断罪だとか求婚だとかって、勝手に振り回してくれちゃってるけど。僕はただただ猫を撫でたい。

たまとら

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田舎の領地暮らし

5 内緒のファーブ

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ファーブが、あれ?なんか違う。
と思ったのは階段からだった。

リラクの愛読書は『良い子の魔物図鑑』だ。
これは子供向けの図鑑だが、精密な絵で致命傷の部位から解体の分け方まで書いてある優れ物だ。
そこでリラクは田舎の領地と王都では、生息地が違う事を知った。

リラクが王都の近辺しかいない魔物を珍しがるから、見つけると呼んでいた。
屋敷の敷地には林があって、タックリスやウーリーの様な草や木の実を食べる小型種がいる。
庭に出ようとしたら、ガーデンテーブルで木ノ実を食べているタックリスがいた。
慌てて玄関ホールで呼んだ。
吹き抜け三階から覗いたリラクは、

「はぁい。今行きます!」

と。声を上げたと思ったら。
しゅるるっと音がして。
螺旋階段の手摺りを白いレースの塊が流れてくる。
へおっ?と見ていると、手摺りの終わりからひゅんと飛んで。
すたっと立った姿はリラクだった。

え?
ナニガナンダカワカラナイ。
この時に"おとなしい弟"に、ちょっとヒビが入った。


下働きの者達は、割とすぐにリラクを理解した。
下町とかにいる悪ガキは、大抵こんな元気印だからだ。
でもリラク様は国を救ったテオロパ様に育てられた坊ちゃん。優しくて元気で、これっぽっちも意地悪さや傲慢さの無いありがたい貴族だ。
どうせ下働きは上級使用人では無い。
つまり直接主人に口を聞ける身分では無い。
リラク様になんの被害も受けてないし、黙っていよう。
と一同は思ってた。



ファーブはリラクに王都の地理を教えていた。
興味津々で目を輝かす弟に、力が入りすぎて羽ペンの先が引っかかった。削ってももう使えない。気に入ってたのに、がっかりだ。
これはリルッカの羽根で、凄く書きやすかったのに。
眉を八の字にしたリラクに、気にするなと言い。
そういえば、屋敷の林に時々リルッカがくる。

「でもね。リルッカは体高は2Mは超えるし、凶暴だから近づいちゃいけないよ。」

はい。という素直なリラクに頷いた次の日。


「兄様ぁ!羽根ですよぉー」

ぐずずずっと馬並みに巨大なリルッカを片手で引き摺りながら。
むしった羽根をぐいっと誇らしげに挙げるリラクがいた。
芝生の庭がリルッカの重みで捲れて、林から茶色い道が出来ている。

リラクの艶々したミルクティ色の髪は、大小の羽がくっついて見事にぐちゃぐちゃだ。
母上が選んだフェミニンな服は、所々破けて泥が付いている。
ただ、すっごく嬉しそうにこちらを見る目に気押されて
(だってキラキラで可愛いのだ。しかも私の為に!)
ファーブはリルッカのスプラッタな亡骸を見ても
ぎゃあと叫ばずに息をのんだ。

呆然とするファーブに羽を渡している時。
侍従のデイドが現れた。

上品なデイドは、ふうと眉間に指先を当てて溜め息を付いた。

「全く…リラク様…」

そうだ。ガツンと言ってくれ。
この姿を母上が見たら、100dBは超える叫びをあげて気絶するに違いない。
そうしたら屋敷ごと、大騒動になるのだ。

そんな小心なファーブの前で、デイドは決然と叱った。

「たかがリルッカにそんなダメージを受けるなんて恥と思いなさい!」

違う!そうじゃない‼︎

「引き摺ったら肉の味がわるくなるでしょう!」

そしてデイドは効率の良い首の落とし方を伝授し

「急いで血抜きをする為に、厨房へ届けて参ります」

とリルッカを受け取った。
ふわりと身体の下に風を巻き上げ、浮かばせた。


どことなく。
いや、ちょっぴりだが。
これは言っちゃいけない気がする。
うん、むしろ言ったらとんでもないことになる気がする。


その日。
ファーブは母上に秘密を持った。
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