やはり恥ずかしいのだ。もし、排便の時に大きな下卑た音を立ててしまったら…。そんなことを考えてしまうのだ。
 「もう我慢できないし…。ここでいいか…」
 意を決して、亜子はトイレに入っていく。男子トイレの方へ。
 どうして!?待って、そっちじゃない!
 「わっ…山内さんどしたの?こっち男子トイレだよ?」
 中にいた男子が驚いた顔になる。
 そうだよ!男子トイレに入るなんて!
 だが、亜子は悲鳴を上げることも顔をしかめることもできない。むしろにっこりと微笑んでしまう。
 「ええと、用を足そうと思って」
 「え?用足しってここで?」
 別の男子生徒が驚いて隣の男子と顔を見合わせる。
 「私が用を足すところ、男の子のみんなに見ててもらいたいの」
 亜子は、自分が今なにを言ったのか一瞬わからなかった。
 私なにを言ってるの!?用を足すところを男子に見て欲しいなんて…!そんな…!
 「ど…どうするよ…?」
 「いいんじゃね?せっかく見せてくれるんだし」
 男子たちは戸惑うが、女の子の秘密を見たいという願望には勝てないらしい。
 「んしょ…どうかな…私の恥ずかしい所、よく見えるかな?」
 亜子はパンツから片足を抜いて片足パンツになると、洋式便器の便座を上げて上にしゃがむ。個室のドアを閉めず、男子たちの方を向いて大きく股を開いて。
 いやっいやっ!こんな恥ずかしいかっこういやだあっ!
 どれだけ心の奥で悲鳴を上げても、大事な所を隠すことも、股を閉じることもできない。
 「うわあ…これが女の子のお○んこ…」「すげえ、ピンク色できれいだ」「ぱっくりでなんかエロいなあ」
 見ないで!お願い、みんな見ないで!私の恥ずかしいところ…!
 「じゃあ、おしっこするから…。見ててね…」
 やめて!お願いだからやめてえっ!
 亜子は必死で尿道に力を入れようとするが、身体が取った行動は逆だった。
 しゃあああああああああああーーーーーー
 「ああ…おしっこ出ちゃう…やっとおしっこできた…」
 必死で力をいれて我慢していた尿道が、亜子の意志に関係なく解放されて、黄色い飛沫が便器を叩く。
 うそ…私おしっこしてる…!男子たちが見てるのに…。
 「すげえ、山内さんがおしっこしてるよ!」「女の子のおしっこなんて初めて見たぜ」「女の子のしょんべんて、こういう風に出るんだ…」
 トイレの中にアンモニアのにおいが充満していく。
 しゃああああああああーーーーーー
 「ああ…おしっこどんどん出てる…気持ちいいよお…♡」
 そんなこと言わないで!確かにおしっこするのは気持ちいいけど…みんなの前で…!こんなお股を開いた恥ずかしい姿でなんて…。
 亜子の中で、何かが変化していく。放尿を男子に見られる恥ずかしさが、不思議な感覚に変わって行くのだ。
 「ああ…おしっこ終わったね…」
 亜子は腰を振って、滴をぴっぴっと散らす。
 「うわ、腰振ってるよ」「エロいな」
 言わないで…!好きでこんな恥ずかしい事してるわけじゃないの!
 「えと、山内さん、おしっこした後拭かないの…?ビデとかも…」
 そうだよ…!このままパンツはいたら汚れちゃう…!
 だが、亜子の口から出たのは信じられない言葉だった。
 「その、まだ全部終わってないから。全部済ませてから拭くつもりだから…」
 勝手に口が発したその言葉に、亜子は恐怖する。
 全部って…まさか…?
 「ウ○チもするから、そっちも見ててね?」
 亜子はにっこりと微笑んでそんなことを言った自分が信じられなかった。
 う…うそ…!お願いだから嘘だって言って!
 心の中で大声をあげる亜子とは裏腹に、身体はものすごい力で踏ん張ってしまう。
 「うううんっ!ウ○チ…出そうだから…!もう出るから…!ふううんっ!」
 やめてえっ!出さないでえ!男子のみんなの前でなんて…!出さないで!ああ…ウ○チなんかあ!
 ブリブリッ ムリムリムリッ
 「す…すげえ!山内さんがウ○チしてる!」「俺なんか感動!」「でも、やっぱり可愛くてもウ○チはくさいなあ」
 「ああん♡ごめんなさい…!私のウ○チ…くさくてごめんなさい…!」
 やだあ…!本当にくさい…!どうしよう…止まらないよお!
 トイレの個室の中に、強烈なにおいが充満していく。亜子は自分の出したもののにおいにどうしようもなく恥ずかしくなり、消えてしまいたくなる。
 「ああ…まだ出ちゃう…♡ウ○チ…気持ちいい…♡」
 やだ…こんな恥ずかしい事してるのに…なんでこんなに気持ちいいの…?ウ○チ姿を見られてるのに…興奮しちゃうなんて…!
 亜子は自分の身体の変化に戸惑った。普通他人には絶対に見せない、恥ずかしくてはしたない姿を見られて興奮しているなんて…。
 男子たちに向けてにっこり笑いながら排便し、感じている自分。心の奥では悲鳴をあげて壊れていく自分。亜子は、2つの自分が混じり合い、どちらがどちらかわからなくなっていくのを感じた。
 「だめだめっ…♡見られてるとイっちゃうよおっ♡!気持ちいいっ!
 おお…んおおおおおおおおおおおおおおおおおっ♡!」
 思い切り力を入れて見事な大きな塊を産み落とした瞬間、亜子の頭の奥が白く弾けて、排便しながらの絶頂に達していた。
 ああ…♡私…イっちゃったの…?ウ○チ漏らしながら…イっちゃったの…?恥ずかしい…!恥ずかしいよお…♡!
 最後は柔らかい下痢便が便器を叩いて、ようやく排便が終わる。
 亜子の中で、恍惚と恥ずかしさ、興奮と絶望感が混じり合い、意識が白い闇に吸い込まれて行った。

 …………………
 「おっと、ショックで気絶しちゃったか」
 亜子(旭)は、亜子の思考と意識の反応がなくなったのを感じる。さすがにやり過ぎたかと思う。
 まあ、自分でやっててもかなり恥ずかしかったし…。幻とは言え…。
 学園最上階の誰もいない男子トイレの個室の中、亜子(旭)は慎重に洋式便器の上から降りると、便座を下ろし、洗浄便座で汚れた尻をきれいにしていく。
 亜子が見ていたのは全部、旭が亜子の認識に干渉して見せていた幻覚だ。実際には亜子の進んだ方向に人通りなど全くなかったし、この男子トイレにも人は一人もいなかった。
 要するに、男子トイレで個室のドアを開けたまま、片足パンツで洋式便器の上に乗り、股を開いて排泄していたのは事実だが、それだけだ。別に本当に誰かに見られていたわけではない。
 そうとは知らない亜子は、自分がもう一人の自分に操られて人通りの多い区画の男子トイレに入り、洋式便器の上に股を開いてしゃがんで、男子たちの見ている前で用足しをしたように認識していたのだ。
 まあ、本当だったら身の破滅だから、気絶してしまうほどショックだったのはわかる。
 「おっと、こっちも忘れないようにしないと…」
 女の子の場合は前の方もきれいにしておく必要があることに気づいて、亜子(旭)はビデのスイッチを入れる。
 「ひゃん…っ!」
 女の部分が水流に刺激されて変な声が出てしまう。敏感になっている女の部分にとっては、シャワーで自慰をしているようなものだった。
 「これじゃ、えっちなお汁がたれてきてきれいにならないよ…」
 亜子(旭)はビデの出力を弱めて、深呼吸して身体を落ち着かせる。そのままビデを使っていると、また興奮して自慰をしたくなってしまいそうだった。
 
 亜子(旭)は排便で絶頂に達してしまった痕跡を丁寧に処理してトイレを後にし、教室に戻り、亜子の席に腰掛けると居眠りのように机に上半身を預ける形になる。そして、スマホを操作して、憑依を解除する。
 気絶している亜子は、当然のようにすぐには目を覚まさない。無理やりたたき起こすのも忍びないので、旭は亜子が目を覚ますまで待つことにする。
 亜子の覚醒は意外に早かった。旭は遅くなってはいけないと思う一方、もう少し寝顔を眺めていたかったと残念な気持ちにもなる。
 「あれ…私…どうしてたんだろう…?」
 「どうしたんだ、亜子?そろそろ帰らないと遅くなっちまうぜ」
 亜子ははっとした顔になり、次いで耳まで真っ赤になる。
 戸惑っているらしい。男子トイレで大きく股を開いて男子たちに見られながら排泄をした記憶は確かにあるが、そうであれば大騒ぎになっていてもおかしくない。あれは夢だったの?でも、あの生々しさは夢にしては…。
 突然、旭は亜子に抱きつかれた。
 「あ…亜子…?」
 「怖い夢を見たの…すごく怖い夢だった…。兄さん…怖かった…」
 旭は亜子を強く抱き返す。亜子の身体は抱きしめると驚くほど細かった。見事な胸膨らみが胸板に当たる。
 亜子の身体は小さく震えていた。本当に怖かったんだな。旭は、今になってえもいわれぬ罪悪感を感じる。
 そして、亜子を、血のつながっていない妹を心底愛おしいと思う。だが、愛おしいと思えば思うほど、亜子をもっと自分の色に染めたい。もっと露出大好きで淫らでスケベな女の子になって欲しいという欲望を抑えられないのだった。
 「亜子、目を閉じて」
 自分の目をのぞき込んでそう言った旭の言葉に抗うことなく、亜子は目を閉じる。旭は優しく亜子の唇に自分の唇を重ねる。
 軽く触れあうだけのキスだったが、2人の間には幸せが満たされているように感じられた。
 もっと亜子との距離を縮めたい。亜子に俺のことを好きになってもらいたい。
 亜子の不安と恐怖につけ込むのは卑怯なやり方だと思わずにはいられなかったが、旭は自分が抑えられなかったのだった。
 「帰ろうか、兄さん?」
 「ああ…そうだな…」
 このままできればキスより先へ、と思っていた旭だったが、亜子が柔らかな笑顔を浮かべてそう言うと、無理に進むのは忍びないと思えた。
 まあ、帰り道、亜子と手をつないで帰れたのは嬉しいことではあったのだが。
 俺は、亜子とどうなりたいのかな?
 今までただ憑依して悪戯をしていれば満足だった旭は、自分の中の変化にとまどっていた。

 05
 亜子と距離を縮めたい旭が取った方法は、亜子と趣味を共有することだった。
 旭はそれほど熱心なオタクというわけではなかったが、いわゆるサブカルチャーに興味のない“カタギ”というわけでもない。
 亜子と同人誌や二次創作のことで共通の話題を持てればいいと考えたのだ。
 というわけでやってきました、ビッグサイトでの同人誌即売会。
 亜子に憑依してさりげなくスマホのスケジュールをチェックし、日付と場所を調べたのだ。
 後をつけるのはさすがに変なので、会場に着くと、一度亜子に憑依して場所を確認すると、ちょっとしたしこみをする。亜子の両手に憑依してあやつり始めたのだ。
 「え…私なにをしてるの…?こんな…手が勝手に…」
 亜子の手を操る旭は、リュックサックに詰め込んだ本日の戦利品の中から、かなり際どいものを選んで取り出していく。
 肉感的な絵柄が特徴の人妻陵辱もの。アイドルをプロデュースする人気ゲームの二次創作で、ア○ル、スカトロもの。アニメの二次創作、人妻キャラが輪姦されて悦ぶストーリーのものなど。 
 「おっと、すんません。ん…って、あれ?亜子?」
 旭は偶然を装ってぶつかり、わざと驚いた顔を作る。
 「に…兄さん…?どうしてここに…」
 亜子はその場で固まってしまう。いわゆるオタバレしたのがかなりショックだったらしい。
 まあ、いつもとかなり印象が違うのは変装の意味もあるんだろう。髪はポニーテールにして大きなキャスケットの中に隠し、大きな伊達眼鏡をかけて印象を変えている。あらかじめ憑依して亜子の服装を確認していなければ、旭も気づかなかったかもしれない。万一知り合いに遭遇しても亜子だとわからないようにしているのに、兄に同人誌即売会で鉢合わせというのは相当に恥ずかしいらしい。
 しかも、手にしているのはR-18の過激な内容の同人誌ばかりだ。
 「あの…その…これは…!」
 慌てて亜子は同人誌を背中に隠す。まるで母親にエロ本を見つけられた男の子だ。
 「あー…意外なところで会うな…。まさか亜子が同人誌に興味あるとは…」
 「そ…それは…」
 オタバレしたのはお互い様だというニュアンスで言ったつもりだったが、亜子は目線を逸らして真っ赤になってしまう。
 「なあ、亜子。実は俺ニワカでさ。今日も来ては見たけど右も左もわからないんだ。
 その…よければ面白い本のあるところ案内してくんない?」
 亜子が意外そうな顔をして、次いで花が開くように嬉しそうな顔になる。
 「うん!兄さん、私が案内してあげる!」
 そのあと、亜子と旭は仲良く手をつないで、即売会巡りをするのだった。
 午後から参加した旭には手に入らなかったお宝を、亜子が午前中から並んで確保していたのは驚きだった。
 亜子と旭は、サブカルチャーの話題ですっかり意気投合し、帰りの電車の中でも、帰ってからも話が弾み続けた。兄妹になって一緒に暮らし始めてから、こんなに話が弾んだのは初めてかも知れない。
 亜子は身近にオタク友達がおらず、サブカルチャーの話題を共有できる仲間をずっと求めていたという。旭にとっては大変に嬉しい誤算だった。
 旭の望み通り、亜子との距離は急速に縮まったのだった。
 
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