異世界帰還書紀<1>

空花 ハルル

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別の異世界

テネレ王都

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「うーん。・・・はっ!今、何時だ。サンダー!」
蒼は、ベッドから飛び起きると、そう叫んだ。着替えをしていたサンダーは、びっくりして、尻もちをついてしまった。
「はぁ、びっくりさせるな。・・うなされてたが、大丈夫か?」
「えっ。・・・平気だ。」
蒼は、立ち上がり、着替えだそうとした。サンダーは、蒼の横に行き、肩に手を置いた。
「やっぱりな、蒼もみんなのこと、気になってるんだろ。それに・・・どうせ、ネオンにやられた夢でも見てたのだろ・・・」
蒼はビクッとして、うっ、と小声で言った。
「やっぱり・・・。私は、先に下に行くぞ。蒼も着替えたら、早く来いよ。ロートンさんが朝飯作って、待ってるからな。」
サンダーはそう言うと、刀を入れた布を背負い、部屋を出ていった。蒼が壁の時計を見ると、針は10時30分を指していた。

Barの一階・・
「おっ!サンダーくん。蒼くんは?」
「着替えたら、来ると思う。」
「そうか。」
その2分後、蒼はサンダーと同じ武器入れを持って、階段を降りてきた。
「ロートンさん。おはようございます。」
「おはよう!ご飯はできてるから、早く食べちゃいな!」
テーブルには、ローストビーフにソースがかかったものや、ステーキ、そして、トマトやキャベツなどが乗ったサラダと長細いパンなど、全体的にバランスがとれていそうで、カロリーが高いものが並べられていた。
蒼もサンダーも料理をしたり、運んだりしていたので、見慣れているが、味はまだ知らないので、少し興奮している。
「それじゃあ、いただきます!」
みんなで、礼儀よく手を合わせて、そう言った。
食べ始めて5分後、ロートンが服のポケットから2枚の封筒を取り出した。
「そういえば、こいつを渡して置かないとな!」
「んっ。何でしょうか?」
「はいこれ。バイト代。」
ロートンは、その封筒を二人のテーブルの端に置いた。
「えっ!受け取れませんよ。お礼のつもりで働いたのに・・」
蒼は封筒をロートンに返そうとした。しかし、ロートンはその手を押し戻した。
「いいから、もらっておきなって!二人ともお金持ってないだろう。お金がないと、何も始まらないよ」
蒼は、受け取るのをためらっているので、サンダーが代わりに受け取ることにした。
「確かに、もらっておいた方が良いと思う、蒼。ロートンさんの言う通り、私達・・無一文だろ!」
「うーん。確かに、そうだな・・・わかりました。ありがたく、受け取らさせてもらいます。」
蒼とサンダーはそう言い、封筒をポケットにしまった。
「それじゃあ、早く食べちゃおうか!」
ロートンの料理がとても美味しかったのか、二人は15分くらいで食べ終えてしまった。

「ふう!ごちそうさまでした!」
二人がそう言うと、椅子から立ち上がり、刀入れを背負った。そして、バーから出ていく準備を整えた。
「それじゃあ、ロートンさん。そろそろ行きますね!色々とお世話になりました。」
蒼がそう言い、頭を下げると続けて、サンダーも頭を下げた。
「いいんだよ。それじゃあ、気をつけてね。ヴィトン先生の言ってた場所は、分かるのかい?」
「ええ、大丈夫です!」「大丈夫だ!ロートンさん!」
二人が同時にそう言うと、ロートンは安心した顔をして、手を振った。そして、二人は振り返ることなく、バーの外に出て行った。

ーテネレ国の街なかー
テネレ国の街は、白塗りの壁と赤い屋根(青い屋根もある)でできた建物が立ち並んでいた。離れたところには、レンガ積みの城壁と青い屋根が目立つ城が見えている。
「うわー!オレらがいた所とは風景も雰囲気も全然違うな。」
「そうだな!観光もしたいけど・・・まずは、ヴィトン先生のところに行かないとな!」
「確かに、そうだな。」
蒼は、見慣れぬ風景に見とれていたが、サンダーは、ヴィトンの言ってたところに行くことを第一に考えているようだ。
蒼とサンダーがヴィトンの指定した場所に向かって、10分くらいした時・・今度は、サンダーが辺りの店に気を取られ始めてきた。
「蒼!このバッグ見てくれ!」
サンダーが指差す先には、肩からかけるタイプの布製のポーチのようなものが何種類か置いてあった。
「へー。便利そうだし。買ってもいいんじゃない。値段は?」
「4620・・みたいだ」
「だったら、買っちゃおうか!すみませーん」
蒼とサンダーは、2つのバックをケースから出してもらい、会計を済ませた。(ロートンからは、二人合わせて、8万くらいもらっていた。)
「さてと・・って、私が寄り道してどうするんだ!」
「・・・今、何時だ?」
「分からない。だが、急がないと・・」
サンダーがそう言うと、走り出した。そして、蒼が気づいた頃には、家の角を曲がって見えなくなってしまった。
「全く、すぐ置いていくんだから・・」
蒼は、半分呆れながらも、サンダーの後を小走りで追いかけ始めた。

その5分後・・
「ここか!ヴィトン先生の言ってた場所は・・」
サンダーがたどり着いたその2分後に蒼も少し息切れしながらやって来た。
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