シたい彼女と寝てたい彼女

とちのとき

文字の大きさ
2 / 41
♡♀ 第一章 フラれる彼女と未だ見ぬ彼女 ♀Zzz

1話

しおりを挟む
 簡素な住居が立ち並ぶ、辺鄙へんぴな村の一軒家から、夕暮れ時の親子の会話が漏れ聞こえてくる。

 家の中、囲炉裏の火を目の前に、あぐらをかく十代半ばを過ぎた少女は、短く切られたサラサラとした黒髪が生える頭を、面倒くさそうに掻きながら不満を漏らしていた。
 「なんでまたカトマ婆の同じ話、聞かなきゃいけないのかな。毎日のように耳に入って来るから、特別感ないんだよなー」
 彼女の向かいで、黙って座る父親の隣に母親は膝をつき、運んできた鍋と串に刺さった魚を、火にかけながら少し不機嫌そうに、
 「そういう問題じゃないの。十年に一度の大事な儀式なんだから、明日は真面目に村長の話は聞きなさいよ?」
 「可愛い娘が選ばれませんようにの、一言ぐらいあってもいいじゃん。お向かいのお兄さんは、前回のお役目に選ばれて、大怪我して帰ってきたんでしょ?習わしだー、伝統だーって、なんでそんなに大事かね」
 「この村はそうやって昔から上手い事やってきたの」
 「はぁ・・・・。そう言えば、お父さんは今日どこ行ってたの?」

 先ほどから黙っていた父親は、組んだ腕を解くと、両手を膝の上に乗せ、改まった表情で口を開く。
 「隣村だ。お前の見合いの話をしてきた。行商をやってる、割と裕福な家の息子だ」
 沸き始めた鍋の湯気を裂くように、彼女は前のめりに父親に詰め寄った。
 「はあ!?嫌だよ!結婚なんて!なんで何も言わず決めるのさ!それに私は・・・・」
 肩を落としながら、元の位置へと座り直すと語気を弱めた。
 「なんでもない・・・・。これも伝統だって言うんでしょ?なんでだよ」

 ぼそぼそと小言の様に話す娘の態度を見て、母親は先ほどより不機嫌さを表に出すのだった。
 「あなたは事ある毎に、なんでなんでって!もうすぐ成人になるんだし、少しは落ちついたらどうなの!」
 少女は黙って奥歯を噛みしめた。重苦しい雰囲気の中、家族は夕餉を済ませると夜は更けていった。


 翌日、村の若人達が広場に集まるその中に、昨日の気分を引きずったままの少女の姿もあった。
 村の長である、老女カトマが広場にやって来ると、儀式についての話を始める。だが、興味のない少女の耳には、あまり内容は入って来ない。

 カトマの話が終わると、皆が彼女の前に列を作り、差し出される木の筒の中から、クジを一人一人引いていく。
 少女の番。どよめく声と共に、皆の視線が自分に集まっている事に気づく。彼女のその手には、先端が赤く染められた木の棒が握られていた。
 目の前でクジの入った筒を持ったカトマが、辺りに声を響き渡らせる。

 「封印の儀のお役目!このシホに託された!」

 手から零れ落ちた木のクジが、地面でカランと乾いた音を立てると、シホは必死の形相でカトマの肩を掴み、詰め寄った。
 「え?え?嘘だよね?カトマ婆!?私にお役目なんて務まらないよ!」
 「儀式本番まで、まだ時間はたっぷりある。お前に何かあれば、最悪、代わりを務める者を選ぶだけじゃ」
 「ちょ・・・・、そういう問題じゃ」
 「なぁに、今回は冒険者を雇う金も、順調に集まった事じゃ。手慣れの者を雇えれば、万事順調にいくじゃろうて。さあ、出立の準備に取り掛かれ」
 カトマの肩から手を離すと、天を仰ぎ見た。シホの目に映る空は、いつもよりも色味が無いのだった。


◆私の住むトトマヤ村は、世界の中央、ルーベファンスと呼ばれる大陸の、東の端に位置する。
 村には言い伝えがあり、遥か昔、この世界にいたという邪神を、神様が遣わした大天使が、そいつの体を六つに裂き、各大陸に封印したという。その内の一つの、封印の祠があるのが、うちの村だと言われている。
 で、十年に一度、無垢なる魂と呼ばれるアイテムを百個集めて、祠の結界に捧げる儀式を代々続けてきたみたい。でも、その無垢なる魂の入手場所が問題で・・・・。
 ルーベファンス大陸は、幾つかの国から成るのだけれど。大陸中央にあるノドガロス王国有する、地下深くに伸びるダンジョン、大カタコンベでしか入手出来ない。
 大カタコンベの表層は、死者の埋葬の地として使われ、近隣諸国からも亡くなった人を受け入れ、死者の都としても名を馳せている。けれど、ここの地下深くは、不死系や不浄系の魔物が蠢く魔窟。その危険度から、未踏査区域が多く、冒険者の間でも数々の噂が絶えない。
 遠方のそんな恐ろしい場所に行くのにも関わらず、私に渡されたのは、旅の資金と、無垢なる魂を集める為の、村に伝わる小瓶の様な見た目をした魔道具、集魂しゅうこんの器だけ。
 みんな伝統や風習が大事だって口では言っているけど、内心はお役目に選ばれず、ほっとしているのだろうな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

台風のよる、君ひそやかに、魔女高らかに

にしのくみすた
ファンタジー
【空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!】 台風の夜、魔女はホウキで空を翔け――嵐と戦う! この街で台風と戦うのは、ホウキで飛ぶ魔女の仕事だ。 空を飛ぶ魔女に憧れながらも、魔法が使えない体質のため夢を諦めたモチコ。 台風の夜、嵐に襲われて絶体絶命のピンチに陥ったモチコを救ったのは、 誰よりも速く夜空を飛ぶ“疾風迅雷の魔女”ミライアだった。 ひょんな事からミライアの相方として飛ぶことになったモチコは、 先輩のミライアとともに何度も台風へ挑み、だんだんと成長していく。 ふたりの距離が少しずつ近づいていくなか、 ミライアがあやしい『実験』をしようと言い出して……? 史上最速で空を飛ぶことにこだわる変な先輩と、全く飛べない地味メガネの後輩。 ふたりは夜空に浮かんだホウキの上で、今夜も秘密の『実験』を続けていく――。 空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...