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第一部 目覚めの少女と嘆きの神
49話 新たな力1
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日暮れ手前、イナホ達が社まで戻って来ると、先に戻っていた悠と百花が、拝殿の階段に距離を置いて座っていた。
それに気づいた二人は、荷物を沢山抱えたイナホ達を出迎えるが、どことなく様子が変だった。イナホは二人に、
「二人とも先戻ってたんだ。回収は順調だった?」
百花は口ごもり気味に、
「う、うんまあ、回収は出来たよ?でも、ちょっとした?ちょっとした問題がね・・・」
その隣で悠が黙って頭を押さえている。そこに慶介たちも帰って来ると、香南芽が両手を合わせ、
「ごめーん、探し物の水晶がまだ見つからないんだ。明日も探さなきゃ。ももっち達はどうだった?」
気まずそうにする百花は、布の包みをゆっくり開くと、
「いやぁちょっと、あの鉄の塊から取り出すのに?勘がズレたというか・・・?」
皆の前には柄の部分がスパッと切り離された、金色の刀の姿があった。悠は後悔と苛立ちを隠し切れない様子で、
「だから俺がやると言ったんだ」
百花と悠がいつもの様に、山の上で揉めた事は皆、容易く想像できた。壊れた金毘羅刀を前に、一同は言葉を失っていたが、少彦名は、
「なに、刀身が無事なら問題ないぞ?良かった良かった」
と言葉を漏らすと、百花の表情が明るく咲く。
「ほんと!?よかったー!悠ってば、めちゃめちゃ怒るんだよ!?まったく、器が小さいんだから」
「なっ!?これは貴重な物なんだぞ?わかってるのか・・・」
傑が二人に分け入る様に、
「まあまあ。ところで少彦名、良かったって言ったけど、君はこれを八つに砕くんじゃなかったのか?」
「ぐっ、いや、よくよく考えれば今は鍛冶の神もおらんしの、若干不安はあった。・・・・そんな目をするでない!」
一行に不信の目線を送られた彼は、百花を泳ぐ目で見ると、
「そ、そうじゃ、娘よ。約束の温泉にでも案内してやろう。疲れも取れるぞ?こっちはまだ、準備に時間がかかりそうじゃからの。皆で癒されて来たらどうじゃ?」
「やった!みんな行こー!」
彼に上手くはぐらかされた百花たち。そんな中、ツグミは、
「私は準備を手伝いますので・・・・」
そう言いかけたところを、傑はツグミに、
「ツグミも行っておいで?こんな時こそ息抜きは必要だ。それに、友達と絆をもっと深めるには、風呂はいいぞ?」
「裸の付き合い、というやつですか?しかし、本当にいいのですか?こんな大変なときに」
「こんな事が無ければ、ツグミには普通の女の子として生きてほしかったからね。それに、みんなの心が折れたら元も子もない。大事だぞ?こういう事は。ほら、みんな待ってるよ」
「そうですか。では、少しの間、お時間を頂きます。父さんも、後でちゃんと休んで下さいね」
傑は頷くと彼女達を見送った。
近くの小屋で作業に着手した傑の所に、月詠が皆の後追うツグミを目で追いながらやって来る。
「親子、あるいはそれ以上といったところか。機械の体に温泉は大丈夫なのか?」
「ああ、問題ない。人間の営みは想定済みだ」
「人の最良の友と成れる存在か。そんなものを生み出すお主は恐ろしくも、面白い人間だな。して、少しよろしいか?」
傑は作業の手を止める事無く返事をした。月詠は彼の手元を見ながら、
「今朝のあの場では、子らの手前、言い出せなかったのだが。姉上の容体は思ったより芳しくない。つい先ほども霊落化が進行した。恐らく残された時は、後二週間が精々だろう。あるいはもっと・・・・」
「つまり僕たちに残された時間もということか・・・。そうなれば、あの子たちは故郷に帰るどころか、この地で短い生涯を終える事になる」
「ああ。無理に急かすつもりはなかったのだが、この期に及んで隠すのは、やはり好ましくないと思ってな」
「いえ、出来る限り急いで事を進めるつもりだ。僕は、今度こそあの子を・・・・。そして、あの子たちだって失うわけにはいかない」
「ふ、この国が救われるのは、お主の私情のおまけか。まぁ、それも良かろう」
「この事は、折を見て僕からあの子達に伝えておこう」
「すまない、頼んだ。では、邪魔したな」
去り際に月詠は背を向けたまま、
「ああ、それと。どうも海の外がきな臭いようだ」
少し困惑した表情を浮かべる傑の視線の先には、少し欠けた輝く月が出入口から覗いていた。
それに気づいた二人は、荷物を沢山抱えたイナホ達を出迎えるが、どことなく様子が変だった。イナホは二人に、
「二人とも先戻ってたんだ。回収は順調だった?」
百花は口ごもり気味に、
「う、うんまあ、回収は出来たよ?でも、ちょっとした?ちょっとした問題がね・・・」
その隣で悠が黙って頭を押さえている。そこに慶介たちも帰って来ると、香南芽が両手を合わせ、
「ごめーん、探し物の水晶がまだ見つからないんだ。明日も探さなきゃ。ももっち達はどうだった?」
気まずそうにする百花は、布の包みをゆっくり開くと、
「いやぁちょっと、あの鉄の塊から取り出すのに?勘がズレたというか・・・?」
皆の前には柄の部分がスパッと切り離された、金色の刀の姿があった。悠は後悔と苛立ちを隠し切れない様子で、
「だから俺がやると言ったんだ」
百花と悠がいつもの様に、山の上で揉めた事は皆、容易く想像できた。壊れた金毘羅刀を前に、一同は言葉を失っていたが、少彦名は、
「なに、刀身が無事なら問題ないぞ?良かった良かった」
と言葉を漏らすと、百花の表情が明るく咲く。
「ほんと!?よかったー!悠ってば、めちゃめちゃ怒るんだよ!?まったく、器が小さいんだから」
「なっ!?これは貴重な物なんだぞ?わかってるのか・・・」
傑が二人に分け入る様に、
「まあまあ。ところで少彦名、良かったって言ったけど、君はこれを八つに砕くんじゃなかったのか?」
「ぐっ、いや、よくよく考えれば今は鍛冶の神もおらんしの、若干不安はあった。・・・・そんな目をするでない!」
一行に不信の目線を送られた彼は、百花を泳ぐ目で見ると、
「そ、そうじゃ、娘よ。約束の温泉にでも案内してやろう。疲れも取れるぞ?こっちはまだ、準備に時間がかかりそうじゃからの。皆で癒されて来たらどうじゃ?」
「やった!みんな行こー!」
彼に上手くはぐらかされた百花たち。そんな中、ツグミは、
「私は準備を手伝いますので・・・・」
そう言いかけたところを、傑はツグミに、
「ツグミも行っておいで?こんな時こそ息抜きは必要だ。それに、友達と絆をもっと深めるには、風呂はいいぞ?」
「裸の付き合い、というやつですか?しかし、本当にいいのですか?こんな大変なときに」
「こんな事が無ければ、ツグミには普通の女の子として生きてほしかったからね。それに、みんなの心が折れたら元も子もない。大事だぞ?こういう事は。ほら、みんな待ってるよ」
「そうですか。では、少しの間、お時間を頂きます。父さんも、後でちゃんと休んで下さいね」
傑は頷くと彼女達を見送った。
近くの小屋で作業に着手した傑の所に、月詠が皆の後追うツグミを目で追いながらやって来る。
「親子、あるいはそれ以上といったところか。機械の体に温泉は大丈夫なのか?」
「ああ、問題ない。人間の営みは想定済みだ」
「人の最良の友と成れる存在か。そんなものを生み出すお主は恐ろしくも、面白い人間だな。して、少しよろしいか?」
傑は作業の手を止める事無く返事をした。月詠は彼の手元を見ながら、
「今朝のあの場では、子らの手前、言い出せなかったのだが。姉上の容体は思ったより芳しくない。つい先ほども霊落化が進行した。恐らく残された時は、後二週間が精々だろう。あるいはもっと・・・・」
「つまり僕たちに残された時間もということか・・・。そうなれば、あの子たちは故郷に帰るどころか、この地で短い生涯を終える事になる」
「ああ。無理に急かすつもりはなかったのだが、この期に及んで隠すのは、やはり好ましくないと思ってな」
「いえ、出来る限り急いで事を進めるつもりだ。僕は、今度こそあの子を・・・・。そして、あの子たちだって失うわけにはいかない」
「ふ、この国が救われるのは、お主の私情のおまけか。まぁ、それも良かろう」
「この事は、折を見て僕からあの子達に伝えておこう」
「すまない、頼んだ。では、邪魔したな」
去り際に月詠は背を向けたまま、
「ああ、それと。どうも海の外がきな臭いようだ」
少し困惑した表情を浮かべる傑の視線の先には、少し欠けた輝く月が出入口から覗いていた。
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