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田舎の領地暮らし
2 やむに止まれないデイド
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腐ってもじいちゃんの子である今代は、弱そうな見た目に反してそっちは強かった。
正妻と長子がいるにも関わらず、割とあちこちに子種を蒔いた。
それが芽吹いたのはリラクで。
相手が出産で儚くなったので、残された赤ん坊を引き取った正妻はあら!と、思った。
子育ては半端無いエネルギーを使う。
24時間ノンストップのブラックな仕事だ。
「この子をお願いしたらよろしくてよ♡」
そうすりゃ一気に悩みの方が付くじゃなーい!
と、囁くと。
ノミの心臓の今代は、成る程!と答えた。
そんな訳で『育児で少しでもおとなしくなってくれ!』と願って今代、つまり父上は。
赤ん坊のリラクを、子育て経験0なじいちゃんトコに送ったのだ。
とりあえず先触れも出していたが。
なんのことか理解不能な一同は棒の様に立っていた。
はい。と渡されたその物体は、片手の平にぽふんと乗った。
ぐなぁん。
頭がぶら下がる。
その背筋どころか背骨の無いような動きに、ひい!と固まった。
使者は「あ、首は未だ座ってませんので」と言ったが。
座った首ってなんだ⁉︎
とりあえず鶏の首の骨が折れた様なぐらぁんに、指でちょいと固定する。
それはふわぁぁっと、あくびした。
なんと。
なんと!
歯がないっ!
これではどうやって栄養を摂るのだ!
栄養補給は武人の嗜みだ‼︎
より良い動きをする為に必要なものだ。
歯のないものなぞ、どうやって肉を喰うというのだ‼︎
愕然としているテオロパ(じいちゃん)の隙を突いて。
使者は馬車に飛び乗った。
「隣の村でお疲れ休みをしなさい。領主の館に入ったら子供を置いて逃げられなくなるわ。」
と、正妻から言い含められていた。
正妻は中々に軍事的な頭脳をしている。
お主、やりおるな‼︎
と、テオロパの周りにいた者は思った。
テオロパの顔はまさしく世紀末覇王。
凝視する眉間の縦皺は、心臓麻痺を起こさせるほどに深い。
テオロパは、ただ困惑していた。
うっかり力を入れると潰しそうだ。
どう動いていいのか、わからない。
あくびしてもにゅもにゅと動いたリラクは、うっすらと目を開けた。
わかっているのかいないのか、テオロパとの視線ががっぷり四つに組む。
それは翡翠のような目だった。
未だ何も無い透き通った目に、自分だけが映っている。
手のひらに乗る体に、指で摘めそうな頭。
小指の爪より小さい目玉……。でも生きている。
テオロパの中にくん!と切ないものが芽吹いた。
いつのまにかそろりそろりと周りの兵…いや従者が集まって来ている。
にゃう と、それが鳴いた。
「にゃ…わ、にゃぶぅ…」
それはのちに喃語という赤ん坊の言葉だと知った。
なんと俺に話しかけていたのだ!
それはにゃうにゃうと小動物のように鳴き。
凝視するテオロパに笑った。
その頃、見慣れぬ小動物に惹かれて、テオロパの周りはごっつい男達が山となっていた。
その目がにゃうにゃうと歌う赤ん坊を凝視していた時に。
赤ん坊は、ばぶっと笑った。
子供は勿論、人にも魔獣にも怖がられていたおっさん達に笑顔が!
ずっきゅーーん‼︎
矢で射抜かれたような痛みが心を打ち抜いた。
「か、可愛いぃぃぃっ♡」
声にならない叫びがその場の空気を打破し。
上空に熱気が駆け上って雲をびゅうと揺すった。
ぷ。
掌から小さな破裂音がした。
濃いヨーグルトの様な匂いが、ぷ~~んと立ち昇る。
あー。と従者達はテオロパに告げた。
「うんちですぜ。おしめを替ねぇと。」
「おしめを替える。」
テオロパは復唱した。
おしめ?
身動き出来ない任務の為に、小便大便を垂れ流しても見つからないように、兵は不浄石をおしめに装着する。
だがそのおしめはこの生き物にはデカ過ぎるのではないだろうか。
全身すっぽり入りそうだ…
「あ~~っ‼︎」
頭をガリガリかきながらデイドが集団から出て来た。
「違うから。テオロパ様、今考えてるのとは違うから。
あと新生児のお肌には、不浄石はまだ無理だから」
デイドはこいつら使えない!と心底思った。
隣の国でナニーとして使用人に潜り込んでた。
多分、俺の方がマシだ。
可愛いからと離そうとしないテオロパから赤ん坊を引き剥がし。
デイドは自分が育てる事を決意した。
正妻と長子がいるにも関わらず、割とあちこちに子種を蒔いた。
それが芽吹いたのはリラクで。
相手が出産で儚くなったので、残された赤ん坊を引き取った正妻はあら!と、思った。
子育ては半端無いエネルギーを使う。
24時間ノンストップのブラックな仕事だ。
「この子をお願いしたらよろしくてよ♡」
そうすりゃ一気に悩みの方が付くじゃなーい!
と、囁くと。
ノミの心臓の今代は、成る程!と答えた。
そんな訳で『育児で少しでもおとなしくなってくれ!』と願って今代、つまり父上は。
赤ん坊のリラクを、子育て経験0なじいちゃんトコに送ったのだ。
とりあえず先触れも出していたが。
なんのことか理解不能な一同は棒の様に立っていた。
はい。と渡されたその物体は、片手の平にぽふんと乗った。
ぐなぁん。
頭がぶら下がる。
その背筋どころか背骨の無いような動きに、ひい!と固まった。
使者は「あ、首は未だ座ってませんので」と言ったが。
座った首ってなんだ⁉︎
とりあえず鶏の首の骨が折れた様なぐらぁんに、指でちょいと固定する。
それはふわぁぁっと、あくびした。
なんと。
なんと!
歯がないっ!
これではどうやって栄養を摂るのだ!
栄養補給は武人の嗜みだ‼︎
より良い動きをする為に必要なものだ。
歯のないものなぞ、どうやって肉を喰うというのだ‼︎
愕然としているテオロパ(じいちゃん)の隙を突いて。
使者は馬車に飛び乗った。
「隣の村でお疲れ休みをしなさい。領主の館に入ったら子供を置いて逃げられなくなるわ。」
と、正妻から言い含められていた。
正妻は中々に軍事的な頭脳をしている。
お主、やりおるな‼︎
と、テオロパの周りにいた者は思った。
テオロパの顔はまさしく世紀末覇王。
凝視する眉間の縦皺は、心臓麻痺を起こさせるほどに深い。
テオロパは、ただ困惑していた。
うっかり力を入れると潰しそうだ。
どう動いていいのか、わからない。
あくびしてもにゅもにゅと動いたリラクは、うっすらと目を開けた。
わかっているのかいないのか、テオロパとの視線ががっぷり四つに組む。
それは翡翠のような目だった。
未だ何も無い透き通った目に、自分だけが映っている。
手のひらに乗る体に、指で摘めそうな頭。
小指の爪より小さい目玉……。でも生きている。
テオロパの中にくん!と切ないものが芽吹いた。
いつのまにかそろりそろりと周りの兵…いや従者が集まって来ている。
にゃう と、それが鳴いた。
「にゃ…わ、にゃぶぅ…」
それはのちに喃語という赤ん坊の言葉だと知った。
なんと俺に話しかけていたのだ!
それはにゃうにゃうと小動物のように鳴き。
凝視するテオロパに笑った。
その頃、見慣れぬ小動物に惹かれて、テオロパの周りはごっつい男達が山となっていた。
その目がにゃうにゃうと歌う赤ん坊を凝視していた時に。
赤ん坊は、ばぶっと笑った。
子供は勿論、人にも魔獣にも怖がられていたおっさん達に笑顔が!
ずっきゅーーん‼︎
矢で射抜かれたような痛みが心を打ち抜いた。
「か、可愛いぃぃぃっ♡」
声にならない叫びがその場の空気を打破し。
上空に熱気が駆け上って雲をびゅうと揺すった。
ぷ。
掌から小さな破裂音がした。
濃いヨーグルトの様な匂いが、ぷ~~んと立ち昇る。
あー。と従者達はテオロパに告げた。
「うんちですぜ。おしめを替ねぇと。」
「おしめを替える。」
テオロパは復唱した。
おしめ?
身動き出来ない任務の為に、小便大便を垂れ流しても見つからないように、兵は不浄石をおしめに装着する。
だがそのおしめはこの生き物にはデカ過ぎるのではないだろうか。
全身すっぽり入りそうだ…
「あ~~っ‼︎」
頭をガリガリかきながらデイドが集団から出て来た。
「違うから。テオロパ様、今考えてるのとは違うから。
あと新生児のお肌には、不浄石はまだ無理だから」
デイドはこいつら使えない!と心底思った。
隣の国でナニーとして使用人に潜り込んでた。
多分、俺の方がマシだ。
可愛いからと離そうとしないテオロパから赤ん坊を引き剥がし。
デイドは自分が育てる事を決意した。
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