The Outer Myth(アウターミス) ~外円神話~

とちのとき

文字の大きさ
70 / 83
第一部 目覚めの少女と嘆きの神

56話 結びて断ちて3

しおりを挟む
 「はっ!ツグミっ・・・!」
 飛び起きた傑は乱れた息苦しさと動悸に不快感を示す。辺りを見渡すと、まだ周りでは皆が眠っていた。それほど眠れていなかった事を、時計に教えられる。
 再び寝ようにも目が覚めてしまい、その辺を見回るように歩き出した。眠れずにいた隣の子供は、それを見て後をついて行く。薄っすら瞼を開ける一人の隊員の眼に、その後ろ姿が写った。

 暗闇の中、避難所内では、まだ使える携帯端末を囲むように、数人が集まっているのを傑は目にする。傍で聞き耳を立てると、
 「これ本当なのかな?」
 「こんな時に誰がこんな手の込んだ悪戯できるよ?やっと救いの手が差し伸べられたんだ!」
 「俺の家は、代々天照大御神様を崇めてきたんだ。祈りが通じたって事かなあ!?」
 疑いながらも期待を抱く者、涙して喜ぶ者とそれぞれだが、確実にイナホの思惑と傑の開発の成果は広がりつつあった。



 爆風に面した山肌の木々が吹き飛ばされ、イナホ達の頭上を飛んでいく。皆、身を屈めて顔を伏せていた。
 揺れが収まると大量の土埃が降ってきた。悠はそれを払いながら、
 「ごほっごほっ。こ、この力は、有事と言っても、好き勝手使えるものではないな・・・」
 体に積もった土を落としイナホも立ち上がり、
 「みんな大丈夫!?これが月詠様の力・・・・」
 ツグミも辺りを確認すると、
 「皆、無事のようですね。・・・・土の味がします」
 神の御業を目の当たりにし呆然とする手塚達は、
 「これが神の力なのか?世界の終焉でも見た気分だ」
 平然とした月詠は、
 「夜目が効くよう、望月で照らそう」
 そう言うと、下弦に欠けていたはずの月が満ちていき、辺りが眩い月明かりに包まれた。山を見上げた手塚は、
 「隕石とは予定外だったが、辺りは片付いたはずだ。作戦開始位置に向かおう」
 イナホ達は小高い山を登って行った。

 山の頂上。イナホ達がそこから平地を見下ろすと、目下には大きなクレーターが出来ていた。するとまだ収まらない土埃の中に、自律兵器達の残骸に混じり、白い輝きがいくつか見えた。月詠がそれらを見据え、
 「やはり無傷であったか。こちらに気づいたぞ」
 その言葉と同時に白き鉄の兵達は、一斉に武器を構えるのだった。

 悠が慶介とツグミへ、
 「二人は狙撃位置へ!手塚さん達は無人機の増援があった場合、二人をお願いします!俺たちはかく乱しながら、各個撃破を!」
 後方支援の二人は、イナホと司に秋ノ御太刀あきのみたちを預ける。その傍ら、手塚は銃を持ち直すと、
 「よし、皆聞いたな?後方支援の二人を守り抜くぞ!」
 隊員達が声を上げると、イナホは皆を見て、
 「行こう!みんな!」
 その声を合図に、イナホ達は一斉に山の斜面へと飛び降りた。

 木々の禿げた山肌を滑るように駆け降りるイナホ達。ツグミと慶介は八咫射弩やたのいどを狙撃用ライフルに変形させ、高台からスコープを覗き込む。ツグミは通信を飛ばし、
 「目視可能範囲、敵数三十五。二時方向、初めて見る白き鉄の兵を五体確認しました。弓の様な武装を装備。遠距離攻撃タイプだと思われます。優先して無力化してください。攻撃を開始します」
 悠は、
 「了解した。俺たちは二人への給弾を任されているイナホと司を支援しつつ、弓持ちに近づくぞ!」
 応答し終わると同時、山の斜面を下りきったイナホ達は、敵の前衛部隊に銃弾を浴びせつつ向かって行く。ツグミ達の弾丸が彼女らの頭上を飛び、後方の弓を持った敵の体を仰け反らせる。
 そして前線では刀と刀のぶつかり合いが始まった。月詠も華麗な剣技で敵を引き受け、
 「鎧の砕けたものは私に回せ!お前達は先へ進むのだ!」
 イナホは二振りの刀で、露出した敵の脚の肉を断つと、
 「はい!お願いします!」
 倒れた敵を確認すると、次の敵へと駆けて行った。応戦する悠と司の視界に、大弓を引く敵の姿が見えた。司は、
 「まずい!山の上を狙ってる!」
 悠は八咫射弩をグレネードランチャーに変化させ、
 「司!暫く頼む!させるか!」
 擲弾を連射する悠。爆風が周囲の敵を巻き込みながら、弓の狙いを逸らせた。

 山の上で後方支援を続ける慶介のすぐ横に、大きな矢が突き刺さる。しかし、それに動じることなく、呼吸を整え、二人は仲間のために引き金を引き続ける。
 二人の近くで警戒する手塚が声を上げた。
 「無人機の増援だ!絶対に二人に近づけさせるな!」
 「「了解!!」」
 抵抗軍の激しい銃撃が始まる。その最中、ツグミの眼が新たに敵影を捉え、
 「製造プラント跡地から更に八体出現。皆さん警戒を!」

 弓持ちの核を貫いた刀を引き抜き、辺りを見て苦悶する香南芽は、
 「くっ・・・!こんなのがあとどんだけいるんだよ!!」
 周囲を囲まれつつある時、斐瀬里は八咫射弩を構え、
 「これだけ溜まれば・・・!土龍様、力を貸して!足止めします!」
 勾玉が淡く光り、
 「承知した」
 斐瀬里の八咫射弩が力を発すると、周囲の空気が結露し始めた。押し寄せる敵たちの足元に、土龍の力による岩が生成され、そこに凍てつく弾丸が斐瀬里によって撃ち込まれる。高密度の氷が土龍の力と合わさり、数体の敵の動きを封じたのだった。
 百花のショットガンが零距離で敵の兜を吹き飛ばす。その後ろでは、イナホの雷が連続で敵を焼いた。激しい戦闘は続き、皆が力を合わせ、残りもあと十数体になったその時だった。
 突如、辺りが大きく揺れだし、製造プラント跡地の残骸を押しのける様に、地面が隆起し始めた。

 敵の攻撃が止まる。不穏な空気に全員が息を呑んだ。
 「何か来る・・・・!」
 イナホがそう言うと、地中から月明かりを遮る巨大な影がズルズルと延びる。すると残りの白き鉄の兵は身を翻し、その影の方へと向かって歩き始めた。
 その直後、巨大な影が落ち、白き鉄の兵たちは一口で飲み込まれた。長い影。輝く月を背に、その存在が首をもたげると、詳細が見え始めるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...