奇欲

木の実

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残虐な記憶の糸

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この奇妙な欲望の始まりは、まだ自分が幼かった、あの時からだ。

「はーい、みんな、大縄の時間ですよーー!」
不自然に貼り付けられた笑顔の先生たちの甘ったるい声を、今でも覚えている。世間では待機児童が何とかと言われていたが、私は簡単に幼稚園に入園できた。
   でも元から人見知りな私は、周りが群れとなって遊んでいる中、砂場で一人、無我夢中で砂山を作ることが日課だった。
 そんな日常のある日。砂をかき集めていた右手の近くに、ゴキブリが一匹現れた。私はもちろん驚いたが、悲鳴をあげたところで助けてくれる友達も、先生もいない。だから私は無意識のうちに、そのゴキブリをスコップで叩いていた。
「はあ、はあ、はあ」
気が狂ったように何度も叩き続けた私の前には、いつの間にか潰れてただの肉片となったゴキブリがあった。
  普通ならここで、先生を呼ぶか、そのまま放置して逃げるかを選ぶんだろう。でも私はその時なぜか、そのゴキブリの死体から目が離せなかった。それどころか、それまで感じたことのなかった胸の高鳴りが身を襲った。
それからまもなくして私は、小さな生き物を見ると、それらを殺して分解するようになる。未だに私は、自分のこのうずるような死体への欲望が何なのかわからない。でも中学に入って初めてそれが普通でないことに気づいてからは、何かを殺すことを必死に我慢してきた。その代わり、目を閉じると瞼の裏側に必ず死体が現れる。それでも、周りに私の欲望がバレて軽蔑されるよりは、絶対にましだ。
「真波。」
私は自分が怖い。自分がわからなくて怖い。神様、私は異常ですか。
「真波ってば」
お願いだから、周りに私の本性がバレませんように。
お願いだから、このまま誰にも気づかれず、生きていけますように。
お願いだからもう一度死体を…
「真波、聞いてる?」
「あっ」
視界が急に、見慣れた教室に戻った。
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