人生に2万回ぐらいしか夜がないなら、残りの夜は貴方といたい

たまとら

文字の大きさ
3 / 5
子供は宝と言うけどね

2 やってきた衝撃

しおりを挟む
「何いっ⁉︎子供ぉ!」

オディロンは報告書を握り締めた。
驚いて立ち上がったせいで、テーブルのカップがガシャンと倒れて紅茶がゆるゆると広がっていく。
慌てたメイドがその侵食を止めて、従者がこちらへと場所を移動させた。

報告していた文官は、緊張が破られたのか極めて人間的に眉を八の字に落とす。

「子供。孫じゃ無くて、子供なのか?」

力無く尋ねたオディロンの声に、文官はずんずんと猫背になる。
サクサクと物事を段取る文官が、非常に言いにくそうに目を逸らした。

「そのぉ、それも成人前のお子様で…」


「はあぁん。」

あ、驚きすぎて変な声になったぁ。

「父上。良かったでは無いですか。
御自分の刀を一度も振るう事も無く(童貞のまんまで)生涯を終えたと考えるよりも。愛し愛されたと思えた方が」

割って入ったのは国王だ。
そしてオディロンの息子だ。

「それは良かったと思っている。だがな…」

オディロンは我が子を見た。
よわい40を前にして、苦味走ったナイスミドルだ。
そうだよな。これが順当だ。
だってアルフォンス兄上は、70の大台の声を聞いている。
それが8歳の子供って、どぉなのぉ。
絶倫って奴か。私のなんかこの数年ピクリともしないぞぉ。

成人は15歳。
平民ならだいたいすぐに結婚する。
そしてねずみ算式に子孫はにょきにょき増える。
そんな社会で人生は50年ほどだ。
手厚い医療と栄養と薬で守られている王族だからこそ、それを超えて生きている。
70ったらもう、レジェンド並みだ。

兄上は男女問わずに迫られていた。(顔がいいから)
薬まで盛られた事があるらしいが、額に青筋を立てただけで兄上の兄上は寝てたらしい。
「勃起不全かしらねぇ」と母上が話してるのを聞いた事がある。
そんな兄上に子供⁉︎


「町の教会に婚姻証明書がございまして。
出生証明書もございました。」

文官は握り潰された報告書を指差した。

「あ、相手は?奥方は?」

「その…2年前に亡くなられておりまして…」

「じゃ、子供の面倒をアルフォンス兄上がっ‼︎」

驚愕で叫ぶオディロンの血圧を気にしつつ、それでも文官は告げる。
だって文官は既婚者で、家には二人の子供がいる。
突然降って湧いた王位継承者の出現に、口封じが有ってはならない。
8歳で父親を養う為に働いていた健気な子供が、不利益を受けてはならないのだ!

「いえ、面倒を見ていたのはお子様の方でございます。」

「だよねぇ‼︎」

よわい63歳のオディロンは自分の声を聞いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

愛などもう求めない

一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...