王宮侍従テミスの、愛と欲望のサスペンスな日常

たまとら

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2 バージンの悲哀

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そうだよっ!
僕はバージンだ‼︎
それがどうしたっ‼︎

連呼された事で真っ赤になる。

恥ずかしい!
泣きそう‼︎
僕だって未だバージンでいるなんて思ってもみなかったよっ!

テミスのうるうるしてきた目に、"金色頭のバージンを連呼する奴"が怯んだ。


「まちな。」

鉄火な声が隣のテーブルから上がった。

「その子を嬲ったら、ただじゃあおかないよっ。」

お掃除のハウスさん!
ああ、今日は同じ1組だったんだぁ。
良かったぁ。

「んだよぉ!その子が悪い訳じゃ無いだろうがぁ」

「傷を抉るなんて、人の道に外れてるだろぉ」

『テメェ』という単語が出てきそうな迫力のある声が沸き起こる。
それは大先輩達だ。(人生でも職場でも)

"傷を抉る"って言われて、乾いた笑いが浮かんだ。
僕の武勇伝はもう知れ渡っている。

知ってるよ。
周りの皆んなが息を詰めて声を殺して、全身耳でうかがっているんだ。
だって職場でサスペンスは超娯楽なんだもの。



テミスは田舎者だ。
この春応募した侍従の職に合格して、王宮に来た。

右も左もわからない、だっさい田舎者だったと思う。
声をかけてきた騎士にぽおっと♡なって、そのまま付き合いだした。

恋の熱に浮かされて、でいろいろ吐いた覚えはある。
だって相手は人生の先輩達。
聞き出し方が上手かった。
飴と鞭と頷きで、彼とのデートも全部吐いた。

初めての仕事。
初めての寮暮らし。
初めての恋。
浮かれたテミスは、ふんふんと聞かれるままに、部屋のワードローブの中のパンツの枚数まで余す所なく事情聴取されていた。

面倒見のいい、しかもドラマチックなロマンスとサスペンスの大好きな先輩達は、あれこれとアドバイスをしてくれた。

「結婚したいって言われたんだ♡
もう、心も身体も捧げちゃう♡」

そう浮かれていたテミスは、『でもアイツ評判悪いよ』って声も、やっかみだと思ってた。

で、仕事の休憩の時に彼に建物の隙間に連れ込まれて金を無心された上に、パンツを下げられそうになって。
怖さと戸惑いと恥じらいで、
「こんな所じゃ嫌っ。」
と、"初めてのシチュ"を語ったら。

やる気満々だった彼は白けた目でテミスを見た。
「じゃ、いいよ。ったく。だからバージンは面倒くさいんだよなぁ」
と、のたまった。
そして
「はぁ、金、こんだけしかないのかよ。
もうおまえとはバイバイだな。」
と言いながら仕事場に帰っちまったのだ‼︎


残されたのは服を乱されて財布の空っぽなテミス…
ぽっかーん。として。
脳味噌にじわじわと沁みてくると、
ちくしょーっ! と、なった。

腹立つ‼︎
腹立つ‼︎

乱暴に引っ張られた制服のボタンは千切れ、建物に押し付けられたほっぺは擦過傷になっている。

腹立つ‼︎

百年の恋も一瞬で覚めるってヤツ⁉︎
浮かれてたテミスは現実に帰った。

……と、いうわけで。
大先輩達の前でテミスは盛大に泣き崩れ、慰められた。


そんなわけで、『彼にあげちゃう♡』と言っていたバージンは行方不明で。きっとずっと行方不明だろうということを仲間達は知っていた。


ちなみその彼は
「田舎者だからいろいろ仕込んで楽しもうと思ってたんだけど。金もねぇしよお。
なんか面倒くせぇんだよねー」
というクズ発言を先輩が聞いてしまって、食堂は炎上した。

大先輩の怒りを買ったそのクズ野郎は。
食事も、寮の掃除も、給料の払い出しさえスムーズにいかなくなり尾羽打ち枯らしてどこかへ飛ばされて行った。


覚えておこうね。

国を動かしているのは、頂点の一握りじゃないんだよ。
はっはっはっは。
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