51 / 77
51 朝の願い 侍従A
「…ぁ、んんっ、…まって…」
ジュノ様の甘い声が聞こえて来ます。
私は控えの間で気配を殺しておりました。
控えの間は、主人からいつお呼びが掛かっても良いように。
そして私事の際の暗殺や策謀、性交事の過ぎたおねだりを防ぐためにあります。
決して。
決して、あんあん好きでは無いのです。
驚くほどにすんなりと、ジュノ様のパーソナルスペースにがぶりよったアドル王子は、滴るほどに愛を垂れ流しておりました。
いつ後一歩に迫るのだろうかと、皆んなで見守っておりました。
すると、今夕。
その雰囲気が変わったのです。
ちょっと思い詰めたような。
ワクワクするような。
何というか、この、やるっきゃ無い!的なその意気込みは、多分私ども侍従でないと、気が付かなかったと思います。
啜り上げる声が止まって、私はそっと入室しました。
アドル王子は、極まって眠ってしまわれたジュノ様を、自ら清められるとおっしゃいます。
~~良き!
体温より少し温めのタオルをお渡しして、清拭して頂きました。
その間にシーツもカバーも小瓶も、手早く整えます。
ちらりと見たジュノ様はとても幸せそうな寝顔でしたので、私はとても安堵致しました。
愛してる。という言葉に巻き付かれても、ジュノ様はまだご自身の心を定めてはいらっしゃいません。
でも、それはじきに悟られる事でしょう。
たとえ上手く言いくるめられたとしても、嫌悪感のある男と添い寝など出来る方では御座いませんから。
とにかく私どもは、その機会があるのに、無理矢理最後まで致さなかったアドル王子に、ようやく本気で信頼を捧げる事が出来ました。
翌朝、アドル王子とベッドの中できゃっきゃうふふしてらっしゃいました。
いやいや、どう取り繕うとも、側から見ればバカップルで御座います。
そして、身だしなみを整えております時。
ジュノ様はもじもじと何かいいたげで御座いました。
~~わかります。
戸惑われた事も。
恥じらわれた事も。
言い出せない事も。
「お気になさらず!私どもの仕事でございますよ。」
そうはっきり言葉に表して。
ソレは決して特殊では無いことをお伝えしました。
これで気を病まれずに過ごして頂きたいです。
この王宮の平穏と幸せの為にも、このままぐいぐいと仲を深めて行って頂きたいです。
後宮の侍従はある意味特殊で御座います。
産まれる前から入宮されるとお決まりの方は、外界と、はっきり遮断されます。
学園に行かれている間も侍従と影の者に世話をされます。
そのようなやんごとなき方は、
自分で服を着るとか。
避妊具を装着するとか。
性交の後始末をすることは、なさりません。
国によっては、ともすれば排泄の後の清拭さえ御付きの者の仕事だったりします。
寵妃の身の回りをする者は、ともすれば介護というモノに近い仕事を致します。
そして羞恥という感情を失くされたやんごとなき方にとって、そんなお世話をする私どもは人では無く影となります。
恥じらうジュノ様のお心がとても眩しくて。
炭酸の泡のようにシュワシュワと自分が弾けています。
このまま。
このままのジュノ様で、お幸せになって頂きたいと願っております。
あなたにおすすめの小説
お忍び中の王子様、毎日路地裏の花屋に通い詰めては俺を口説くのをやめてください。~公務がお忙しいはずでは?~
メープル
BL
不愛想な店主・ネイトが営む小さな花屋の軒先には、雨音に混じって場違いな男が立ち尽くしていた。
不審者と決めつけたネイトが、迷わず足元の如雨露の冷水を浴びせると――フードの下から現れたのは、整った顔立ちの男、ヴァンスだった。
以来、ヴァンスは毎日のように店に現れるようになる。
作業台の隅に居座り、ネイトが淹れる安い茶を啜りながら、ハサミの鳴る音を黙って眺める日々。
自分を王子とも知らないネイトの不遜な態度に、ヴァンスはただ優しく目を細めていた。
『断罪予定の悪役令息ですが、冷酷第一王子にだけ求婚されています』
常陸之介寛浩📚️書籍・本能寺から始める
BL
あらすじ
侯爵家の嫡男ルシアンは、ある日、自分が前世で遊んでいたBLゲームの世界に転生していることに気づく。
しかも役どころは、ヒロインに嫉妬して破滅する“断罪予定の悪役令息”だった。
このまま物語通りに進めば、婚約者候補への嫌がらせや数々の悪行を理由に社交界から追放。家は没落し、自身も悲惨な末路を迎える。
そんな未来を回避するため、ルシアンは決意する。
目立たず、騒がず、誰とも深く関わらず、特に本来の攻略対象である第一王子には絶対に近づかない、と。
けれど、なぜか本来は誰にも心を許さず冷酷無慈悲と恐れられている第一王子アルベールが、ルシアンにだけ異様に執着してくる。
人前では冷ややかなまま。
なのに二人きりになると、まるで逃がすつもりなど最初からないと言わんばかりに距離を詰め、甘く、重く、求婚めいた言葉を囁いてくるのだ。
「君がどれほど逃げようとしても、私だけは君を離さない」
断罪を避けたいだけなのに、王子は人前で彼を庇い、社交界では“第一王子の寵愛を受ける悪役令息”という噂まで広がり始める。
さらに、ルシアンを陥れようとする貴族たち、王位争い、侯爵家に隠された事情まで絡み、物語はゲーム本来の筋書きから大きく外れていって――。
これは、破滅するはずだった悪役令息が、冷酷第一王子のただ一人の執着相手になってしまう、
甘くて重くて逃げられない、宮廷逆転溺愛BL。
過疎配信者の俺の声だけが大人気配信者を眠らせてあげれるらしい
スノウマン(ユッキー)
BL
過疎配信者の白石 透(しらいし とおる)のリスナーには、透の声でないと寝れないというリスナー、太陽が居た。彼の為に毎日配信してあげたいが、病弱な透には週一程度が限度だった。
だが、それすら叶わなくなる。両親が金と手間のかかる透の事を追い出すことにしたのだ。そんな時に手を差し伸べてくれたのが太陽で、一緒に暮らすことになる。だが彼の正体は大人気配信者で!?
儚げ侯爵令息の怠惰な檻 ~前世が社畜だったので、公爵様の重すぎる溺愛が極上の福利厚生に見える~
千葉琴音
BL
前世で過労死した社畜男子が転生したのは、触れたら折れそうな超・美少年。 目指せ、究極の光合成ライフ! でも、隣にいるハイスペック公爵様の愛が、ちょっと(かなり)重すぎて……!?
身代わり花婿の従者だった俺を、公爵閣下が主ごと奪っていきました
なつめ
BL
嫁ぐはずだった主人が式直前に姿を消し、従者のルキアンは主家を守るため、主人の身代わりとして花婿役を演じることになる。
だが、冷酷無比と噂される公爵ヴァレシュは、最初の対面から“花婿”ではなく、その横で嘘をついている従者のほうを見抜いていた。
主のために忠誠を差し出し続ける受けと、その忠誠ごと奪い、自分のものにしたい攻め。
身分差、主従、政略、執着、略奪の熱を濃く煮詰めた、じわじわ囲い込まれる主従逆転BL。
転生天使は平穏に眠りたい〜社畜を辞めたら美形王子の腕の中でとろとろに甘やかされる日々が始まりました〜
メープル
BL
毎日深夜まで残業、食事はコンビニの冷たいパン。そんな社畜としての人生を使い果たし、過労死した俺が転生したのは――なんと、四枚の美しい羽を持つ本物の天使だった。
「今世こそは、働かずに一生寝て過ごしたい!」
平穏な隠居生活を夢見るシオンは、正体を隠して王国の第一王子・アリスターの元に居候することに。ところが、この王子、爽やかな笑顔の裏で俺への重すぎる執着を隠し持っていた!?
契約結婚だけど大好きです!
泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。
そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。
片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。
しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。
イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。
......
「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」
彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。
「すみません。僕はこれから用事があるので」
本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。
この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。
※小説家になろうにも掲載しております
※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します