14 / 42
田舎の領地暮らし
4 ファーブの煩悶
しおりを挟む
グラディス家の人達(父と義母と兄)はいい人達だった。
リラクを歓迎してくれた。
義母上は、きちんと挨拶をするリラクに本当に安堵して。
『あのガサツで強引で凶悪で後先考えない』お祖父様から、こんな真っ当な子供に育った事を驚いて、天に感謝していた。
はては「お産みになった方の心根が美しいから、こんな良い子に育ちましたのね!」
と、意味不明な感動をしていたので。
とりあえずリラクは良い子として、にっこりしておいた。
かつて。
グラディス家長子のファーブは悩んでいた。
以前から弟がいる事は知っていた。
その子は遠くにいる。
"声がデカくて図体もデカくて、唯我独尊で、嘘を付いた子供を頭からバリバリ喰ってしまう"というお祖父様という魔物に育てられているという。
それは母上の悋気のせいだと、家令がこっそり教えてくれて
「ですからぼっちゃまも、悋気の虫を湧かさないようにしないといけませんよ。」
と、さかしら顔で指導された。
いや、問題はそこじゃ無いだろう!
弟という幼い生物が、そんな危険生物に育てられているというのはどうなんだろう。
そう心配したら、
「ぼっちゃま。雉も鳴かずば撃たれない。ですよ」
って言われた。訳が分からない。
そんな訳で幼い時からファーブは弟を案じてドキドキしていたが。長じるに連れて、別のドキドキが混ざってきた。
つまり、自分が育った様に弟も育つ。
"朱に交われば赤くなる"という。
そんな危険生物に育てられたという弟は、どんな生き物に変じているのだろう…と。
ファーブは考え過ぎるきらいがある。
頭の中で考えていると、それはどんどんと怖いモノに変わっていく。
彼の頭の中は、ちょっと人では無いシルエットが跋扈して
ちょっとぽっちゃり我儘ボディは、どきどきと不整脈を奏でていた。
その弟が来るという。
【第二王子のお茶会】への招待状が届いて、弟が来るという。
もう屋敷は蟻の巣を突いたように大騒ぎだ。
考えて欲しい。
お祖父様は戦争に終止符を打った方だ。
"暴虐のテオロパ"と名前が教科書に載ってる。
暴力の暴に惨虐の虐だぞぉ。
教科書の註④に
『彼の鎧は返り血を浴び続けた。
固まったソレは動くたびに赤い粉として剥がれる。
剣は血あぶらで滑り、撲殺の為の物になっていた。
それでも彼は戦った。彼は周りに赤い煙を沸き立たせ、まるで赤鎧を着ている様だった。
敵は恐怖のあまり武器を放り出し、逃げ帰った…』
って、そんな註釈のあるお祖父様だぞ‼︎
だけど…なんだこの註釈。
註②の、フィルサン。
面積41280㎢ 公用語はロルンシェ語
隣国。我が国に侵攻し撤退した。
に、比べて主観入りすぎだろう‼︎
お前、絶対、お祖父様のファンだよな!
~~そんな男に育てられた子供なんて。
常識が通じるものなのか?
気に食わない事があったら流血するのでは無いか?
そんなファーブの不安と不審は、すぐ周りに広がった。
従者達は恐れ慄き、その原因を作った父上と母上はおどおどだ。
そうして、弟がやって来た。
リラクは馬車から降りるなり、美しい礼をとった。
角度も手の挙げ方も口上も完璧だ。
"どう?"とお目付け役の侍従を見上げる、ちょっとドヤった目がエメラルドグリーンにキラキラして。
堅苦しいその場に優しい風が吹き込んでいた。
父上も母上もリラクの可愛いさにホッとするあまり。
足元から力が抜けて、従者に支えられている。
(劇画タッチの世紀末小僧じゃ無かったという安堵感で気を失う寸前だった)
とにかくリラクは可愛いかった。
リラクを虐げて田舎に送り込む事はしないぞ‼︎
ファーブは心に誓った。
リラクを歓迎してくれた。
義母上は、きちんと挨拶をするリラクに本当に安堵して。
『あのガサツで強引で凶悪で後先考えない』お祖父様から、こんな真っ当な子供に育った事を驚いて、天に感謝していた。
はては「お産みになった方の心根が美しいから、こんな良い子に育ちましたのね!」
と、意味不明な感動をしていたので。
とりあえずリラクは良い子として、にっこりしておいた。
かつて。
グラディス家長子のファーブは悩んでいた。
以前から弟がいる事は知っていた。
その子は遠くにいる。
"声がデカくて図体もデカくて、唯我独尊で、嘘を付いた子供を頭からバリバリ喰ってしまう"というお祖父様という魔物に育てられているという。
それは母上の悋気のせいだと、家令がこっそり教えてくれて
「ですからぼっちゃまも、悋気の虫を湧かさないようにしないといけませんよ。」
と、さかしら顔で指導された。
いや、問題はそこじゃ無いだろう!
弟という幼い生物が、そんな危険生物に育てられているというのはどうなんだろう。
そう心配したら、
「ぼっちゃま。雉も鳴かずば撃たれない。ですよ」
って言われた。訳が分からない。
そんな訳で幼い時からファーブは弟を案じてドキドキしていたが。長じるに連れて、別のドキドキが混ざってきた。
つまり、自分が育った様に弟も育つ。
"朱に交われば赤くなる"という。
そんな危険生物に育てられたという弟は、どんな生き物に変じているのだろう…と。
ファーブは考え過ぎるきらいがある。
頭の中で考えていると、それはどんどんと怖いモノに変わっていく。
彼の頭の中は、ちょっと人では無いシルエットが跋扈して
ちょっとぽっちゃり我儘ボディは、どきどきと不整脈を奏でていた。
その弟が来るという。
【第二王子のお茶会】への招待状が届いて、弟が来るという。
もう屋敷は蟻の巣を突いたように大騒ぎだ。
考えて欲しい。
お祖父様は戦争に終止符を打った方だ。
"暴虐のテオロパ"と名前が教科書に載ってる。
暴力の暴に惨虐の虐だぞぉ。
教科書の註④に
『彼の鎧は返り血を浴び続けた。
固まったソレは動くたびに赤い粉として剥がれる。
剣は血あぶらで滑り、撲殺の為の物になっていた。
それでも彼は戦った。彼は周りに赤い煙を沸き立たせ、まるで赤鎧を着ている様だった。
敵は恐怖のあまり武器を放り出し、逃げ帰った…』
って、そんな註釈のあるお祖父様だぞ‼︎
だけど…なんだこの註釈。
註②の、フィルサン。
面積41280㎢ 公用語はロルンシェ語
隣国。我が国に侵攻し撤退した。
に、比べて主観入りすぎだろう‼︎
お前、絶対、お祖父様のファンだよな!
~~そんな男に育てられた子供なんて。
常識が通じるものなのか?
気に食わない事があったら流血するのでは無いか?
そんなファーブの不安と不審は、すぐ周りに広がった。
従者達は恐れ慄き、その原因を作った父上と母上はおどおどだ。
そうして、弟がやって来た。
リラクは馬車から降りるなり、美しい礼をとった。
角度も手の挙げ方も口上も完璧だ。
"どう?"とお目付け役の侍従を見上げる、ちょっとドヤった目がエメラルドグリーンにキラキラして。
堅苦しいその場に優しい風が吹き込んでいた。
父上も母上もリラクの可愛いさにホッとするあまり。
足元から力が抜けて、従者に支えられている。
(劇画タッチの世紀末小僧じゃ無かったという安堵感で気を失う寸前だった)
とにかくリラクは可愛いかった。
リラクを虐げて田舎に送り込む事はしないぞ‼︎
ファーブは心に誓った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
95
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる