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転生
しおりを挟む「転生」なんてものを信じていた訳では無いのだが、実際に自分の身に起こってしまった事は紛れもない事実だ。
俺は、日本に生まれ27年間生きてきた。
子供の頃からアニメや漫画に触れ、異世界転生といった展開に憧れめいたものは感じていたが、まさか本当に実現するとは思わなかった。
今目に映っているのは、いつもより近い地面と驚くほどに小さな手、そして見たこともない風景。どうやらかなり小柄な体格らしい。
俺、何してたんだっけ?
思い出そうとしてみるがどうにもモヤがかかっているような感じだ。
思い出せないものに時間をかけても仕方がない。とりあえずは現状の確認だ。
すーはーすーはー
うん、空気が美味いな!
自分が住んでいたところよりもかなり空気が澄んでいる気がする。
まぁ、これだけの自然に囲まれていれば当然だな!
…いや、神様?
町とか村とかの近くに転生するならまだしも、大自然に1人はないぜ。野生動物なんかに遭遇でもしたら危ないだろう?
いや、もしやそれをなんとかできるくらいすごい能力でもあるのか?
そう思い立って少し身体を動かしてみるが…ふむ、前の体の方がまだ動けた気がするな。
他にも色々と試してみたがどうにも生存に役立つような特殊スキルは無さそうだな。いよいよもってこんな森の中で休む訳にもいかなくなってきた。取り敢えず人か、せめて話の分かるなにかが居てくれればいいのだが…
夜は危険だし、寒いと思う。
地図やコンパスも何も無い。歩くか!
じゃりじゃりっと舗装されていない道をこの小さな身体で進んでいく。
はぁはぁ…
やっぱり体力はないよな
10分位歩いたか少し疲れた。
大きな石に座って休んでいると、遠くから馬車の音が聞こえてきた。
「おーい!」
こちらの世界に来て初めて言葉を発した。
「無礼であるぞ!セレナ姫の乗った馬車と知っての狼藉か!」
手綱を持った兵士らしき人物に怒鳴られ、一瞬竦んだ。
「無礼と承知でお願いがあります。近くの町か村まで乗せてって下さい」
小さな頭を下げる。
「私は構いませんよ、乗せておやりなさい」
「しかし、姫…」
「相手は子供でしょ?大丈夫です。何かしようものならギルが今日は居ますから、早くお開けなさい。」
「かしこまりました」
中から出てきたのはすらっとした体躯に腰より長い金色より少し薄い髪色の美少女だった。年は齢15、6くらいだろうか。なかなかしっかりとした女の子だった。
「さぁ、早く入って」
「ありがとうございます!」
頭を下げて中に入る。
馬車の中は深い緑の椅子が向かい合っていて美少女の向かいには18歳位の立派な鎧を着た兵士が無言で座っている。
「ギル」
セレナ姫が声を掛けると軽く頭を下げられた。
「お名前は?」
「………」
言えないんじゃない。
思い出せないんだ、自分が日本に居て27年生きた男は思い出せるのに名前が思い出せない。
「すみません、頭打ったみたいで…」
「ごめんなさい、思い出せたらおしえてね」
こくんと頷く。
「この国の姫なんですか?」
「私、アルハイド=セレナ…この一帯の領主の娘ですわ。これからこのギル、ギルバート=ランドルフの家にお嫁に行くの…」
どうやら、お邪魔してしまったようです。
「何と言えば…」
「大丈夫ですわ、私の隣で良ければどうぞ」
「ありがとうございます」
小さな頭を少し下げて隣に座った。
夕刻前くらいにはギルの治める領地リバイル領に着くらしい。リバイルは、後ろを山で囲まれた谷の間にある街で山を越える冒険者の最後の街である為結構賑わっている。
「リバイルで美味しい物って何かありますか?」
あまり喋らないギルバートに声を掛けてみた。
「街で有名なのは木苺を使ったパイが有名らしい。俺は、甘い物は食べないが…」
普通に答えてくれた!
「ほっぺが落ちますわよ!」
キラキラした目をした姫が身を乗り出してまで話す。
「時間に余裕出来たら行ってみます!」
笑い返して椅子に座り直す。
どうやら検問を潜ったらしい。
「着きましたわ、リバイルの街に」
「うわぁああ!」
本当にファンタジー!街全体が白をベースに青い屋根で統一されてる。とても美しい街だ。
「泊まる所ないなら、一室用意させる」
まさかのギルバートからの一言にびっくりする。
「いいんですか?私名前も思い出せないんですが…」
「1つだけ言ってもいいか?」
「はい!」
ごくんと唾を呑む。
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