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女神の血脈
28 愛を乞う
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夜。
虫の声がする闇の中をネティは項垂れながら歩く。
光が目に当たり、ふと見ると池の水面が月でキラキラ揺れていた。
振り仰ぐと、半分の月がある。
月の無い闇だと思っていたのに、星もあって明るい。
キラキラ光る水面を見ていると、小さな頃から行っていた禊を思い出した。
ふっと息を吐くと服を脱いだ。
ゆっくり水に入っていく。
身を切られるように冷たい水が、頭の中をはっきりさせてくれる気がする。
ゆっくり沈んでいく。
その様子をアキラはじっと見ていた。
水面から頭が消え、数を数える。
焦りから少し早いカウントだ。
ドキドキする心臓の音を感じながら、水面を睨みつける。
ーーーやがて水紋が広がり、ゆっくりネティが出てきた。
ゆらりと揺れる。
慌てて飛び出して抱き止めた。
竜の水浴び場の池は、いつも渾々と水が湧いている。
だからそこに長く浸かっていた体は、氷のように冷たくなっていた。
ぐっと抱きしめるとアキラの体温の熱さにびくりとする。
アキラは体の冷たさに驚いた。
じっと抱いているとゆっくりお互いの体温が移って、ネティの体が震えはじめる。
「風邪をひいてしまうよ。仮眠所でふこう。」
怯えさせないように囁いて、抱き上げた。
竜舎の端に仮眠所がある。
ようは具合の悪くなった竜を見守る為の簡易ベッドで、簡単な仕切りがされているだけだが風が当たらない。
なにより、充満している竜の匂いで、ネティの体がほっと弛緩するのが感じられた。
膝の上に乗せたままタオルで拭く。
そして暖かい風で乾かす。
暖かい風が心地よかったのか、ネティはほうっと息を吐いた。
「み、禊をしようと思ったの……」
しばらく待つと、ぽつぽつと話しはじめる。
気配がする。
竜達は心配して、全員聞き耳を立てている。
「ね、寝ようと思うと、思い出して……」
あの日、泣きながらゴシゴシと全身を洗っていたのを知っている。
よく見ると膝の上の体はひとまわり小さくなり、擦りすぎて赤く荒れていた。
「あ、あんな奴のこと、思い出したく無いのに……。き、気持ち悪くて……」
声がだんだん止まらなくなって嗚咽を漏らしてくる。
その体を抱きしめて、柔らかい髪を撫でながら頬に溢れた涙を舐める。
舌の感触にびっくりして見上げるネティに微笑む。
そのままあざの上を舐めていく。
「だ、だめだよ。汚いから。」
消え入りそうな声に、抱いていた腕に力をぐっと込める。
「汚くなんか無いよ。 俺が見ているネティを見せてやれたらいいのに。」
ついばむようにキスする。
顔全体に。
余すところが無いように。
「キラキラした銀の目が綺麗だ。
いつも生き生き楽しそうで。
他の人のは違うんだ。
敷き藁や汚物を掃除している時でさえ、周りがふんわり光って見える。
暗い夜に照らしてくれる灯台のように。
初めて見た時からおれはネティしか見えない。ネティを見てると心が暖かい。
今のままのネティが好きだ。
俺の見ているネティは誰よりも綺麗だ。」
あんなに冷たかった頬が、かっと赤くなって熱を持つ。
そこにゆっくりキスをする。
耳も、額も。
「それでもあいつが触ったところが汚いのなら…… 俺がそこを綺麗にしてあげるよ。
どこが気持ち悪い? どこを触られた?」
耳元で響くアキラの声がぞくぞくする。
雨上がりの森のようなさわやかな匂いも、ネティの頭を痺れさせる。
「む、胸を……」
「胸を?」
「胸を触られた…」
掠れた声で答えるとアキラの頭がつっと滑り、舌が乳首をころがす。
体がぴくりと驚いたが舌は止まらない。
空いている方の手がゆっくりともう片方の乳首を弄りはじめた。
痛くないように、そっと。
舌にころがされた小さな飾りは、色付いてふっくらしてくる。
あの時、きつく噛まれて舐められた、痛みと共にあった何かが柔らかく溶けていく。
ほおっとネティの体から強張りがほどけていった。
虫の声がする闇の中をネティは項垂れながら歩く。
光が目に当たり、ふと見ると池の水面が月でキラキラ揺れていた。
振り仰ぐと、半分の月がある。
月の無い闇だと思っていたのに、星もあって明るい。
キラキラ光る水面を見ていると、小さな頃から行っていた禊を思い出した。
ふっと息を吐くと服を脱いだ。
ゆっくり水に入っていく。
身を切られるように冷たい水が、頭の中をはっきりさせてくれる気がする。
ゆっくり沈んでいく。
その様子をアキラはじっと見ていた。
水面から頭が消え、数を数える。
焦りから少し早いカウントだ。
ドキドキする心臓の音を感じながら、水面を睨みつける。
ーーーやがて水紋が広がり、ゆっくりネティが出てきた。
ゆらりと揺れる。
慌てて飛び出して抱き止めた。
竜の水浴び場の池は、いつも渾々と水が湧いている。
だからそこに長く浸かっていた体は、氷のように冷たくなっていた。
ぐっと抱きしめるとアキラの体温の熱さにびくりとする。
アキラは体の冷たさに驚いた。
じっと抱いているとゆっくりお互いの体温が移って、ネティの体が震えはじめる。
「風邪をひいてしまうよ。仮眠所でふこう。」
怯えさせないように囁いて、抱き上げた。
竜舎の端に仮眠所がある。
ようは具合の悪くなった竜を見守る為の簡易ベッドで、簡単な仕切りがされているだけだが風が当たらない。
なにより、充満している竜の匂いで、ネティの体がほっと弛緩するのが感じられた。
膝の上に乗せたままタオルで拭く。
そして暖かい風で乾かす。
暖かい風が心地よかったのか、ネティはほうっと息を吐いた。
「み、禊をしようと思ったの……」
しばらく待つと、ぽつぽつと話しはじめる。
気配がする。
竜達は心配して、全員聞き耳を立てている。
「ね、寝ようと思うと、思い出して……」
あの日、泣きながらゴシゴシと全身を洗っていたのを知っている。
よく見ると膝の上の体はひとまわり小さくなり、擦りすぎて赤く荒れていた。
「あ、あんな奴のこと、思い出したく無いのに……。き、気持ち悪くて……」
声がだんだん止まらなくなって嗚咽を漏らしてくる。
その体を抱きしめて、柔らかい髪を撫でながら頬に溢れた涙を舐める。
舌の感触にびっくりして見上げるネティに微笑む。
そのままあざの上を舐めていく。
「だ、だめだよ。汚いから。」
消え入りそうな声に、抱いていた腕に力をぐっと込める。
「汚くなんか無いよ。 俺が見ているネティを見せてやれたらいいのに。」
ついばむようにキスする。
顔全体に。
余すところが無いように。
「キラキラした銀の目が綺麗だ。
いつも生き生き楽しそうで。
他の人のは違うんだ。
敷き藁や汚物を掃除している時でさえ、周りがふんわり光って見える。
暗い夜に照らしてくれる灯台のように。
初めて見た時からおれはネティしか見えない。ネティを見てると心が暖かい。
今のままのネティが好きだ。
俺の見ているネティは誰よりも綺麗だ。」
あんなに冷たかった頬が、かっと赤くなって熱を持つ。
そこにゆっくりキスをする。
耳も、額も。
「それでもあいつが触ったところが汚いのなら…… 俺がそこを綺麗にしてあげるよ。
どこが気持ち悪い? どこを触られた?」
耳元で響くアキラの声がぞくぞくする。
雨上がりの森のようなさわやかな匂いも、ネティの頭を痺れさせる。
「む、胸を……」
「胸を?」
「胸を触られた…」
掠れた声で答えるとアキラの頭がつっと滑り、舌が乳首をころがす。
体がぴくりと驚いたが舌は止まらない。
空いている方の手がゆっくりともう片方の乳首を弄りはじめた。
痛くないように、そっと。
舌にころがされた小さな飾りは、色付いてふっくらしてくる。
あの時、きつく噛まれて舐められた、痛みと共にあった何かが柔らかく溶けていく。
ほおっとネティの体から強張りがほどけていった。
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