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第二十七話
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毬子は、しばらく日本に帰ってくるつもりはないらしい。出発ゲートの前で綺麗に製本されたアルバムを受け取った毬子は、珍しく感極まって泣いていた。
「アンさん……私……」
「大丈夫よ。アンタなら絶対上手くやれるわ!」
「はい! アンさん、本当に色々ありがとうございます!」
「いってらっしゃい!」
毬子は、幼い頃からの夢だったデザイナーになる夢を叶えるべく、単身イギリスへと留学する。イギリスはブライアンの母国でもあった。意気投合した二人は、文化祭以降も交流を続けていたようだ。
「何をあんなにファッション誌ばっか見てたのかと思ったら、毬子のやつ、デザイナーになりたかったんだな……」
「らしいね。俺も知らなかったけど」
春は、二週間前一緒に写真を撮った面々と一緒に、毬子を見送るため空港へ来ていた。
そこで千羽から手渡されたのは、その時撮った写真のアルバム。背景布の前でポーズを決めたものだけでなく、メイクや雑談中のオフショットもふんだんに盛り込まれており、売り物と言われても遜色ない仕上がりになっていた。
大人たちからの卒業祝い、そして出会った記念に。
ブライアンは洒落たセリフを付け加えてくれた。
「お前らって不思議だよな」
千羽は半分感心したような、半分呆れたような声色で呟いた。
「え? 何が?」
春は聞き返した。
「いつも一緒にいるくせに、それぞれのこと何にも知らないんだな」
「ハルのことは、毬子も俺もだいたい知ってるけどね」
「ちぇ、なんかおれだけ損した気分」
毬子を見送った後、奈津子とブライアンはそれぞれ仕事へ戻っていった。春と暁人は千羽の車で同じ現場に向かうことになっていたのだが、その千羽も仕事の電話が入って今は席を外している。
春と暁人は空港内のカフェで千羽を待っていた。
「なあ、暁人……」
名前を呼んでおきながら、春は暁人と目線を合わせようとしない。
「……こんなこと、暁人にしか言えないんだけど……でも……やっぱりいいや……」
春は、何度もカフェの入り口に目をやりながら途切れ途切れに言った。
「何? 俺にしか言えないなら、俺しかいない時に言っておきなよ」
「う……」
暁人は、春が話し始めるのを急かさずに待った。
「俺さ、千羽さんのことが……好きなんだ」
コーヒーカップを持つ暁人の手が、一瞬止まった。同時に、「何を今更」という言葉が喉元まで出掛かった。もちろん出さなかったが。
「師匠として、大人として、もちろん尊敬してるし大好きなんだけど……そうじゃなくて、そうじゃないんだよ……なんていうか……あはは、何言ってんだろ……おれって変だよな」
暁人はカップを置き、深々とため息をついた。
「変じゃないよ」
それを聞いて、春はまっすぐ暁人の顔を見た。
「そう、かな……?」
「っていうか弟子になるって話聞いた時から、もうとっくにその話はついてると思ってたのに。やっぱり、あの人絶対面白がってるな……」
「その話って?」
話の腰を折るかのごとく、ピュアな目を向ける春。暁人の口からはもうひとつため息が漏れた。
「ハルはさ、その気持ちを千羽さんに知られたら、千羽さんが離れてっちゃうんじゃないかって、怖いんでしょ? 俺もハルのこと大好きだから、千羽さんとハルが仲良くなればなるほど、あの人にハルのこと取られちゃうんじゃないかって思って、怖かった。最初は二人を近づけたくなかったよ。ああ、これって変かな?」
「うーん……」
「でも、ハルは俺から離れていったりしなかったでしょ?」
「そんなの……当たり前だろ! と、友達なんだから」
春は「あっ」と口元をおさえた。
「そう。何の心配もいらなかった。俺たちは友達だから。でも──」
暁人は一旦言葉を切り、カフェの入り口へ目を向けた。一瞬のことだったので、春は気づいていない。
「──千羽さんは友達、なのかな?」
春は何も答えられなかった。
「わからない……でも、友達? うーん……なああきと─」
「何でもかんでも俺に聞かないの。そんなの、本人に直接言いなよ。それが一番」
春がさらに暁人に泣き付こうとした時、上から降ってきた声に固まった。
「待たせたな。行くか」
暁人はさっさとコーヒーを飲み干して席を立った。春は席から少し身を乗り出した格好のまま、千羽を見上げる。
「……ん? なんか話盛り上がってたか? 腰折って悪かったな」
「え? ああ、いや! 腰は全然平気!」
「そ、そう、か……」
春は慌てて暁人を追いかけたが、カフェを出たところで急に振り返ったので、勢い余ってぶつかりそうになる。
「今電話があって、マネージャーが迎えに来てくれることになったから。じゃ」
「え? ええ? 電話なんていつ……」
「じゃ」
春や千羽が何かを言う前に、暁人は一人、風のように人混みの中へ消えて行った。
***
「……あいつ、どうしたんだ?」
「さ、さあ……?」
途端に居心地の悪さを感じた春は、駐車場までずっと黙っていた。
車に乗り込んでも、千羽はなかなかエンジンをかけない。流石に沈黙に耐えかねて、春は口を開いた。
「……行かないの?」
「その前に」
千羽は後部座席に手を伸ばし、細長い箱を取った。箱は五百ミリのペットボトルほどの大きさだった。
「ほら」
春は、自分に差し出されたその箱を受け取ろうとしたが、一度手を引っ込めた。そして千羽との間に壁を作るかのように、先ほど手渡されたアルバムを掲げる。
「卒業祝いなら、さっきもらったよ」
千羽は苦笑した。
「それ、バレンタインのお返しのつもりだったんだけどな」
「え?」
確かに、アルバムの表紙も中のページも白を基調としてデザインされている。春は、卒業式のあった日と写真を撮影した日を思い出した。
「あ……ホワイトデー」
「その調子だと、これも忘れてるんだろ。暁人の言う通りだったな」
春はなぜここで暁人の名前が出てくるのか疑問に思ったが、次の千羽の言葉で全てを理解した。
「ハル、誕生日おめでとう」
アルバムを膝の上に下ろし、春は箱を受け取った。
「……知ってたんだ」
「まあ、な」
どうせ、暁人に聞いたのだろう。春はそう思ったが、実際は少し違う。
千羽が春の誕生日を知ったのは、春のスマートフォンのロック解除番号を暁人に聞いた時──ではなく、最初に会った日に春の学生証を見た時だ。
箱は、見た目よりもずっしりと重かった。春は千羽に促され、包みを解いていく。
「これって……」
箱の中に入っていたのは、美容師が髪のカットに使うハサミだった。
思わずハサミを手に取ろうとした春は、はっとして手のひらをズボンで拭った。
「……なにやってんだ?」
「だ、だって、このはさみ、死ぬほど高いじゃんか!」
「手のひらズボンで拭いたところで意味ねえよ。それに、これから毎日ベタベタ触るんだからな。安心しろ、初心者用だからそんなに高くない」
そうは言われても。春はおずおずとハサミを持ち上げた。
美容師が普段使う道具は、以前千羽に見せてもらったカタログに載っていた。どれも目玉が飛び出すほど高く、特にハサミは春のひと月のバイト代が飛んでしまうほどのものだらけだった。
「……おれさ」春はハサミの重さを、手のひらだけでなく全身で感じ取った。「今までの人生でもらった誕生日プレゼントの中で、一番嬉しい……」
千羽はそんな春の頭に手を乗せる。
「十八年しか生きてないやつが人生語るのは早い。先は長いぞ」
「うん。だから今、こうして千羽さんの隣にいられることがもっと嬉しい! ……ありがと、千羽さん」
春の何の濁りもない笑顔を見た千羽は、ぞくぞくと全身の皮膚が粟立つのを感じた。
「こんなすごいプレゼントのお返しなんて思いつかないけど……おれ、頑張るよ。早く一人前になって、千羽さんと一緒にお仕事したいからさ」
「プレゼントなんだから、そもそもお返しなんていらないんだけどな……まあ、強いて言うなら」
千羽が急に言葉を切ったので、春は思わず千羽の顔を覗き込んだ。
「……千羽さん?」
「──陵至」
「え?」
春は一瞬、聞き間違いかと思った。だってそれは──
「陵至。俺の名前だよ。まさか知らなかったって言うんじゃないだろうなハル?」
「し、知ってたよ! 知ってたけど……」
どうして今更、そんなことを言うのだろう。とは思いつつ。春の脈拍は次第にはやくなっていった。
「名前で呼んでくれないか? 二人の時は」
「う、うん……」
春は顔に熱が満ちていく感覚を覚え、顔を背けた。今度は、千羽が春の顔を覗き込んだ。
「なあ、ハル?」
「わっ……わかったって……」
顔を直視できなかったが、春は千羽が今どういう顔をしているのか想像できた。
──絶対、面白がってる……。
そう思った時、先程の暁人の台詞が脳裏をよぎった。
『千羽さんは友達、なのかな?』
子供の戯言とあしらわれる気がして、怖かった。身の程知らずと軽蔑されるのも怖かった。だがよくよく思い返してみれば、今まで距離を置こうとしたのはいつだって春の方だった。
千羽は、春がどんなに身勝手な行動を取っても、決して春から離れていかなかった。
──大人にならなきゃ。おれも。
春はぎゅっと目を瞑った。
「誕生日プレゼントありがとうございます。一生大切にします。大好きです──陵至さん」
「アンさん……私……」
「大丈夫よ。アンタなら絶対上手くやれるわ!」
「はい! アンさん、本当に色々ありがとうございます!」
「いってらっしゃい!」
毬子は、幼い頃からの夢だったデザイナーになる夢を叶えるべく、単身イギリスへと留学する。イギリスはブライアンの母国でもあった。意気投合した二人は、文化祭以降も交流を続けていたようだ。
「何をあんなにファッション誌ばっか見てたのかと思ったら、毬子のやつ、デザイナーになりたかったんだな……」
「らしいね。俺も知らなかったけど」
春は、二週間前一緒に写真を撮った面々と一緒に、毬子を見送るため空港へ来ていた。
そこで千羽から手渡されたのは、その時撮った写真のアルバム。背景布の前でポーズを決めたものだけでなく、メイクや雑談中のオフショットもふんだんに盛り込まれており、売り物と言われても遜色ない仕上がりになっていた。
大人たちからの卒業祝い、そして出会った記念に。
ブライアンは洒落たセリフを付け加えてくれた。
「お前らって不思議だよな」
千羽は半分感心したような、半分呆れたような声色で呟いた。
「え? 何が?」
春は聞き返した。
「いつも一緒にいるくせに、それぞれのこと何にも知らないんだな」
「ハルのことは、毬子も俺もだいたい知ってるけどね」
「ちぇ、なんかおれだけ損した気分」
毬子を見送った後、奈津子とブライアンはそれぞれ仕事へ戻っていった。春と暁人は千羽の車で同じ現場に向かうことになっていたのだが、その千羽も仕事の電話が入って今は席を外している。
春と暁人は空港内のカフェで千羽を待っていた。
「なあ、暁人……」
名前を呼んでおきながら、春は暁人と目線を合わせようとしない。
「……こんなこと、暁人にしか言えないんだけど……でも……やっぱりいいや……」
春は、何度もカフェの入り口に目をやりながら途切れ途切れに言った。
「何? 俺にしか言えないなら、俺しかいない時に言っておきなよ」
「う……」
暁人は、春が話し始めるのを急かさずに待った。
「俺さ、千羽さんのことが……好きなんだ」
コーヒーカップを持つ暁人の手が、一瞬止まった。同時に、「何を今更」という言葉が喉元まで出掛かった。もちろん出さなかったが。
「師匠として、大人として、もちろん尊敬してるし大好きなんだけど……そうじゃなくて、そうじゃないんだよ……なんていうか……あはは、何言ってんだろ……おれって変だよな」
暁人はカップを置き、深々とため息をついた。
「変じゃないよ」
それを聞いて、春はまっすぐ暁人の顔を見た。
「そう、かな……?」
「っていうか弟子になるって話聞いた時から、もうとっくにその話はついてると思ってたのに。やっぱり、あの人絶対面白がってるな……」
「その話って?」
話の腰を折るかのごとく、ピュアな目を向ける春。暁人の口からはもうひとつため息が漏れた。
「ハルはさ、その気持ちを千羽さんに知られたら、千羽さんが離れてっちゃうんじゃないかって、怖いんでしょ? 俺もハルのこと大好きだから、千羽さんとハルが仲良くなればなるほど、あの人にハルのこと取られちゃうんじゃないかって思って、怖かった。最初は二人を近づけたくなかったよ。ああ、これって変かな?」
「うーん……」
「でも、ハルは俺から離れていったりしなかったでしょ?」
「そんなの……当たり前だろ! と、友達なんだから」
春は「あっ」と口元をおさえた。
「そう。何の心配もいらなかった。俺たちは友達だから。でも──」
暁人は一旦言葉を切り、カフェの入り口へ目を向けた。一瞬のことだったので、春は気づいていない。
「──千羽さんは友達、なのかな?」
春は何も答えられなかった。
「わからない……でも、友達? うーん……なああきと─」
「何でもかんでも俺に聞かないの。そんなの、本人に直接言いなよ。それが一番」
春がさらに暁人に泣き付こうとした時、上から降ってきた声に固まった。
「待たせたな。行くか」
暁人はさっさとコーヒーを飲み干して席を立った。春は席から少し身を乗り出した格好のまま、千羽を見上げる。
「……ん? なんか話盛り上がってたか? 腰折って悪かったな」
「え? ああ、いや! 腰は全然平気!」
「そ、そう、か……」
春は慌てて暁人を追いかけたが、カフェを出たところで急に振り返ったので、勢い余ってぶつかりそうになる。
「今電話があって、マネージャーが迎えに来てくれることになったから。じゃ」
「え? ええ? 電話なんていつ……」
「じゃ」
春や千羽が何かを言う前に、暁人は一人、風のように人混みの中へ消えて行った。
***
「……あいつ、どうしたんだ?」
「さ、さあ……?」
途端に居心地の悪さを感じた春は、駐車場までずっと黙っていた。
車に乗り込んでも、千羽はなかなかエンジンをかけない。流石に沈黙に耐えかねて、春は口を開いた。
「……行かないの?」
「その前に」
千羽は後部座席に手を伸ばし、細長い箱を取った。箱は五百ミリのペットボトルほどの大きさだった。
「ほら」
春は、自分に差し出されたその箱を受け取ろうとしたが、一度手を引っ込めた。そして千羽との間に壁を作るかのように、先ほど手渡されたアルバムを掲げる。
「卒業祝いなら、さっきもらったよ」
千羽は苦笑した。
「それ、バレンタインのお返しのつもりだったんだけどな」
「え?」
確かに、アルバムの表紙も中のページも白を基調としてデザインされている。春は、卒業式のあった日と写真を撮影した日を思い出した。
「あ……ホワイトデー」
「その調子だと、これも忘れてるんだろ。暁人の言う通りだったな」
春はなぜここで暁人の名前が出てくるのか疑問に思ったが、次の千羽の言葉で全てを理解した。
「ハル、誕生日おめでとう」
アルバムを膝の上に下ろし、春は箱を受け取った。
「……知ってたんだ」
「まあ、な」
どうせ、暁人に聞いたのだろう。春はそう思ったが、実際は少し違う。
千羽が春の誕生日を知ったのは、春のスマートフォンのロック解除番号を暁人に聞いた時──ではなく、最初に会った日に春の学生証を見た時だ。
箱は、見た目よりもずっしりと重かった。春は千羽に促され、包みを解いていく。
「これって……」
箱の中に入っていたのは、美容師が髪のカットに使うハサミだった。
思わずハサミを手に取ろうとした春は、はっとして手のひらをズボンで拭った。
「……なにやってんだ?」
「だ、だって、このはさみ、死ぬほど高いじゃんか!」
「手のひらズボンで拭いたところで意味ねえよ。それに、これから毎日ベタベタ触るんだからな。安心しろ、初心者用だからそんなに高くない」
そうは言われても。春はおずおずとハサミを持ち上げた。
美容師が普段使う道具は、以前千羽に見せてもらったカタログに載っていた。どれも目玉が飛び出すほど高く、特にハサミは春のひと月のバイト代が飛んでしまうほどのものだらけだった。
「……おれさ」春はハサミの重さを、手のひらだけでなく全身で感じ取った。「今までの人生でもらった誕生日プレゼントの中で、一番嬉しい……」
千羽はそんな春の頭に手を乗せる。
「十八年しか生きてないやつが人生語るのは早い。先は長いぞ」
「うん。だから今、こうして千羽さんの隣にいられることがもっと嬉しい! ……ありがと、千羽さん」
春の何の濁りもない笑顔を見た千羽は、ぞくぞくと全身の皮膚が粟立つのを感じた。
「こんなすごいプレゼントのお返しなんて思いつかないけど……おれ、頑張るよ。早く一人前になって、千羽さんと一緒にお仕事したいからさ」
「プレゼントなんだから、そもそもお返しなんていらないんだけどな……まあ、強いて言うなら」
千羽が急に言葉を切ったので、春は思わず千羽の顔を覗き込んだ。
「……千羽さん?」
「──陵至」
「え?」
春は一瞬、聞き間違いかと思った。だってそれは──
「陵至。俺の名前だよ。まさか知らなかったって言うんじゃないだろうなハル?」
「し、知ってたよ! 知ってたけど……」
どうして今更、そんなことを言うのだろう。とは思いつつ。春の脈拍は次第にはやくなっていった。
「名前で呼んでくれないか? 二人の時は」
「う、うん……」
春は顔に熱が満ちていく感覚を覚え、顔を背けた。今度は、千羽が春の顔を覗き込んだ。
「なあ、ハル?」
「わっ……わかったって……」
顔を直視できなかったが、春は千羽が今どういう顔をしているのか想像できた。
──絶対、面白がってる……。
そう思った時、先程の暁人の台詞が脳裏をよぎった。
『千羽さんは友達、なのかな?』
子供の戯言とあしらわれる気がして、怖かった。身の程知らずと軽蔑されるのも怖かった。だがよくよく思い返してみれば、今まで距離を置こうとしたのはいつだって春の方だった。
千羽は、春がどんなに身勝手な行動を取っても、決して春から離れていかなかった。
──大人にならなきゃ。おれも。
春はぎゅっと目を瞑った。
「誕生日プレゼントありがとうございます。一生大切にします。大好きです──陵至さん」
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