駆け落ちの後始末を、僕らに求めるのはマジ勘弁して欲しい

たまとら

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パルスと辺境

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「パルスに持って行って。」

母上にお盆を渡された。上には臭い匂いの薬湯と、口直しのボロルがのった小皿がある。
ボロルは卵で作ったお菓子で、口に入れるとほろほろと溶けて、すんごく甘いんだ。

俺に薬を飲ませる時は、そんな素敵な物付けてくれた事ないぞっ!
ぷうと口を尖らせる。

わかってる。館は皆んな忙しい。
従者だって忙しくて、手が空いてるのは俺だけなんだよな。
畜生。俺をパシリに使いやがって。
あの黒猫野郎。

ブツブツ言いながら廊下を歩く。

部屋をノックすると、どうぞ、と、か細い声がした。


「薬でーす。」

不本意で来てやったんだぞって言いたげに、不貞腐れた声でバンとドアを開けた時。
ベッドに起き上がった子供と目が合った。

尻尾がびん!と逆立った。

びっくりした‼︎

そこに天使がいた。

黒い髪が窓からの陽にキラキラしている。
こっちを見る目は冬の空のような青で、こぼれそうに大きい。
その目ん玉のまわりを、長いまつ毛が縁取っている。
半開きの唇はラオナの花のようにピンク色で…

その青とピンクが何故はっきりわかるかというと、…白い。
本当に青白いくらいに顔が白い。
その美しい顔が、こっちを見ていた。

~~なんだよ。

あの変な顔の奴は何処行ったんだよっ‼︎
俺はかあっと頬が熱くなった。

「こ、これ薬だからっ、」

上擦った声でそう言うと、ヘッドテーブルにガチャンと乗せる。
包帯は白く、血の匂いはしない。

「ぁ…ありが…ぅ…」

小さな声が聞こえて、青の目が伏せられた。
俺はドキドキで、心臓が口からおえって出てきそうだ。
焦って、そのまま凄い勢いで
「じゃ後でお盆をとりにくるから!」
と叫んで部屋から飛び出した。


なんだよ。
なんだよ。
すんげぇ綺麗な子じゃんか‼︎

母上のところにダダっと走る。
母上はびっくりして目がまんまるだ。

「だ、誰なのあれ‼︎ 寝てた黒猫どこいったんだよっ!」

尻尾が意識しないうちに、ぶんぶん振り回っていたらしい。
それをちらりと眺めて、母上は目を細めた。

「綺麗でしょう。あの子がパルスよ。」


まさかとは思ってた。
やっぱりと思った。

熱で腫れて膨れ上がってた顔が落ち着いた時。
そこにはすんごく綺麗な子がいた。
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