王宮侍従テミスの、愛と欲望のサスペンスな日常

たまとら

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1 ランチタイムの騒乱

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本日のスープがトレーに乗せられた。
横にずれて、メインの肉の前に立つ。
隣の人のトレーにスープが乗って、テミスのトレーに肉の皿が乗った。

従業員用の食堂は、割と広くて賑やかだ。
ちゃんと食べれる事に、今日もテミスは感謝した。

使用人は多い。
きっと、表舞台のお偉いさんが考えもつかない程に多い。
だから食事は、3つに分けての交代制だ。

今日は1組に配備された。
おかげでよそう人がケチケチしないで大盛りだ。
これが3組となったら、盛りが少なくなる。

後先考えずによそって。あ、足りないと思ったら、スープなんか水を足される。
水増しされた薄っすいスープは、なんか侘しさと物悲しさを誘うから、テミスは1組が好きだった。



「テミス‼︎ テミスってコはいる⁉︎」

向こうの入り口で誰かが叫んでる。

隣のパリスが肘でこずいた。
え?
僕⁉︎
でも僕は今日はやらかして無いよ。
遅れても、割っても、潰してもいない。

あんな必死で呼ぶなんて悪い予感しかしないから、同名って事で。

僕はお昼を頂くのに、全身全霊を使ってるんだもん。


ざわざわと向こうで声が上がる。
テミスという単語が聞こえる。

やだなぁ。
早く食べて仕事にもどろ。
そう思ってパンを急いで頬張り、スープをぐいっと流し込んだ時。

「テミス‼︎  アンタがテミスねっ!」

知らない金色頭が目の前に仁王立ちになっていた。
しまった‼︎ 逃げそびれた!

「呼んでたのに、なんで返事しないのよっ!
聞こえてたんでしょうっ‼︎」

いきなり上からの態度に、ムッとして知らんぷりをする。

だって、知らない人だしー
仕事で被った事も無いしー

あ、制服のラインと刺繍はお客様の案内係だ。
案内係は実家が裕福で、見栄えの良いコが多いって言う。
なるほど"金色頭で上からくる奴"は美人だ。
とりあえずペーペーのテミスとはなんの接点も無い。

言っとくがこっちは休憩中。
絶賛食事中なのね。
しかも、おまえ仕事中だろがっ⁉︎

「ねぇ、もう、アンタしかいないのよ!
ちょっと顔貸してよっ!」

下から来たけど、まだ上からの豪速球だ。
テミスは興味無さそうに、つんと横を向いた。
呼び出しに応じなかったからか、"金色頭で仕事サボってる高飛車な奴"はイラついている。

呼び出しが出来ないと踏んだそいつは叫んだ。

「ねぇ。アンタがバージンって本当なのっ⁉︎」


ぶひっ。


口から鼻から、スープと一緒にふやけたパンが噴射した。
本日はベーコンとコーンのスープなり。
鼻からコーンが発砲される。

たちまち辺りがシーンとして、"金色頭の場所も考えずに叫ぶ奴"の声がわんわん響く。
天井が丸いのも、エコーを掛るように音を反射する。

「バージンって本当なの⁉︎」

「バージンって」

「バージン…」

~~~やめてくれ~っ‼︎


「ちょっとぉ、返事しなさいよっ!」


広い食堂は鎮まり帰って、"金色頭のバージンを連呼する奴"の声だけが響く。

恐る恐る目を上げると、人は視線を逸らしていた。
でも耳がダンボ化して、聞き漏らさないように息を詰めている。
いきなり始まったサスペンスの予感に、口元がによによと笑いに緩んでる。

さあ、どう返事する。

さあ⁉︎

さあ⁉︎

さあ⁉︎


そんな無言の圧が、食堂に踊っていた。
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