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謀略
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◆
同日・深夜。
中国共産党『中央政治局常務委員会』大会議室。
深夜に急きょ召集され、開かれた委員会は参加者の誰もが声を上げることが出来ず、
重苦しい空気に満ちていた。
中国の最高組織、常務委員会の委員七名に加え中央軍事委員会のメンバーが顔を揃え、緊張の面持ちで毛主席の
言葉を待っていた。
総書記の毛沢山は、苦虫を噛み潰した顔をしている。
国が分裂する危機を救い、人民の支持を背景に、汚職にまみれた共産党幹部を
一掃した毛は、クーデターにも似た手法で政権を手にしていた。それは軍の支持が
あって成し得たものだった。
容姿端麗で背の高い毛は、共産党員には稀な清廉さを売りにし、民衆の支持を
集めていた。
生活もそれと判るように質素で、人民の訴えや要望を取り上げるなど、いわば八方美人的存在だった。
毛の沈黙に、集まった者たちは、その怒りの大きさを測りかねていた。
次第に密やかな私語が交わされ、会場がざわめいていく。
「おい、いったいこの後はどうなるんだ? 毛に俺たちを処断する力はないだろうし…。しかし結果が
あれだからなぁ。上将は簡単に諦める人間じゃないから、
なにか反撃の手を考えるんだろうな」
「李が簡単に権力を手放すわけが無いだろう。お手並み拝見。黙って見ているのが
得策だよ」
軍人同士のヒソヒソ話だ。
「軍の失態は毛の失態でもあるわけだぞ。いくら李上将の進言に従ったとは言え、
責任はあるだろう。これはチャンスかも知れんな」
「ああ、毛がいかに自分の責任を回避するのか、お手並み拝見ってところだ。
責任を転嫁されないよう、注意しないとな」
下を向いたまま交わす常務委員の会話だった。
毛は軍の強硬派を抑えきれず従前の手法に従い、
反日の旗で『中国船の釣魚島行き』を許したことを後悔していた。
今起きている釣魚島での事態により、抜き差しならぬ立場に追い込まれるのは、
明らかだった。
千隻に登る中国漁船が、尖閣沖で漂っていると言う今回の事態は、世界中に報道され
注目を集めている。
いわば、世界中の晒し者にされているのだ。
無論中国国内でもネットを介してこの事態は知れ渡り、今回の失態は隠しようもなく、今後の動きが
焦点となっていた。
中央に座る毛総書記が、全員を見回している。
「君たちの中で、この事態を説明できる人間は、いないのか?」
会場が静まり返る。
毛総書記が問いかける声色は、静かで低いものだった。
おもむろに立ち上がった李孔明の声は甲高く、震えがあった。
「こ、これは日本の陰謀です。こんなことがあるわけがありません。
我々の船団は日本の攻撃を受けたのです」
毛の目は、冷ややかだ。
「あるわけがないことが起きた、そう言うことなのか? 李上将、それで攻撃とは、
具体的に言ってどういうことなのかね? 沈んだ船でもあったのか?」
静かな声色の中に、怒気が含まれていることが判る。
李の額には、脂汗が浮かんでいる。
「そ、それはありません。公船を含め何らかの妨害を受け、船の推力を失くし洋上で
漂っている、そう言うことです。
全く、想定外の事態です」
言い訳する李にも、いったい何が起きたのか判っていなかった。
毛が苦笑いする。
「想定外? では、こう言えばいいのか?
千隻の漁船をあつめ釣魚島の占有を図ったが、日本の不当な攻撃に会い、
洋上で立ち往生しました」
「……」
李に返す言葉は無い。握りしめた両手が震えていた。
「君は外に向って、そう言えるのか?」
なにも言い返せない李は、下を向き黙り込む。
「おまけに領海侵犯で、漁船十一隻と乗組員が拿捕されている。世界に恥を晒した上、
人質まで取られているのだぞ」
毛は追及の手を緩めない。
「予想外の台風が近づいていると言うじゃないか。
一万人近い乗組員の救出は、どうするつもりだ?」
李の唇が屈辱に歪んでいる。
「現在の我が国の能力では、対応のしようがありません。
海が穏やかで、時間さえあればなんとかなりますが」
「じゃぁ、どうするのだ? このまま一万数千の同胞を見捨てるつもりか?
軍は、……そう、君は、勝つこと以外、想定していなかったとでも言うのか!」
「そ、それは……」
李は唇を噛んで下を向いたままだった。
「まったく。話にならん!」
毛は机をたたいて、怒りを露わにした。
「誰かおらんのか? この事態をなんとか出来る人間は」
毛が一人一人の顔を睨みつけながら、見回している。
「総書記!」
後席にすわる若い軍人の一人が、手を挙げ声を発した。
「なんだね君は? 軍事委員ではないな」
立ち上がった男は、強い眼差しで毛を見つめている。
「はい、自分は、諜報部の馬辰であります。時間がありませんので、発言をお許し
下さい」
「かまわん、話してみろ」
「日本と米国に救助要請をすべきです。非公式でよいのです。
彼らには救出の準備が整っております」
馬は言いたい発言を終えると、席に腰を下ろした。
会議場に、大きなざわめきが広がっていく。
「日本に頼むだとお! 正気かぁ? フザケタことを言うな!」
立ち上がった李が、顔を赤くして声を荒げる。
「一万人を超える同胞を失えば、取り返しのつかない国内問題が発生します。
この際メンツなどに拘っていられません。依頼は非公式でよいのです。
そうすれば、彼らは動いてくれます」
馬は座ったまま、平然と話を続けた。
「まだ言うか! 黙れ!」
興奮して納まりのつかない李を制して、毛が話す
「李委員は静かにしなさい」
「毛主席! なにを仰るのですか……」
李は顔を真っ赤にし、震える声で話を続けようとする
「良いから君は、黙っていなさい!」
なにか言い出しそうな李を制し、
「馬君、米日の海軍に準備ができているというのは、本当だな?
救助を要請すればことは済む、そうなのか?」
「我々の情報に間違いはありません。仰る通りです。
海警レベルの要請でも構わないかと思われます。ただ事情を知らない、現場にいる
人間を説得する必要があります」
中国公船はともかく、現場の漁船の中にはいったい何が起きているのか、判っていない船が多かった。
ましてや台風が近づいている、等の情報すら持たない船もあったからだ。
「我が国の乗員が抵抗しないよう命令しないと、米日が手を出せない、
そういうことなのか」
毛が馬を見つめて問いかけた。
「はい! 仰る通りです」
「わかった、やむを得んな」
議場の大勢は決した。
会議室の壁には数匹の『蚊』が止まっていた。
◆
翌日・早朝・NSC会議室。
昨日に引き続き、NSCの主だったメンバーが集まっている。
安どの表情を浮かべた者が多く、昨日とはうって変わり会議室は和やかな雰囲気に
包まれていた。
大町新平二佐。
NSCに新設された諜報部門『海神』の責任者で、これまでNSCを実質的に主導し
管理してきた男だ。
石葉とは盟友ともいえる間柄で、国防、特に諜報に関し意思を共有し、
組織作りやその質の向上に努めてきた間柄だった。
その大町が報告を始める。
「総理! 非公式にですが、ようやく中国から船員の救出要請が来ました。
ふざけた話ですが、中国の船員には、我々の指示に従うよう命じたとのことです。
今更何を、って感じですが」
「まぁそう言うな、大町君。ことが大事に至らないよう、万全を尽くしてくれたまえ」
石葉首相の顔にも、深い安どの色が見えた。
「さいわい、第七艦隊に所属する揚陸艦の基地が佐世保だったため、米軍との連携は
上手くいきそうです。海幕の話では、強襲揚陸艦・ボノム・リシャールを始め、
4隻の揚陸艦が尖閣近海で待機してくれているそうです」
「そうか、助かったな。同盟国とはありがたいもんだな」
石葉は親米派と言ってよい感覚の持ち主だった。
「海軍からはヘリコプター母艦、『ひゅうが』と『いずも』が出動、
すでに現地で待機しています。これら6艦をプラットホームに救助活動すれば、
量的にも充分対応できます。余裕を考慮し2万人分の収容能力を確保して、
複数の民間フェリーもチャーターしており、速やかに移乗させれば、それで解決です」
前方のスクリーンには、米艦艇とフェリーの姿が映されている。
「少し大仰な気もするが、それくらいで丁度良いと思う。これで中国にも貸しが
作れると言うもんだ」
中国漁船の救出劇は、世界に向けて報道されていた。
「ははは、総理、あの国相手にそんなうまく行きますかね? そもそも救援を要請
してきたのが、国家組織としては格下の、中国海警ですからね。
貸しと言うなら台湾じゃないですか? あの漁船団には二十数隻の台湾船が混じって
いました。これ以上問題がこじれるのは厄介ですので、秘密裏に送還しておきました」
「相手が台湾じゃ、どうしようもないな。中国の動きに便乗した、
そんなところだろうな? だが、最悪の事態は回避した、そう思わないか? 大町君」
大町は、黙ったまま頷くことはなかった。
想定外と言える台風の接近で、天候が急変した海域での救出活動は、困難を極めた。
荒れた海で動力を失った船に為す術はなく、船員の救出は最優先事項として急がれた。
波に翻弄される漁船に強行接舷し、船員を移乗させる。ヘリコプターで船員を吊り上げての移乗させる等、
時間との勝負の中で、一人の死者を出すことも無く、作戦を成功裏に
終える事が出来た。
奇跡とも言える救出劇は、余すことなく報道され、日米両国は世界の称賛を浴びることになる。
民間漁船による暴走として責任回避する中国は、取締りの確約と謝意を表明する
しかなかった。
一時的に起きた日本の経済危機は、中国船員救出のニュースを待って終息する
ことになる。
尖閣までやってきた中国の人員は救われたものの、その後に襲った台風により、
千隻に余る船舶の殆どが失われることになった。
荒れる海で、主を失った船を回収する方法など、あり得ない。
右寄りの人たちは『神風』が吹いたと喝采したが、中国の対日感情は当然のごとく
悪化するばかりだ。
中国にしてみれば蒙古以来の歴史的悪夢で、再び排日運動が活発化し、
両国間の緊張は危険な水域に入っていた。
この異常事態に世界の注目が集まるが、その真相が明らかにされることはなかった。
二 謀略
(一年前)
市ヶ谷、『海神』作戦会議室
中国ではかつてない規模と頻度で暴動が発生し、それは沿岸部の大都市にも波及
しそうな勢いで拡大していた。
中国バブルの崩壊は、国営企業とそれに連なる党幹部の腐敗を余すことなく、
大衆の目に晒すことになった。
今回の暴動の特徴は従来のモノとは大きく異なり、その怒りの矛先が明確に内
(共産党)に向けられていたことにある。
その暴動の中で、数人の日本人犠牲者が発生していた。
石葉首相と『海神』のスタッフが、緊急に中国情勢の分析・評価を行うべく集まり、
意見を交わしている。
大町以外のスタッフは、松本・神田二尉、西浜・大西三尉の四名。
若い将校クラスの人間にすれば、中国に対してシンパシィを感じる者等、
皆無と言ってよかった。
「大町君、中国がずいぶんとキナ臭い雰囲気になっているな。これ以上日本人の
犠牲者を出すことは、許されんぞ」
現地駐在員の家族など、既に多くの日本人が中国からの引き上げを開始していた。
外務省が渡航自粛勧告を出す中、デモによる犠牲者の中に、日本人がカウントされる
事態も生じていたのだ。
それはこれまでと真逆で、共産党への抗議のドサクサに紛れた、反日行為の結果でも
あった。
「こんな事態は想定外と言うほかありません。原因はデモですので、
我々には対処しようがありません、それが現状です」
大町の顔にも苦悩の表情が浮かんでいる。
石葉首相の表情は、苦り切っていた。
「我々は手をこまねいているしかないのか? このままでは日本人の犠牲者が増える
ばかりじゃないか」
「おっしゃる通りです。現状のままではさらなる混乱、内乱が起きかねない状況に
あります。中国にとっては、まさに体制の危機と言ってよい状態かと思われます」
スタッフの一人神田二尉が、資料を配りながら説明する。
「これがこれまで発生した暴動の規模と、死者をカウントしたグラフになります。
内陸部の都市から津波のように沿岸部の都市に押し寄せる、そんな様相を呈しています」
中国では各地で暴動が多発し、それは都市部にも波及していた。
社会の騒乱に伴い、日本人犠牲者の数も増えつつあった。
極端な格差社会、共産党幹部による権力の乱用と汚職の蔓延。
人民の不満はそのことに対処できないでいる、自治体とその行政、更には統治機構
本体に向けられていた。
以前のように日本をダミーにした抗議ではなく、これまでには無い形で怒りの矛先は
直接、共産党そのものに向けられている。
地方の混乱に乗じた、民族の独立を主張する勢力の台頭も著しく、無差別テロの発生
などで、その混迷の度合いは一層深まっていた。
「どうだ、今の中国の混乱を収める、なにか良い知恵はないだろうか?
これ以上の日本人犠牲者は出したくない。
このままでは周辺国も含め、世界に対する影響が大き過ぎるぞ。 現に極端な元安が
進み、世界のマーケットは混乱を極めている。 このまま放置はできん」
石葉の表情には、苦悩の色が浮かんでいた。
「そうは仰いますが日本人救出は別にして、今更中国に手を貸してどうしようと
言うのですか?
助けてやっても、感謝する連中じゃありませんから。
諜報部門に身を置く立場からして、中国人スパイで溢れた日本の現状を考えると、
とてもじゃない、助ける気になんてなれませんよ。
生意気を言うようで申し訳ありませんが」
若い松本二尉が顔を真っ赤にして、発言した。
石葉はきつい顔になり、
「松本君、小さいことを言うな。『戦略的互恵関係』これが中国との基本であり原則だ。
どちらが倒れても立ち行かない、既にそう言う関係なのだよ。
中国が分裂して良いこと等一つも無いのだ。
君たちで何か方策を考えてくれ。しかも早急にだ」
大町は腕を組んで、傍観を決めている、そんな感じだ。
これまで大町は、中国に関する情報は多岐に渡り集めていた。
キンチョーを手にしてから日本の諜報活動は、中国に限らず、朝鮮半島、ロシア、
アメリカにまで及んでいる。
現状考えられる最大の敵対国、それは誰が考えても中国と言うしかなかった。
隣国でもあり、世界第二の経済大国にのし上がった中国は、その国内に見えない
不安定要素をはらんだ、実に厄介な国だと言えた。
「中国に関しては、これまで超大な情報収集を重ねてきました。キンチョーの実験場、
そうした意味も含め軍事に拘らず、全ての分野で情報を集めて来ています」
大町の諜報網は軍の機密事項はおろか、共産党幹部や軍首脳の個人情報など、
多岐に渡り念入りに調べ上げていた。日中間に危機が訪れた時、中国の体制を崩壊
させるほどのインパクトがある情報を収集し、有効に使うべく分析していたのだ。
それはキンチョーの成果によるもので、中国はその実験場として大いに役立ち、
長期にしかも広範に情報が集めることが出来た。
キンチョーは『海神』が開発した微細蚊型ドローン・ロボットで、どこにでも
侵入できる偵察・間諜仕様のモノだった。
「共産党関係者や軍部首脳に関する、大量の個人情報が手元にあります。
これを使えばなんらかの形で、政治を動かすことが出来るかと思います。
あとは使い方ですね、考えてみます」
大町にしてみれば、日中間の有事に活用すべく収集した情報だが、皮肉にも中国の
体制維持の為に使え、との命令を受けたことになる。
「そうか、間に合うように急いでくれ。中国がそんなに長く持つとは思えん。
崩壊したら元も子もないのだからな」
そう指示を伝え、石葉は退室して行った。
「……」
指令を受けた大町たちは、苦笑するしかなかった。
大町にしてみれば、
汚職に手を染めていない幹部など、一人としていないのだから、
スケープゴートは掃いて捨てるほどいる。
ターゲットを絞り個人を追い落とすことは、容易にだった。
それを有効に使って、政治を動かせば良いのだ。
大町には中国内に使える、手駒があった。
周経国、中国のマスコミに多大な影響力を持つ人物だ。
ネットを通じて中国人として、周と繋がった大町は、様々な中国国内の情報を
提供してきた。大町の提供する情報の質は高く、政治の秘匿事項も多く含まれ、
周の活動を多面的に支えてきた。
殆ど日課になっている、周とのやり取りの中で、
「周さん、私には今の混乱を収める思案がある。君の力で、中国を崩壊の危機から
救ってほしい。どうだ、やってみないか?」
「この危機を収める方法があると言うのか? そんな思案があるなら、
是非とも聞かせて欲しいものだ」
中国の言論界で、周の存在は巨大なものになり、世論をリードするまでになっていた。
無論二人は会ったこともなく、有線で会話した事さえない。
ネット上だけの繋がり、それが二人の約束事だ。
裏では共産党とも良好な関係を保ち、表では民主化の立場で言論界をリードしてきた男、
それが周経国だった。
同日・深夜。
中国共産党『中央政治局常務委員会』大会議室。
深夜に急きょ召集され、開かれた委員会は参加者の誰もが声を上げることが出来ず、
重苦しい空気に満ちていた。
中国の最高組織、常務委員会の委員七名に加え中央軍事委員会のメンバーが顔を揃え、緊張の面持ちで毛主席の
言葉を待っていた。
総書記の毛沢山は、苦虫を噛み潰した顔をしている。
国が分裂する危機を救い、人民の支持を背景に、汚職にまみれた共産党幹部を
一掃した毛は、クーデターにも似た手法で政権を手にしていた。それは軍の支持が
あって成し得たものだった。
容姿端麗で背の高い毛は、共産党員には稀な清廉さを売りにし、民衆の支持を
集めていた。
生活もそれと判るように質素で、人民の訴えや要望を取り上げるなど、いわば八方美人的存在だった。
毛の沈黙に、集まった者たちは、その怒りの大きさを測りかねていた。
次第に密やかな私語が交わされ、会場がざわめいていく。
「おい、いったいこの後はどうなるんだ? 毛に俺たちを処断する力はないだろうし…。しかし結果が
あれだからなぁ。上将は簡単に諦める人間じゃないから、
なにか反撃の手を考えるんだろうな」
「李が簡単に権力を手放すわけが無いだろう。お手並み拝見。黙って見ているのが
得策だよ」
軍人同士のヒソヒソ話だ。
「軍の失態は毛の失態でもあるわけだぞ。いくら李上将の進言に従ったとは言え、
責任はあるだろう。これはチャンスかも知れんな」
「ああ、毛がいかに自分の責任を回避するのか、お手並み拝見ってところだ。
責任を転嫁されないよう、注意しないとな」
下を向いたまま交わす常務委員の会話だった。
毛は軍の強硬派を抑えきれず従前の手法に従い、
反日の旗で『中国船の釣魚島行き』を許したことを後悔していた。
今起きている釣魚島での事態により、抜き差しならぬ立場に追い込まれるのは、
明らかだった。
千隻に登る中国漁船が、尖閣沖で漂っていると言う今回の事態は、世界中に報道され
注目を集めている。
いわば、世界中の晒し者にされているのだ。
無論中国国内でもネットを介してこの事態は知れ渡り、今回の失態は隠しようもなく、今後の動きが
焦点となっていた。
中央に座る毛総書記が、全員を見回している。
「君たちの中で、この事態を説明できる人間は、いないのか?」
会場が静まり返る。
毛総書記が問いかける声色は、静かで低いものだった。
おもむろに立ち上がった李孔明の声は甲高く、震えがあった。
「こ、これは日本の陰謀です。こんなことがあるわけがありません。
我々の船団は日本の攻撃を受けたのです」
毛の目は、冷ややかだ。
「あるわけがないことが起きた、そう言うことなのか? 李上将、それで攻撃とは、
具体的に言ってどういうことなのかね? 沈んだ船でもあったのか?」
静かな声色の中に、怒気が含まれていることが判る。
李の額には、脂汗が浮かんでいる。
「そ、それはありません。公船を含め何らかの妨害を受け、船の推力を失くし洋上で
漂っている、そう言うことです。
全く、想定外の事態です」
言い訳する李にも、いったい何が起きたのか判っていなかった。
毛が苦笑いする。
「想定外? では、こう言えばいいのか?
千隻の漁船をあつめ釣魚島の占有を図ったが、日本の不当な攻撃に会い、
洋上で立ち往生しました」
「……」
李に返す言葉は無い。握りしめた両手が震えていた。
「君は外に向って、そう言えるのか?」
なにも言い返せない李は、下を向き黙り込む。
「おまけに領海侵犯で、漁船十一隻と乗組員が拿捕されている。世界に恥を晒した上、
人質まで取られているのだぞ」
毛は追及の手を緩めない。
「予想外の台風が近づいていると言うじゃないか。
一万人近い乗組員の救出は、どうするつもりだ?」
李の唇が屈辱に歪んでいる。
「現在の我が国の能力では、対応のしようがありません。
海が穏やかで、時間さえあればなんとかなりますが」
「じゃぁ、どうするのだ? このまま一万数千の同胞を見捨てるつもりか?
軍は、……そう、君は、勝つこと以外、想定していなかったとでも言うのか!」
「そ、それは……」
李は唇を噛んで下を向いたままだった。
「まったく。話にならん!」
毛は机をたたいて、怒りを露わにした。
「誰かおらんのか? この事態をなんとか出来る人間は」
毛が一人一人の顔を睨みつけながら、見回している。
「総書記!」
後席にすわる若い軍人の一人が、手を挙げ声を発した。
「なんだね君は? 軍事委員ではないな」
立ち上がった男は、強い眼差しで毛を見つめている。
「はい、自分は、諜報部の馬辰であります。時間がありませんので、発言をお許し
下さい」
「かまわん、話してみろ」
「日本と米国に救助要請をすべきです。非公式でよいのです。
彼らには救出の準備が整っております」
馬は言いたい発言を終えると、席に腰を下ろした。
会議場に、大きなざわめきが広がっていく。
「日本に頼むだとお! 正気かぁ? フザケタことを言うな!」
立ち上がった李が、顔を赤くして声を荒げる。
「一万人を超える同胞を失えば、取り返しのつかない国内問題が発生します。
この際メンツなどに拘っていられません。依頼は非公式でよいのです。
そうすれば、彼らは動いてくれます」
馬は座ったまま、平然と話を続けた。
「まだ言うか! 黙れ!」
興奮して納まりのつかない李を制して、毛が話す
「李委員は静かにしなさい」
「毛主席! なにを仰るのですか……」
李は顔を真っ赤にし、震える声で話を続けようとする
「良いから君は、黙っていなさい!」
なにか言い出しそうな李を制し、
「馬君、米日の海軍に準備ができているというのは、本当だな?
救助を要請すればことは済む、そうなのか?」
「我々の情報に間違いはありません。仰る通りです。
海警レベルの要請でも構わないかと思われます。ただ事情を知らない、現場にいる
人間を説得する必要があります」
中国公船はともかく、現場の漁船の中にはいったい何が起きているのか、判っていない船が多かった。
ましてや台風が近づいている、等の情報すら持たない船もあったからだ。
「我が国の乗員が抵抗しないよう命令しないと、米日が手を出せない、
そういうことなのか」
毛が馬を見つめて問いかけた。
「はい! 仰る通りです」
「わかった、やむを得んな」
議場の大勢は決した。
会議室の壁には数匹の『蚊』が止まっていた。
◆
翌日・早朝・NSC会議室。
昨日に引き続き、NSCの主だったメンバーが集まっている。
安どの表情を浮かべた者が多く、昨日とはうって変わり会議室は和やかな雰囲気に
包まれていた。
大町新平二佐。
NSCに新設された諜報部門『海神』の責任者で、これまでNSCを実質的に主導し
管理してきた男だ。
石葉とは盟友ともいえる間柄で、国防、特に諜報に関し意思を共有し、
組織作りやその質の向上に努めてきた間柄だった。
その大町が報告を始める。
「総理! 非公式にですが、ようやく中国から船員の救出要請が来ました。
ふざけた話ですが、中国の船員には、我々の指示に従うよう命じたとのことです。
今更何を、って感じですが」
「まぁそう言うな、大町君。ことが大事に至らないよう、万全を尽くしてくれたまえ」
石葉首相の顔にも、深い安どの色が見えた。
「さいわい、第七艦隊に所属する揚陸艦の基地が佐世保だったため、米軍との連携は
上手くいきそうです。海幕の話では、強襲揚陸艦・ボノム・リシャールを始め、
4隻の揚陸艦が尖閣近海で待機してくれているそうです」
「そうか、助かったな。同盟国とはありがたいもんだな」
石葉は親米派と言ってよい感覚の持ち主だった。
「海軍からはヘリコプター母艦、『ひゅうが』と『いずも』が出動、
すでに現地で待機しています。これら6艦をプラットホームに救助活動すれば、
量的にも充分対応できます。余裕を考慮し2万人分の収容能力を確保して、
複数の民間フェリーもチャーターしており、速やかに移乗させれば、それで解決です」
前方のスクリーンには、米艦艇とフェリーの姿が映されている。
「少し大仰な気もするが、それくらいで丁度良いと思う。これで中国にも貸しが
作れると言うもんだ」
中国漁船の救出劇は、世界に向けて報道されていた。
「ははは、総理、あの国相手にそんなうまく行きますかね? そもそも救援を要請
してきたのが、国家組織としては格下の、中国海警ですからね。
貸しと言うなら台湾じゃないですか? あの漁船団には二十数隻の台湾船が混じって
いました。これ以上問題がこじれるのは厄介ですので、秘密裏に送還しておきました」
「相手が台湾じゃ、どうしようもないな。中国の動きに便乗した、
そんなところだろうな? だが、最悪の事態は回避した、そう思わないか? 大町君」
大町は、黙ったまま頷くことはなかった。
想定外と言える台風の接近で、天候が急変した海域での救出活動は、困難を極めた。
荒れた海で動力を失った船に為す術はなく、船員の救出は最優先事項として急がれた。
波に翻弄される漁船に強行接舷し、船員を移乗させる。ヘリコプターで船員を吊り上げての移乗させる等、
時間との勝負の中で、一人の死者を出すことも無く、作戦を成功裏に
終える事が出来た。
奇跡とも言える救出劇は、余すことなく報道され、日米両国は世界の称賛を浴びることになる。
民間漁船による暴走として責任回避する中国は、取締りの確約と謝意を表明する
しかなかった。
一時的に起きた日本の経済危機は、中国船員救出のニュースを待って終息する
ことになる。
尖閣までやってきた中国の人員は救われたものの、その後に襲った台風により、
千隻に余る船舶の殆どが失われることになった。
荒れる海で、主を失った船を回収する方法など、あり得ない。
右寄りの人たちは『神風』が吹いたと喝采したが、中国の対日感情は当然のごとく
悪化するばかりだ。
中国にしてみれば蒙古以来の歴史的悪夢で、再び排日運動が活発化し、
両国間の緊張は危険な水域に入っていた。
この異常事態に世界の注目が集まるが、その真相が明らかにされることはなかった。
二 謀略
(一年前)
市ヶ谷、『海神』作戦会議室
中国ではかつてない規模と頻度で暴動が発生し、それは沿岸部の大都市にも波及
しそうな勢いで拡大していた。
中国バブルの崩壊は、国営企業とそれに連なる党幹部の腐敗を余すことなく、
大衆の目に晒すことになった。
今回の暴動の特徴は従来のモノとは大きく異なり、その怒りの矛先が明確に内
(共産党)に向けられていたことにある。
その暴動の中で、数人の日本人犠牲者が発生していた。
石葉首相と『海神』のスタッフが、緊急に中国情勢の分析・評価を行うべく集まり、
意見を交わしている。
大町以外のスタッフは、松本・神田二尉、西浜・大西三尉の四名。
若い将校クラスの人間にすれば、中国に対してシンパシィを感じる者等、
皆無と言ってよかった。
「大町君、中国がずいぶんとキナ臭い雰囲気になっているな。これ以上日本人の
犠牲者を出すことは、許されんぞ」
現地駐在員の家族など、既に多くの日本人が中国からの引き上げを開始していた。
外務省が渡航自粛勧告を出す中、デモによる犠牲者の中に、日本人がカウントされる
事態も生じていたのだ。
それはこれまでと真逆で、共産党への抗議のドサクサに紛れた、反日行為の結果でも
あった。
「こんな事態は想定外と言うほかありません。原因はデモですので、
我々には対処しようがありません、それが現状です」
大町の顔にも苦悩の表情が浮かんでいる。
石葉首相の表情は、苦り切っていた。
「我々は手をこまねいているしかないのか? このままでは日本人の犠牲者が増える
ばかりじゃないか」
「おっしゃる通りです。現状のままではさらなる混乱、内乱が起きかねない状況に
あります。中国にとっては、まさに体制の危機と言ってよい状態かと思われます」
スタッフの一人神田二尉が、資料を配りながら説明する。
「これがこれまで発生した暴動の規模と、死者をカウントしたグラフになります。
内陸部の都市から津波のように沿岸部の都市に押し寄せる、そんな様相を呈しています」
中国では各地で暴動が多発し、それは都市部にも波及していた。
社会の騒乱に伴い、日本人犠牲者の数も増えつつあった。
極端な格差社会、共産党幹部による権力の乱用と汚職の蔓延。
人民の不満はそのことに対処できないでいる、自治体とその行政、更には統治機構
本体に向けられていた。
以前のように日本をダミーにした抗議ではなく、これまでには無い形で怒りの矛先は
直接、共産党そのものに向けられている。
地方の混乱に乗じた、民族の独立を主張する勢力の台頭も著しく、無差別テロの発生
などで、その混迷の度合いは一層深まっていた。
「どうだ、今の中国の混乱を収める、なにか良い知恵はないだろうか?
これ以上の日本人犠牲者は出したくない。
このままでは周辺国も含め、世界に対する影響が大き過ぎるぞ。 現に極端な元安が
進み、世界のマーケットは混乱を極めている。 このまま放置はできん」
石葉の表情には、苦悩の色が浮かんでいた。
「そうは仰いますが日本人救出は別にして、今更中国に手を貸してどうしようと
言うのですか?
助けてやっても、感謝する連中じゃありませんから。
諜報部門に身を置く立場からして、中国人スパイで溢れた日本の現状を考えると、
とてもじゃない、助ける気になんてなれませんよ。
生意気を言うようで申し訳ありませんが」
若い松本二尉が顔を真っ赤にして、発言した。
石葉はきつい顔になり、
「松本君、小さいことを言うな。『戦略的互恵関係』これが中国との基本であり原則だ。
どちらが倒れても立ち行かない、既にそう言う関係なのだよ。
中国が分裂して良いこと等一つも無いのだ。
君たちで何か方策を考えてくれ。しかも早急にだ」
大町は腕を組んで、傍観を決めている、そんな感じだ。
これまで大町は、中国に関する情報は多岐に渡り集めていた。
キンチョーを手にしてから日本の諜報活動は、中国に限らず、朝鮮半島、ロシア、
アメリカにまで及んでいる。
現状考えられる最大の敵対国、それは誰が考えても中国と言うしかなかった。
隣国でもあり、世界第二の経済大国にのし上がった中国は、その国内に見えない
不安定要素をはらんだ、実に厄介な国だと言えた。
「中国に関しては、これまで超大な情報収集を重ねてきました。キンチョーの実験場、
そうした意味も含め軍事に拘らず、全ての分野で情報を集めて来ています」
大町の諜報網は軍の機密事項はおろか、共産党幹部や軍首脳の個人情報など、
多岐に渡り念入りに調べ上げていた。日中間に危機が訪れた時、中国の体制を崩壊
させるほどのインパクトがある情報を収集し、有効に使うべく分析していたのだ。
それはキンチョーの成果によるもので、中国はその実験場として大いに役立ち、
長期にしかも広範に情報が集めることが出来た。
キンチョーは『海神』が開発した微細蚊型ドローン・ロボットで、どこにでも
侵入できる偵察・間諜仕様のモノだった。
「共産党関係者や軍部首脳に関する、大量の個人情報が手元にあります。
これを使えばなんらかの形で、政治を動かすことが出来るかと思います。
あとは使い方ですね、考えてみます」
大町にしてみれば、日中間の有事に活用すべく収集した情報だが、皮肉にも中国の
体制維持の為に使え、との命令を受けたことになる。
「そうか、間に合うように急いでくれ。中国がそんなに長く持つとは思えん。
崩壊したら元も子もないのだからな」
そう指示を伝え、石葉は退室して行った。
「……」
指令を受けた大町たちは、苦笑するしかなかった。
大町にしてみれば、
汚職に手を染めていない幹部など、一人としていないのだから、
スケープゴートは掃いて捨てるほどいる。
ターゲットを絞り個人を追い落とすことは、容易にだった。
それを有効に使って、政治を動かせば良いのだ。
大町には中国内に使える、手駒があった。
周経国、中国のマスコミに多大な影響力を持つ人物だ。
ネットを通じて中国人として、周と繋がった大町は、様々な中国国内の情報を
提供してきた。大町の提供する情報の質は高く、政治の秘匿事項も多く含まれ、
周の活動を多面的に支えてきた。
殆ど日課になっている、周とのやり取りの中で、
「周さん、私には今の混乱を収める思案がある。君の力で、中国を崩壊の危機から
救ってほしい。どうだ、やってみないか?」
「この危機を収める方法があると言うのか? そんな思案があるなら、
是非とも聞かせて欲しいものだ」
中国の言論界で、周の存在は巨大なものになり、世論をリードするまでになっていた。
無論二人は会ったこともなく、有線で会話した事さえない。
ネット上だけの繋がり、それが二人の約束事だ。
裏では共産党とも良好な関係を保ち、表では民主化の立場で言論界をリードしてきた男、
それが周経国だった。
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