子爵令嬢は笑うより先に幸せを掴みます

縻七月雫💧

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「そうか、やはり襲撃されたか……」

 

セシルの負傷から一夜が明け、ラーレン邸の応接室で父ロベルトは低い声を漏らした。私やセシル、それに妹ベアトリスが揃っている。セシルの肩には包帯が巻かれており、まだ痛々しい。

 

「ええ、偶然にしては手際が良すぎました。馬車を止める位置も的確でしたし、相手は戦闘に慣れている様子でした」

 

私の報告に、父は苦々しげに腕を組む。ベアトリスは「ひどいわ」と顔を曇らせながら、セシルを気遣う視線を送っている。

 

「やっぱり、どこかから指示を受けていたのかしら。王都近郊の山道に山賊なんて、ここ数年は聞いたこともなかったのに」

 

ベアトリスの言葉に、私も小さく頷く。この地域は比較的治安が安定しており、盗賊が出没すること自体が珍しい。それだけに不自然だ。

 

「フィリップ卿が動いたか、あるいはフロラン公爵家の指示か。他にも王太子に取り入ろうとする連中は山ほどいるからな。だが、いずれにせよラーレン家を排除しようという思惑があるのかもしれん」

 

父は頭を振る。子爵家といえど、王都近郊の地を治める私たちは、それなりに影響力を持っている。何かの利害が絡めば、排除の対象として狙われることもあり得るのだ。

 

「そうなると、王太子の婚約破棄が一つの契機になったと考えられますね。私たちが王家との縁を絶ったことで、政略面で“不要”と見なしたのかもしれません」

 

言っていて胸が痛むが、現実味はある。政治の道具として利用価値がなくなったのなら、排除することに利があるのだろうか。

 

「私が都へ行って、もう少し探ってくるわ。噂話や裏事情に長けた人間に当たれば、何か手がかりがつかめるかもしれない」

 

セシルが立ち上がると、父は「傷は大丈夫か」と声をかける。彼は苦笑いして、肩をかばいながら首を横に振った。

 

「そうでもしないと、このまま手をこまねいていられない。ラーレン家を守るのも、俺が王宮に仕える騎士としての役目だから」

 

私も立ち上がり、「私も同行します」と言おうとしたが、父に止められた。

 

「お前はしばらく領地にいてくれ。都で再び襲われる可能性は十分にあるし、セシル一人でも十分だ」

 

歯がゆい思いが込み上げるが、確かに今は領地を守ることが最優先。私が動けばさらに相手の目を引くかもしれない。ベアトリスも不安そうな顔でセシルを見つめ、そっと祈るように手を組んでいる。

 

「……わかりました。セシル、気をつけて」

 

「もちろん。必ず何かわかったら連絡するから」

 

その言葉を最後に、セシルは都へ向かった。私たちはただ、無事を祈るしかなかった。
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