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第5話
「綺麗ね…さすが、王宮の離宮だけあって素晴らしいほどの庭園だわ」
ルビーは、カルと共に離宮の庭にあるテラス席でお茶会をしていた。
「そうですね、クライシス家の庭園も花に囲まれて美しいですが、王宮の離宮だけあって、比べ物にならないほど神秘的と言いますか…とても美しい庭園です。こう言ってはなんですが…お嬢様と、このように美しい庭園を見ることができ、とても幸せです。」
「ふふっ。カルってば大袈裟なんだから」
「大げさではありませんよ。このような美しい庭園で、お嬢様とご一緒できて、お茶会まで出来るなんて…私はとても幸福ですよ」
カルは柔らかく微笑みながらルビーを見た。
「そうは言っても、このお茶やお菓子はカルが手作りしたものなのよね。…本当は貴方に私がおもてなしをしたかったのに」
そう、お茶会に用意されているお茶やお菓子は全てカルが手作りしたものだった。初めは離宮にいるメイド達に用意をしてもらうはずだったのだが、「お嬢様、私がご用意いたします」とカルが真剣に言うものだから。
(確かに…カルの手作りは何でも美味しいのだけれども)
少しでも恩返しをしたくてお茶会を開催したのに、これでは私だけが役得のような、そんな気持ちになってしまう。
そんな私の微妙な変化にカルは気づいたのか、「お嬢様」と私を呼び優しく微笑んだ。
「私は、貴方のその気持ちだけで十分幸せですよ」
そんな風に言われたら何も反論は出来なくなってしまった。少し拗ねたように、「次のお茶会では…私が用意をするからね」と伝えると、カルは
「はい、では次の機会を楽しみにしておりますね」とにこやかに答えるのだった。
カルと楽しげに会話をしながら、緩やかにお茶会が終わろうとしたその時、
「ルビー?…こんな所にいたのかい。」
「王太子様…」
穏やかな空気を切り裂くように、突如フェリクスが現れた。フェリクスが現れたことによって、ルビーは少し緊張をするようにフェリクスを見て、カルは警戒をするようにフェリクスを見て顔を固くした。
しかし、2人の空気が変化した事に気づかないフェリクスは、「お茶会をするなら、今度は僕も呼んでおくれ。」と笑った。そして、さも当たり前の様にルビーの横に座り、彼女の手を握った。突然、手を握られた事でルビーは一瞬固まった。フェリクスは、そのままもう片方の手でカルが入れたお茶を一口飲み、「……へぇ。専属執事という事だけあるね。犬の入れるお茶にしては、上出来だ」と、褒めているようで、カルを完全に「専属執事」ではなく「犬」と言い、卑下していた。
「はぁ。貴方に褒められると、とても虫酸が走るような気持ちになり、最悪の気分になってしまいますね」
「あぁ、『最悪』と言えば貴方のお嬢様への以前の態度と言動のことでしたね」と口元は笑っているが、その話している内容や目にはフェリクスへの敵意しかなかった。
「へぇ…言ってくれるじゃないか」
それを聞いたフェリクスも冷たい瞳でカルを見据えていた。
先程まで平和だったお茶会が突如として殺気立った空気になってしまった。
(もう、お茶会はお開きね)
片付けをしましょうとカルに声をかけようとするとフェリクスが「ルビー、そう言えば君に会いたいという客人が来ていてね。ここに来ることを許可しておいたよ」とルビーに話しかけてきた。
「私に客人…ですか?」
戸惑いながらフェリクスに尋ねると、「あぁ君もよく知っている人物だよ。…噂をすれば来たかな」とフェリクスは頭を後ろに向けた。ルビーも後ろを振り向くと、こちらに向かってきた人物を見て目を見開いた。
「フェリクスー!もうっ先に行かないでよ」
鈴の音を転がす様な愛らしい声が聞こえ、ルビーたちの前で立ち止まると淑女らしくお辞儀をしていた。
(彼女は…)
「ルビー様、ご機嫌よう。学園での卒業式以来ですわね、お会いするのは」
可愛らしい顔でにこやかにこちらを微笑むのは、
「えぇ。そうですね、お久しぶりです……エリス・ローズ様」
かつて学園でルビーを悪女に仕立てあげた、フェリクスの従兄妹のエリスだった。
「私、とっても…とても貴方にお会いしたかったのですよ」
そう微笑み、ルビーを見つめる瞳には怪しげな光が灯っていた――。
ルビーは、カルと共に離宮の庭にあるテラス席でお茶会をしていた。
「そうですね、クライシス家の庭園も花に囲まれて美しいですが、王宮の離宮だけあって、比べ物にならないほど神秘的と言いますか…とても美しい庭園です。こう言ってはなんですが…お嬢様と、このように美しい庭園を見ることができ、とても幸せです。」
「ふふっ。カルってば大袈裟なんだから」
「大げさではありませんよ。このような美しい庭園で、お嬢様とご一緒できて、お茶会まで出来るなんて…私はとても幸福ですよ」
カルは柔らかく微笑みながらルビーを見た。
「そうは言っても、このお茶やお菓子はカルが手作りしたものなのよね。…本当は貴方に私がおもてなしをしたかったのに」
そう、お茶会に用意されているお茶やお菓子は全てカルが手作りしたものだった。初めは離宮にいるメイド達に用意をしてもらうはずだったのだが、「お嬢様、私がご用意いたします」とカルが真剣に言うものだから。
(確かに…カルの手作りは何でも美味しいのだけれども)
少しでも恩返しをしたくてお茶会を開催したのに、これでは私だけが役得のような、そんな気持ちになってしまう。
そんな私の微妙な変化にカルは気づいたのか、「お嬢様」と私を呼び優しく微笑んだ。
「私は、貴方のその気持ちだけで十分幸せですよ」
そんな風に言われたら何も反論は出来なくなってしまった。少し拗ねたように、「次のお茶会では…私が用意をするからね」と伝えると、カルは
「はい、では次の機会を楽しみにしておりますね」とにこやかに答えるのだった。
カルと楽しげに会話をしながら、緩やかにお茶会が終わろうとしたその時、
「ルビー?…こんな所にいたのかい。」
「王太子様…」
穏やかな空気を切り裂くように、突如フェリクスが現れた。フェリクスが現れたことによって、ルビーは少し緊張をするようにフェリクスを見て、カルは警戒をするようにフェリクスを見て顔を固くした。
しかし、2人の空気が変化した事に気づかないフェリクスは、「お茶会をするなら、今度は僕も呼んでおくれ。」と笑った。そして、さも当たり前の様にルビーの横に座り、彼女の手を握った。突然、手を握られた事でルビーは一瞬固まった。フェリクスは、そのままもう片方の手でカルが入れたお茶を一口飲み、「……へぇ。専属執事という事だけあるね。犬の入れるお茶にしては、上出来だ」と、褒めているようで、カルを完全に「専属執事」ではなく「犬」と言い、卑下していた。
「はぁ。貴方に褒められると、とても虫酸が走るような気持ちになり、最悪の気分になってしまいますね」
「あぁ、『最悪』と言えば貴方のお嬢様への以前の態度と言動のことでしたね」と口元は笑っているが、その話している内容や目にはフェリクスへの敵意しかなかった。
「へぇ…言ってくれるじゃないか」
それを聞いたフェリクスも冷たい瞳でカルを見据えていた。
先程まで平和だったお茶会が突如として殺気立った空気になってしまった。
(もう、お茶会はお開きね)
片付けをしましょうとカルに声をかけようとするとフェリクスが「ルビー、そう言えば君に会いたいという客人が来ていてね。ここに来ることを許可しておいたよ」とルビーに話しかけてきた。
「私に客人…ですか?」
戸惑いながらフェリクスに尋ねると、「あぁ君もよく知っている人物だよ。…噂をすれば来たかな」とフェリクスは頭を後ろに向けた。ルビーも後ろを振り向くと、こちらに向かってきた人物を見て目を見開いた。
「フェリクスー!もうっ先に行かないでよ」
鈴の音を転がす様な愛らしい声が聞こえ、ルビーたちの前で立ち止まると淑女らしくお辞儀をしていた。
(彼女は…)
「ルビー様、ご機嫌よう。学園での卒業式以来ですわね、お会いするのは」
可愛らしい顔でにこやかにこちらを微笑むのは、
「えぇ。そうですね、お久しぶりです……エリス・ローズ様」
かつて学園でルビーを悪女に仕立てあげた、フェリクスの従兄妹のエリスだった。
「私、とっても…とても貴方にお会いしたかったのですよ」
そう微笑み、ルビーを見つめる瞳には怪しげな光が灯っていた――。
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