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第一部 目覚めの少女と嘆きの神
56話 結びて断ちて3
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「はっ!ツグミっ・・・!」
飛び起きた傑は乱れた息苦しさと動悸に不快感を示す。辺りを見渡すと、まだ周りでは皆が眠っていた。それほど眠れていなかった事を、時計に教えられる。
再び寝ようにも目が覚めてしまい、その辺を見回るように歩き出した。眠れずにいた隣の子供は、それを見て後をついて行く。薄っすら瞼を開ける一人の隊員の眼に、その後ろ姿が写った。
暗闇の中、避難所内では、まだ使える携帯端末を囲むように、数人が集まっているのを傑は目にする。傍で聞き耳を立てると、
「これ本当なのかな?」
「こんな時に誰がこんな手の込んだ悪戯できるよ?やっと救いの手が差し伸べられたんだ!」
「俺の家は、代々天照大御神様を崇めてきたんだ。祈りが通じたって事かなあ!?」
疑いながらも期待を抱く者、涙して喜ぶ者とそれぞれだが、確実にイナホの思惑と傑の開発の成果は広がりつつあった。
爆風に面した山肌の木々が吹き飛ばされ、イナホ達の頭上を飛んでいく。皆、身を屈めて顔を伏せていた。
揺れが収まると大量の土埃が降ってきた。悠はそれを払いながら、
「ごほっごほっ。こ、この力は、有事と言っても、好き勝手使えるものではないな・・・」
体に積もった土を落としイナホも立ち上がり、
「みんな大丈夫!?これが月詠様の力・・・・」
ツグミも辺りを確認すると、
「皆、無事のようですね。・・・・土の味がします」
神の御業を目の当たりにし呆然とする手塚達は、
「これが神の力なのか?世界の終焉でも見た気分だ」
平然とした月詠は、
「夜目が効くよう、望月で照らそう」
そう言うと、下弦に欠けていたはずの月が満ちていき、辺りが眩い月明かりに包まれた。山を見上げた手塚は、
「隕石とは予定外だったが、辺りは片付いたはずだ。作戦開始位置に向かおう」
イナホ達は小高い山を登って行った。
山の頂上。イナホ達がそこから平地を見下ろすと、目下には大きなクレーターが出来ていた。するとまだ収まらない土埃の中に、自律兵器達の残骸に混じり、白い輝きがいくつか見えた。月詠がそれらを見据え、
「やはり無傷であったか。こちらに気づいたぞ」
その言葉と同時に白き鉄の兵達は、一斉に武器を構えるのだった。
悠が慶介とツグミへ、
「二人は狙撃位置へ!手塚さん達は無人機の増援があった場合、二人をお願いします!俺たちはかく乱しながら、各個撃破を!」
後方支援の二人は、イナホと司に秋ノ御太刀を預ける。その傍ら、手塚は銃を持ち直すと、
「よし、皆聞いたな?後方支援の二人を守り抜くぞ!」
隊員達が声を上げると、イナホは皆を見て、
「行こう!みんな!」
その声を合図に、イナホ達は一斉に山の斜面へと飛び降りた。
木々の禿げた山肌を滑るように駆け降りるイナホ達。ツグミと慶介は八咫射弩を狙撃用ライフルに変形させ、高台からスコープを覗き込む。ツグミは通信を飛ばし、
「目視可能範囲、敵数三十五。二時方向、初めて見る白き鉄の兵を五体確認しました。弓の様な武装を装備。遠距離攻撃タイプだと思われます。優先して無力化してください。攻撃を開始します」
悠は、
「了解した。俺たちは二人への給弾を任されているイナホと司を支援しつつ、弓持ちに近づくぞ!」
応答し終わると同時、山の斜面を下りきったイナホ達は、敵の前衛部隊に銃弾を浴びせつつ向かって行く。ツグミ達の弾丸が彼女らの頭上を飛び、後方の弓を持った敵の体を仰け反らせる。
そして前線では刀と刀のぶつかり合いが始まった。月詠も華麗な剣技で敵を引き受け、
「鎧の砕けたものは私に回せ!お前達は先へ進むのだ!」
イナホは二振りの刀で、露出した敵の脚の肉を断つと、
「はい!お願いします!」
倒れた敵を確認すると、次の敵へと駆けて行った。応戦する悠と司の視界に、大弓を引く敵の姿が見えた。司は、
「まずい!山の上を狙ってる!」
悠は八咫射弩をグレネードランチャーに変化させ、
「司!暫く頼む!させるか!」
擲弾を連射する悠。爆風が周囲の敵を巻き込みながら、弓の狙いを逸らせた。
山の上で後方支援を続ける慶介のすぐ横に、大きな矢が突き刺さる。しかし、それに動じることなく、呼吸を整え、二人は仲間のために引き金を引き続ける。
二人の近くで警戒する手塚が声を上げた。
「無人機の増援だ!絶対に二人に近づけさせるな!」
「「了解!!」」
抵抗軍の激しい銃撃が始まる。その最中、ツグミの眼が新たに敵影を捉え、
「製造プラント跡地から更に八体出現。皆さん警戒を!」
弓持ちの核を貫いた刀を引き抜き、辺りを見て苦悶する香南芽は、
「くっ・・・!こんなのがあとどんだけいるんだよ!!」
周囲を囲まれつつある時、斐瀬里は八咫射弩を構え、
「これだけ溜まれば・・・!土龍様、力を貸して!足止めします!」
勾玉が淡く光り、
「承知した」
斐瀬里の八咫射弩が力を発すると、周囲の空気が結露し始めた。押し寄せる敵たちの足元に、土龍の力による岩が生成され、そこに凍てつく弾丸が斐瀬里によって撃ち込まれる。高密度の氷が土龍の力と合わさり、数体の敵の動きを封じたのだった。
百花のショットガンが零距離で敵の兜を吹き飛ばす。その後ろでは、イナホの雷が連続で敵を焼いた。激しい戦闘は続き、皆が力を合わせ、残りもあと十数体になったその時だった。
突如、辺りが大きく揺れだし、製造プラント跡地の残骸を押しのける様に、地面が隆起し始めた。
敵の攻撃が止まる。不穏な空気に全員が息を呑んだ。
「何か来る・・・・!」
イナホがそう言うと、地中から月明かりを遮る巨大な影がズルズルと延びる。すると残りの白き鉄の兵は身を翻し、その影の方へと向かって歩き始めた。
その直後、巨大な影が落ち、白き鉄の兵たちは一口で飲み込まれた。長い影。輝く月を背に、その存在が首をもたげると、詳細が見え始めるのだった。
飛び起きた傑は乱れた息苦しさと動悸に不快感を示す。辺りを見渡すと、まだ周りでは皆が眠っていた。それほど眠れていなかった事を、時計に教えられる。
再び寝ようにも目が覚めてしまい、その辺を見回るように歩き出した。眠れずにいた隣の子供は、それを見て後をついて行く。薄っすら瞼を開ける一人の隊員の眼に、その後ろ姿が写った。
暗闇の中、避難所内では、まだ使える携帯端末を囲むように、数人が集まっているのを傑は目にする。傍で聞き耳を立てると、
「これ本当なのかな?」
「こんな時に誰がこんな手の込んだ悪戯できるよ?やっと救いの手が差し伸べられたんだ!」
「俺の家は、代々天照大御神様を崇めてきたんだ。祈りが通じたって事かなあ!?」
疑いながらも期待を抱く者、涙して喜ぶ者とそれぞれだが、確実にイナホの思惑と傑の開発の成果は広がりつつあった。
爆風に面した山肌の木々が吹き飛ばされ、イナホ達の頭上を飛んでいく。皆、身を屈めて顔を伏せていた。
揺れが収まると大量の土埃が降ってきた。悠はそれを払いながら、
「ごほっごほっ。こ、この力は、有事と言っても、好き勝手使えるものではないな・・・」
体に積もった土を落としイナホも立ち上がり、
「みんな大丈夫!?これが月詠様の力・・・・」
ツグミも辺りを確認すると、
「皆、無事のようですね。・・・・土の味がします」
神の御業を目の当たりにし呆然とする手塚達は、
「これが神の力なのか?世界の終焉でも見た気分だ」
平然とした月詠は、
「夜目が効くよう、望月で照らそう」
そう言うと、下弦に欠けていたはずの月が満ちていき、辺りが眩い月明かりに包まれた。山を見上げた手塚は、
「隕石とは予定外だったが、辺りは片付いたはずだ。作戦開始位置に向かおう」
イナホ達は小高い山を登って行った。
山の頂上。イナホ達がそこから平地を見下ろすと、目下には大きなクレーターが出来ていた。するとまだ収まらない土埃の中に、自律兵器達の残骸に混じり、白い輝きがいくつか見えた。月詠がそれらを見据え、
「やはり無傷であったか。こちらに気づいたぞ」
その言葉と同時に白き鉄の兵達は、一斉に武器を構えるのだった。
悠が慶介とツグミへ、
「二人は狙撃位置へ!手塚さん達は無人機の増援があった場合、二人をお願いします!俺たちはかく乱しながら、各個撃破を!」
後方支援の二人は、イナホと司に秋ノ御太刀を預ける。その傍ら、手塚は銃を持ち直すと、
「よし、皆聞いたな?後方支援の二人を守り抜くぞ!」
隊員達が声を上げると、イナホは皆を見て、
「行こう!みんな!」
その声を合図に、イナホ達は一斉に山の斜面へと飛び降りた。
木々の禿げた山肌を滑るように駆け降りるイナホ達。ツグミと慶介は八咫射弩を狙撃用ライフルに変形させ、高台からスコープを覗き込む。ツグミは通信を飛ばし、
「目視可能範囲、敵数三十五。二時方向、初めて見る白き鉄の兵を五体確認しました。弓の様な武装を装備。遠距離攻撃タイプだと思われます。優先して無力化してください。攻撃を開始します」
悠は、
「了解した。俺たちは二人への給弾を任されているイナホと司を支援しつつ、弓持ちに近づくぞ!」
応答し終わると同時、山の斜面を下りきったイナホ達は、敵の前衛部隊に銃弾を浴びせつつ向かって行く。ツグミ達の弾丸が彼女らの頭上を飛び、後方の弓を持った敵の体を仰け反らせる。
そして前線では刀と刀のぶつかり合いが始まった。月詠も華麗な剣技で敵を引き受け、
「鎧の砕けたものは私に回せ!お前達は先へ進むのだ!」
イナホは二振りの刀で、露出した敵の脚の肉を断つと、
「はい!お願いします!」
倒れた敵を確認すると、次の敵へと駆けて行った。応戦する悠と司の視界に、大弓を引く敵の姿が見えた。司は、
「まずい!山の上を狙ってる!」
悠は八咫射弩をグレネードランチャーに変化させ、
「司!暫く頼む!させるか!」
擲弾を連射する悠。爆風が周囲の敵を巻き込みながら、弓の狙いを逸らせた。
山の上で後方支援を続ける慶介のすぐ横に、大きな矢が突き刺さる。しかし、それに動じることなく、呼吸を整え、二人は仲間のために引き金を引き続ける。
二人の近くで警戒する手塚が声を上げた。
「無人機の増援だ!絶対に二人に近づけさせるな!」
「「了解!!」」
抵抗軍の激しい銃撃が始まる。その最中、ツグミの眼が新たに敵影を捉え、
「製造プラント跡地から更に八体出現。皆さん警戒を!」
弓持ちの核を貫いた刀を引き抜き、辺りを見て苦悶する香南芽は、
「くっ・・・!こんなのがあとどんだけいるんだよ!!」
周囲を囲まれつつある時、斐瀬里は八咫射弩を構え、
「これだけ溜まれば・・・!土龍様、力を貸して!足止めします!」
勾玉が淡く光り、
「承知した」
斐瀬里の八咫射弩が力を発すると、周囲の空気が結露し始めた。押し寄せる敵たちの足元に、土龍の力による岩が生成され、そこに凍てつく弾丸が斐瀬里によって撃ち込まれる。高密度の氷が土龍の力と合わさり、数体の敵の動きを封じたのだった。
百花のショットガンが零距離で敵の兜を吹き飛ばす。その後ろでは、イナホの雷が連続で敵を焼いた。激しい戦闘は続き、皆が力を合わせ、残りもあと十数体になったその時だった。
突如、辺りが大きく揺れだし、製造プラント跡地の残骸を押しのける様に、地面が隆起し始めた。
敵の攻撃が止まる。不穏な空気に全員が息を呑んだ。
「何か来る・・・・!」
イナホがそう言うと、地中から月明かりを遮る巨大な影がズルズルと延びる。すると残りの白き鉄の兵は身を翻し、その影の方へと向かって歩き始めた。
その直後、巨大な影が落ち、白き鉄の兵たちは一口で飲み込まれた。長い影。輝く月を背に、その存在が首をもたげると、詳細が見え始めるのだった。
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