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緋色の一閃
九
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「そんな安請け合いをしたわけか」
その晩のこと。
昼間の報告をしていると平坦な声で重吾は言った。
その言い方にアキラは思うところがあったが勝手に話を受けたことはたしかだ。反発する気持ちを落ち着けて何とか言う。
「鎌鼬事件を調査しているんですよね?ミキノさんの件から調査してください。学校の周りにまた犯人が現れるかもしれませんし、見回りをしましょう」
「それは警察の仕事だろう」
はあ、と重吾は息を吐く。
アキラは自分に相談を持ちかけた唯の顔を思い出す。頼ってもらったのだ。どこから手をつければいいかは分からないがやれるだけのことをしたい。
「ミキノさんの助けになりたいんです。まだ高校生なんですよ」
「全ての事件がまだ同一犯とは限らないだろう。正式な依頼でないならその調査ばかりに時間を割いてはいられない」
「……可哀想だとは思わないんですか?」
「金はあるのか」
重吾はスッパリと言った。
「え?」
「話を聞くに学生だろ。依頼料は出せるのかって聞いているんだ」
アキラは開いた口が塞がらない。たしかに仕事をするとき報酬をもらうのは当たり前だが。
「……お金って、どのくらいですか」
そんなことも考えずに引き受けたのかという顔をする。
「話を聞く限り、最低でも百万」
「百……」
「必要経費別でな」
当たり前だが、普通の学生がそんなにお金を持っているとは思えない。
「優先順位は俺が決める。こっちも遊びじゃない。犯罪の調査を仕事として請け負うからにはそれなりの対価が必要だ。いくら何でも屋っていったって動けるのは基本的に俺だけなんだ。限度がある」
重吾はアキラを見据えて低い声で言う。
守銭奴が。
アキラは心の中で言った。
呆れて、それ以上に腹の中が煮えくりかえる。無愛想だが冷たい人だとは思っていなかった。何だか裏切られたかのような気分だった。
「もういいです」
立ち上がって重吾を睨みつけて言う。
「バイト代はいらないので俺が自分で調べます」
そう言って勢いよく部屋を出る。呼び止める声はなかった。
ぶみゃあと足元で鳴き声がした。重吾が助けた猫、シラタマだ。何だか猫なのに呆れた目をしているように思えた。開いている襖からアキラと入れ替わりのように部屋に入っていく。
廊下を足早に歩いて自室に入ると壁に寄りかかってズルズルと崩れ落ちた。
自分は何を期待していたのか。
思わず頭に血が上ってしまった。
重吾相手に啖呵をきってしまったがこれからどう動いていくのか。
向こうみずというのか計画性がない自分の性格が嫌になる。
「……じいちゃんにも注意されていたのにな」
お前は目の前のことしか見えてない。
そんな言葉が脳内再生される。
それでも口先ばかりになるわけにはいかない。
よし、と立ち上がる。夜も遅いので布団を敷いて寝る準備をする。
翌朝の早い時間にアラームをかけた。
夜に悶々と考えていても仕方ない、明日の朝一番から調査をしよう。
そのまま眠りにつく。
その晩のこと。
昼間の報告をしていると平坦な声で重吾は言った。
その言い方にアキラは思うところがあったが勝手に話を受けたことはたしかだ。反発する気持ちを落ち着けて何とか言う。
「鎌鼬事件を調査しているんですよね?ミキノさんの件から調査してください。学校の周りにまた犯人が現れるかもしれませんし、見回りをしましょう」
「それは警察の仕事だろう」
はあ、と重吾は息を吐く。
アキラは自分に相談を持ちかけた唯の顔を思い出す。頼ってもらったのだ。どこから手をつければいいかは分からないがやれるだけのことをしたい。
「ミキノさんの助けになりたいんです。まだ高校生なんですよ」
「全ての事件がまだ同一犯とは限らないだろう。正式な依頼でないならその調査ばかりに時間を割いてはいられない」
「……可哀想だとは思わないんですか?」
「金はあるのか」
重吾はスッパリと言った。
「え?」
「話を聞くに学生だろ。依頼料は出せるのかって聞いているんだ」
アキラは開いた口が塞がらない。たしかに仕事をするとき報酬をもらうのは当たり前だが。
「……お金って、どのくらいですか」
そんなことも考えずに引き受けたのかという顔をする。
「話を聞く限り、最低でも百万」
「百……」
「必要経費別でな」
当たり前だが、普通の学生がそんなにお金を持っているとは思えない。
「優先順位は俺が決める。こっちも遊びじゃない。犯罪の調査を仕事として請け負うからにはそれなりの対価が必要だ。いくら何でも屋っていったって動けるのは基本的に俺だけなんだ。限度がある」
重吾はアキラを見据えて低い声で言う。
守銭奴が。
アキラは心の中で言った。
呆れて、それ以上に腹の中が煮えくりかえる。無愛想だが冷たい人だとは思っていなかった。何だか裏切られたかのような気分だった。
「もういいです」
立ち上がって重吾を睨みつけて言う。
「バイト代はいらないので俺が自分で調べます」
そう言って勢いよく部屋を出る。呼び止める声はなかった。
ぶみゃあと足元で鳴き声がした。重吾が助けた猫、シラタマだ。何だか猫なのに呆れた目をしているように思えた。開いている襖からアキラと入れ替わりのように部屋に入っていく。
廊下を足早に歩いて自室に入ると壁に寄りかかってズルズルと崩れ落ちた。
自分は何を期待していたのか。
思わず頭に血が上ってしまった。
重吾相手に啖呵をきってしまったがこれからどう動いていくのか。
向こうみずというのか計画性がない自分の性格が嫌になる。
「……じいちゃんにも注意されていたのにな」
お前は目の前のことしか見えてない。
そんな言葉が脳内再生される。
それでも口先ばかりになるわけにはいかない。
よし、と立ち上がる。夜も遅いので布団を敷いて寝る準備をする。
翌朝の早い時間にアラームをかけた。
夜に悶々と考えていても仕方ない、明日の朝一番から調査をしよう。
そのまま眠りにつく。
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