恋するじゃがいもと、先輩とボケナス

たまとら

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プロローグ

3 ボケナス

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シグルド先輩のお膝の上でいちゃついていたら、遠くから騒ぎが聞こえた。
ルインの意識は全方位先輩に向いているから叫び声の単語は入ってこない。

うっとりと二人の世界に浸っていたら、喚き声がどんどん近づいてきて噴き飛ばされた。
腰を下ろしていた芝生の後ろのしげみから、バキバキと枝をへし折りながら何がが突進してきたのだ。

先輩はドンと転がり、その膝の上にいたルインはぽんと飛んで芝生にべちょりと落下した。

???

ぽかんと見ると人だった。
それもたまにチラ見していた噂のヤリチンだ。
見るたび相手が違って、そりゃもう目に毒な濃厚接触でイチャつくヤリチン野郎だ。
そいつがハァハァと肩で息をしながら、キョロキョロ視線を巡らせる。

タンザナイトのように不思議に煌めく目が、やがて尻餅をついた先輩をとらえた。

「ゲッ‼︎男っ!男かよぉ!」イケボが叫ぶ。

「でも有りだ!その顔なら有りだ!イケる。イケるぞぉっ‼︎」

何故かうんうんと頷きながら、後ろから走ってくる従者達に宣言した。

つがいをみつけたぞぉぉっ」

途端に湧き起こる歓声の中で、そいつは流れる様な所作で座り込んだ先輩の前で片膝をつく

「ようやく逢えたね愛しい人。
俺はずっと君をさがしていたんだよ。」

そいつは先輩の顔を覗き込みながらその手をきゅっと両手で握り込んだ。


『眩しい…』

美形に対する免疫と耐性は学園で充分に準備万端だった筈なのに、そいつは予想をこえていた。
なんせそいつのイチャラヴをチラ見してた時は、大概隣に先輩がいて全意識はそっちにいってたから、そいつをじっくり見た事は無かった。

金髪美形な先輩の手を取る白金髪美形のその姿は、あまりの美しさに理解が追い付かずに動悸が起こる。
脳が拒否して、もう発光体にみえた。

うっ、目がぁ。

……なんか尊み?
眼福?

眩しさに目を眇めるルインは動けない。
新たな扉が開きそうだ。


先輩をうっとり見ていた美麗な顔は、へぁ?と間抜けに歪んだ。
くんくんくん。
ツンと伸びた鼻の小鼻がふくふくと動く。

「違う……」

地を這うような声が漏れると、ぺたりと座り込んだ。

「番の匂いがしてた筈だ!
こんなに、こんなにしてるのに…
やっと見つけたのに…」

ブツブツ呪文のように言いながらザザザとあちこちに視線を飛ばす。
その目がぐりんとこっちを向いた。
タンザナイトの煌めく目から、ルインに向かって前後左右縦横無尽にサーチのビームが飛ばされる。


「………マジかよ」

その絶望の声は辺りを揺るがした。
従者達が固唾を飲んで見守っている。

「この俺の番がこんなちんちくりんなんてありえないだろうがぁ」

噴水の様に噴き上がる絶叫に、指差されたルインのハートはぴきりとヒビがはいった。

従者に口を塞がれ引き摺られていくまで
そいつは"ちんちくりん""そばかす""無理だぁ"と叫び続けていた。

………ありえないのはお前だ。
ヤリチンのボケナスめぇ‼︎

ルインはでしでしと地団駄を踏む。

その日、ルインの敵が一人増えた。
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