白い結婚をしたら相手が毎晩愛を囁いてくるけど、魔法契約の破棄は御遠慮いたします。

たまとら

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プロローグ

初夜の睡魔

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全身を包み込むようなソファに持たれて、レイトは睡魔と戦っていた。
そりゃもう今日は朝から大変だったのだ。
明けの明星がぴかりと光るよりも早くにベッドから引き摺りだされ、洗われ揉まれ締め付けられた。
その後塗られ飾られ連れ回された。

サインと宣誓式だけがホッとできる時間だったなんて酷くない?

その後森の木立ちのように乱立する人の群れに、アルカイックスマイルを向けてただただ頷き、レイトの御役目はなんとか終了したのだ。
その後逆回転で飾りを外され洗われてから、この"夫婦の寝室"に押し込められた。

そんな訳でもうヘロヘロなレイトはソファにへたり込むともう立ち上がる気力もなくて、サイドテーブルのウェルカムワインを一気にあおって今に至った。


今日はレイトの結婚式だった。
きゅん♡とかうふん♡とかの甘い感慨は微塵も湧かない慌ただしい戦場だった。
見た婿様はスーパーイケメンで、なんで自分にこの話が来たのかやっぱりさっぱりわからなかった。

その婿様は他言無用で内密な話があるとかで呼び出しを受けて、今はどっか行っちゃってる。
この結婚はややこしい契約。それも魔法契約でサインされたものだから、レイトは確認事項の為に必死で睡魔と戦っていた。

ほら、婿様とは初顔合わせだし。
仔細は侍従のセルジオさんと詰めていたけど、確認事項はやっぱりあるじゃん。

馬鹿だ僕。
ワイン飲むといつも眠くなるのに。
しかもこのソファ。
人をダメにするタイプだ。
天使の様な柔らかフィット感で、底無し沼のように溶けていく感じ。
頭はぐらぐらして、睡魔との戦いは敗北宣言間近だった。



ドアがずどーんと開いた。

「待たせたなぁ、嫁ぇ‼︎」

仁王立ちの男が吠えた。

鼻歌混じりのその男は、結婚式で隣で見たイケメンだった。
ぷーんと酒の匂いが吹き込んでくる。
おいおい酔っ払いかよぉ。
千鳥足でやってくる婿様を残念な気持ちで見た。

婿様はよし‼︎と気合い一発
「じゃあ、はじめるぞぉ‼︎」とレイトをひょいと担ぎ上げた。
それもお姫様抱っこじゃ無く、お米様抱っこで。
そのままベッドにぽんと放られた。

雑!
しかも何っ?

驚きであんぐり口を開けたレイトの目前で、婿様は自分のシャツを脱ぎ出した。
外れないボタンを力任せに引きちぎってシャツを脱ぐ。
調子のズレた鼻歌の中で、発達した胸筋が開帳された。
いや美しい生筋肉!
その筋肉が傾くと、よっとズボンが引き抜かれる。

見惚れてたらもふんと婿様がのしかかってきた。
重みでグエっとなって、寝衣の前をぎゅっと掴まれてばっとはだけられた時
ようやくレイトは我に帰った。

なにしてくれとんねん、この酔っ払いがぁ‼︎

レイトの膝蹴りが炸裂する。
言わずとしれた鳩尾にクリティカルヒットした。

ごぶっと吐き出される息とともに、レイトの横で婿様がだんご虫のようにまるまる。

「なにすんだよっ!」
レイトが叫ぶとだんご虫の肩甲骨が動く。
それが解けて人になった途端、叫びが返された。

「セックスだよっ‼︎」
確かに。
考えてみたら初夜だった。
夫婦の寝室は花で溢れ、灯りは薄っすら間接照明だ。
世間一般、やる事は一つの初夜だった。

いやいやいや、おかしいだろっ!

レイトはガバリと起き上がると、全身全霊で契約事項を捲し立てた。
押し倒された動揺でむっちゃ早口のまま、契約事項を滔々と詠った。

だってこの結婚は『白い』のだ。


息継ぎせずに捲し立て、喉が渇いて飲みかけのワインをぐいっとあおった時、ようやく婿様の動向に気が回った。

酔っ払いの婿様は、レイトの呪文を子守唄代わりにとっくに夢の国へと旅立った後だった。
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