恋するじゃがいもと、先輩とボケナス

たまとら

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学園生活

1 無事到着しました

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「じゃ、行ってきまーす!ありがとねぇ!」

手を振って赤い三つ編みをぴょこぴょこ揺らしたルインを見送った。
御者は任務が無事終了したのにホッとした。
まさに生死を賭けた闘いだったのだ。

【護衛と悟られずに学園まで送る】
御者ギルドにその伝言が届いて白羽の矢が自分に来た時、嬉しさと恐怖でちびりそうだった。

「従者は要らないよ一人で出来るから。
忙しいみんなの手を煩わせないよ。
一人で行けるからね!」

アルヴィン家の末っ子がそう言い出した時、領地は荒れたらしい。
なんとも揺るがないその主張に、兄君と家令は寝る間も惜しんで奔走したらしい。
我儘末っ子(予想)は言い出したら勝手に暴走するそうだ。
そして末っ子は荷馬車を乗り継いでこの定期運行の長距離馬車に誘導されて来た。

その我儘末っ子(予想)は、日に焼けてそばかすだらけの顔と葉っぱのような目を楽しそうにキラキラさせた子供だった。
たぶん自分で両サイドに編んだ三つ編みがちょっとでこぼこして、ザリガニの尻尾のようだ。
それが動くたびにぽこぽこ揺れている。

可愛い。

心がほわっとなって。
そりゃ安全確保指令が通達される訳だと思った。

こんな可愛い子なら、ムラッとした馬鹿が5人や10人湧いて出るだろう。
ヘタすると攫われて売り飛ばされる事になる。
アルヴィン家なのにこの小ささと細さと警戒心の無さはどゆことなんだ。

末っ子は乗客のおばちゃんに笑顔で蜜柑をもらったり、子供に草笛を教えたりしてきゃっきゃしている。
可愛いさがヤバい。

そんな訳で学園の入り口に着いた時、御者は魂が抜けて行きそうなほど安堵した。

やった。
俺はやり遂げた。
もう馬車ステーションでも車庫でも俺は一躍有名人だ!
へっへっへっへ…

緊張から解放された御者はランナーズハイで微妙なテンションになっていた。



こうやってルインは学園にやって来た。

ローラレイト王立学園は貴族の子供は修学を義務づけられている。
卒業して祝いの夜会に出席する事で"貴族で成人"と認められるのだ。
学園は学問を修めたり貴族社会の繋がりを作ったりする他に、魔力の使い方を学ぶ場だった。

空気中にある魔素と多かれ少なかれ誰でも持っている魔力で魔法が発生する。
その魔法で社会のあらゆる事が動いている。
治水も産業も魔法無しには始まらない。
魔力の使い方や御し方がわからなかったら大惨事だ。
それを防ぐ為の王立学園だった。

貴族は大概魔力が多い。
平民でも稀に生活魔法以上を使える魔力の多い者がいる。
というわけで平民もわりと入学してくる。
学園は基本的に無償だ。
それだけ魔力を多く持つ者が貴重で大事な人材なのだ。

安心して欲しい。
魔力の少ない者も落ち込む事は無い。
文官という偉大な職業が君を待っている。
高等学科は領地経営や商業のための経済や法律を学ぶ事ができる。
それでもやっぱり魔法が使いたいというのなら、魔導科では描くことで少ない魔力で大きな魔法を使える魔法陣という選択肢も錬金術という選択肢もある。



そんな訳でルインは入学の為に領地からやって来た。
入学要項が送られて来た時、四男だしどうせ将来平民まっしぐらなんだし、貴族の称号は要らないんじゃない?と言ったらとにかく行け‼︎と叱られた。

ちぇ。めんどくさ。と思ったがコレは過保護な家族と離れるチャンスでは⁉︎と気がついた。

お目付け役の従者は要らない!一人で出来るから‼︎
そう言い張って、隙をみて王都方面に行く野菜の荷馬車に飛びのって、ガタゴト学園に向かった。


学園の門を潜った時。

「ほらぁ。僕だって出来るじゃん!」

家族を出し抜いて到着したぞ!
やり切った満足感にニヤニヤした。

ルインは学園を前に明るい未来にワクワクしていた。
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