異世界帰還書紀<1>

空花 ハルル

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側近選抜試験

試験−2

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「なんか蒼の口調が変わった気がしないか、ランツェ」
「どうせ、ルイスの口調が移ったんでしょ」
ルイスに修行を見てもらっていたらしいから、起こり得ないことではないが。あそこまで、口調の変化があるのは驚きだ。
サンダーとランツェが蒼の援護に向かう。だが・・。
「2人共下がっててくれ。巻き込まれる可能性があるから・・」
蒼がそう言うと共に、2人が後ろに3歩退いた。
「3対1で勝てるとでも思っているのか!」
シェルフが剣を構え、切りかかってきた。もう一本剣を所持していたようだ。そして、残りの二人は、その後ろで魔法弾を発射してきてきた。
だが、蒼はその場から一歩も動かず立ち尽くしている。一体何をするのだというのだろうか。
「これは、避けられるか?」
蒼は2本の刀を作り出した。そして、それを発射するのと同時に、刀を振った。
シェルフの剣とぶつかる。その瞬間には、飛ばした刀は敵の足に命中していた。
敵の片足からは血が出て、立てなくなっている。
「2人共!(・・だが、このままここで耐えていれば、魔法弾だけでも当てることができる)」
だが、シェルフのその目論見は失敗に終わるのだった。
蒼は、刀に風の膜のようなものをまとわせた。そして、一気に剣を押し返すことができた。
「蒼!まだ、魔法弾が来てるぞ」
「言われなくても、分かってる」
蒼は再びコンマ秒盾で自身を覆い尽くし、全ての攻撃を防いだ。
サンダーとランツェは離れた場所から見ていたが、余りにも強くなりすぎている蒼に声すら出せないくらい驚いていた。
「さて、今度こそ降参したほうがいいと思うが。後ろの二人は動けないみたいだ。それに、オレを倒せたとして、まだサンダーとランツェもいる」
シェルフは後ろを振り返り、現状を整理している。
そして、5秒後・・。敵は、下を向き、片手を上げた。
「ちっ!降参だ」
蒼達の準決勝進出が決定した。
「オレ一人で、終わちゃった・・」
「すごい・・」
客の歓声と拍手と共に、サンダーとランツェも自然と拍手をしていた。

一方、観客席・・
「あそこまでの成長具合とは・・。逆に、サンダーちゃんとランツェちゃんがどれだけの成長をしたか気になるね。レイラ様はどうお思いで・・」
「そうね・・。私はランツェの方に興味があるかな・・元々、素質を持っているのは知っているから。あとは、それをどれだけ引き出せるまで成長しているか気になるわね」
ヴィトンとテネレ王のレイラが会話をしている最中・・。
「レイラ様。少しご報告があります」
少し焦った様子でギガントが駆けつけてきた。
「いいよ。Bブロック戦が始まるまでに話して。」
「それが・・」
ギガントは、レイラに耳元でコソコソと内容を簡潔に伝える。
「なるほどね、それは確かめてみる必要があるわね。ギガント、メイニィアの二人で調査してみてくれる。それと、できればあまり大きな騒ぎにはしないこと・・」
「承知しました」

会話が終わった1分後、Bブロックの試合が開始された。
対戦カードは・・。
リーダー、ミル対リーダー、ラムだ。
「さて、いつもどおりの戦法で行くぞ!ちゃんと援護してくれよ!」
「わかってるよ」
ルイス、ラム、アクセルの順に敵に向かって、突撃した。
「気をつけろ!特に、ラムの能力には・・」
敵チームのリーダーが仲間に声をかけている。だが、その隙をルイスとラムが突く。
「まずは、自分の保身をしたらどうだ!」
ルイスは、ミルの後ろに回り込むことに成功した。そして、手に風の力を貯める。そして、敵を上空に吹き飛ばす。だが、それはルイス単独の時だけの戦法だ。    
「ラム!頼むぞ!」
「わかってるよ」
ラムが魔法を発動させた。
3分後、試合が終了した。勝者は、ラム達だ。
「うっ。痛ぇ~」
ミルが血がただれた足を抱えている。痛くて当たり前だろうと思えるほどの怪我を負っている。ミルを省いた2人の敵は痛さのあまりからか、気絶してしまっている。
「少しやりすぎたか」
敵3人の足の一部は、切り抜かれたかのようにえぐれている。
直ぐ様、医者の格好をした人達が駆けつけて、3人を運んで行った。
「まぁ、自分も医者だから、治療できなくはないんだけど。こういう試験だから仕方ないよね。側近になるには、勝つだけだから」
「まぁな!とりあえず、一回戦突破だ」

そして、そのまま2試合が行われ、1回戦の試合の全てが終了した。
ー待機室ー
「蒼、サンダー。伝えておきたいことがあるんだけど。特に蒼には、重要なこと・・」
蒼とサンダーがランツェのところに集合する。
「ここに来た時にラムっていう名前の人がいたでしょ、蒼。彼女の能力のことだけど・・ほぼ確定で蒼とは、相性が悪い」
「えっ。どうして・・」
詳しく内容を聞こうとした時だった。待機部屋の扉がコンコンと叩かれ、ルイス達が帰ってきた。
「早かったわね。ちゃんと、勝てたの、3人共」
「誰に言ってる、当たり前だ。俺達のチームの連携力は完璧だからな」
ルイスとランツェが会話をしているが、その後ろで蒼は、相性の悪さの理由だけが気になっていた。
「大丈夫か、蒼。ボーとしているが・・」
「あ~。大丈夫だ(ま!気にしても仕方がない。それに、オレの盾で防げないものなんて、巨石でも降ってこない限りないだろう・・)」
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