断罪だとか求婚だとかって、勝手に振り回してくれちゃってるけど。僕はただただ猫を撫でたい。

たまとら

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田舎の領地暮らし

3そして帰還

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【第二王子のお茶会】という集団見合いの招待状が届いた。
それはグラディス公爵家の次子であるリラク宛の物。
のほほんと過ごしていた父上と義母上は真っ青になった。
正直忘れてた。
そんな子供の事を、綺麗さっぱり忘れてた。
慌てて領地にお伺いを立てたら、元気に生きているらしい。

出生届は出してた。
貴族って成人前は人前に出さない。
今更、「いません」とは言えない。

二人で額をつけて考えて。
とりあえず、どうやってお祖父様からリラクを剥ぎ取れるかを思案したが、そこはすんなり通った。

じいちゃんは従軍して騎士となった。
つまり王に忠誠を誓った。
んで、第二王子の為ということでなんとなく斜め寄りの結論を出したらしい。



そんな訳で、訳がわからない内にリラクは王都へ出発する事になった。
侍従としてデイドが付いてくれた。
馬車は8台も連なっている。
もう、花嫁行列の様に連なっている。
それはじいちゃんと愉快な仲間たちのリラクへの愛だ。
オーダーした家具も服も。
正装からドレッシーなモノに至るまである。
領地特産の鉱物も農産物も。

とりあえず満載された馬車を御すのは、仲良しのおっちゃん達だった。
護衛だって、テオロパの特訓に耐えれる男だ。
しかも信頼された者だけが付いている。
つまりあの劇画タッチなおっさん達の中でも強力揃いで。

その遠くからわかる"やんのかよっ!"という威嚇のオーラは。
街道を行くかたぎの旅人も、街道の衆も、山賊すらびびるに充分だった。

じいちゃんは涙と鼻水を拭う事なく男らしく垂れ流して、仁王立ちのまま見送ってくれた。
慣れない旅に塞ぎながらも、リラクはじいちゃんがぷるぷるしていたのを思い出してふふふと元気をだした。



グラディス家の正面で、一同は馬車を待っていた。
向こうから空に消える土煙りに、バッファローの暴走じゃないよね。なんてコックは思った。
そう、公爵家の一同様だけじゃなく、上級使用人だけじゃなく、コックから庭師に至るまで並べられている。
これは初見で圧倒させる為の奥様の指示だろうな、と思った。

でも、あの土煙り、すごくない?
とおもったら馬車がずんずんと門から入ってくる。
流石に荷馬車とかは、門から右の馬車受けに行くが、一台がこっちへくる。


それは明らかに金と時間をかけた特注馬車だった。
蔦と花で透かし模様になった金属が馬車を覆っている。
(これで戦闘時に剣を防げる)
本体は手刺繍の絹で貼られた美しい馬車だ。
王妃を乗せても遜色ない優雅で美しい姫馬車だ。
それが近づいてくるごとに、期待はずんずん高まった。

だいたい赤ん坊のときに田舎に送ったから、どんな顔かも知らない。
おかげで家族は勝手におとなしくて華奢な美少年を妄想していた。
なにせ産んだ方は、一人産んで儚くなる弱さだ。
追求されて、こっそり持ってた姿絵を出した父上だったが。
その絵は妖精のような美形だった。

「「これからはちゃんと可愛いがろう‼︎」」

父上も義母上も決意していた。


そんな訳で馬車が停まり。
(御者の劇画タッチの顔を見ないふりした。)
流れるように従者が傅き、馬車の扉を開けて足台がおかれた。
従者が伸ばした手に掴まってリラクが降り立った時。

「可愛いじゃないかっ‼︎」

と心で一番叫んだのは、長子のファーブだった。
"母の悋気のせいで田舎に軟禁されている不憫な弟"を、全力で守って可愛がらないといけない!と決意していた。


リラクはにっこりと微笑んだ。
正直いうと、家族って言われても。
初めて会うおっさんとおばさんと兄ちゃんに、何の思い入れも無い。
とりあえずデイドに合格点が貰えるように挨拶して。
ちょっと観光して、土産を買って。
じいちゃんとこにさっさと帰ろう。
と、思っていた。
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