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第1話
しおりを挟むある日の午後、カントル伯爵家の長女であるジェニッタ・カントルは、婚約者のバレス・クリミトに家に呼ばれた。部屋の扉を開けると、そこには一人の令嬢がいる。ブリード侯爵家の次女、カルロッテ・ブリードだ。
(私が嫉妬して、修羅場になると思ったのでしょうか)
この時、ジェニッタは決心した。
(カントル家の社交性、見せつけてあげましょう)
ジェニッタとバレスが婚約したのは一年前である。学園に通わせて、為人を知ってから婚約をする、というのが主流になったからだ。八年ほど前、皇太子の婚約者が殺人未遂事件をおこしてから、爵位と同時に人柄が重要視される様になった。小さい頃から人より生物の方が好きで、人との関わりが苦手なバレスは当時、学園に入学する前で、この事件を理由にのらりくらりと婚約を避け続けてきた。しかし、学園を卒業して一年が経ったとき、両親がこう言ったのだ。
「そろそろ婚約をしないと、研究室をすべて潰す」
バレスは渋々、親が勧める令嬢と婚約した。それが、ジェニッタだった。
一年前に婚約したばかりで、カントル家側から月に一回ほどお茶会に誘っても何かと理由をつけて断られるので、三回しかしていない。ジェニッタが話しかけても反応がうすく、早々に帰ってしまうので仲良くなることが難しかった。
そんな時、初めてクリミト家から誘いがきた。ジェニッタはこれを機に、関係が改善するかもしれない、仲良くなれるかもしれない、と期待した。しかし、その期待も簡単に打ち砕かれた。流石のジェニッタも怒りが沸いて、決意したのである。カントル家の社交性を見せてやる、と。
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