駆け落ちの後始末を、僕らに求めるのはマジ勘弁して欲しい

たまとら

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パルスと辺境

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世話してあげてね。
そう母上から言われた。

もちろんだ!
俺は兄貴だからなっ。

病み上がりだから無理させないでね。
って言われた。

当たり前だ。
こんな細い弱そうな子供。
直ぐに壊れちゃうにきまってる。

綺麗なアイスブルーの目は感情を映さない。
「行くぞっ‼︎」
隊長の俺は兵糧であるクッキーを、沢山鞄に詰めて出発した。
パルスは黙々とついてくる。
屋敷をキョロキョロとみている。
興味というより、情報を入れてるようだ。


初日は無理をさせないように、台所や厩舎など近場を回る。
出会った料理長や侍従と顔つなぎする。

おずおずとした黒髪の子供に、皆んな尻尾をぶんぶんしている。
中には元気になって…。
と、目を潤ませてる人もいる。

庭の隠れ家を教えて、クッキーを食べた。
緊張で強張ってた顔が、ふっと緩む。
黒くて長い尻尾が、ふるふる揺れている。
~~可愛いじゃないか‼︎
そうだろう。
そうだろう。
美味しいクッキーは、幸せの味だ。
美味しいは正義なのだ。



そうやってメテオとパルスの進軍は数日続いた。
メテオの元気な声が聞こえると、後ろにはようやく項垂れ無くなったパルスが続く。
無表情だった顔も少し緩んで、子供らしい姿が、少しずつ覗き始めた。

はじめ午前を歩くと午後は休んだ。
微熱を出すこともあった。
でも徐々に慣れて、息も切らさず歩くようになって、
明日は町に行くぞ!
と、メテオは宣言した。



館を囲む城壁の一角には穴がある。
大人は通れないくらいの小さなものだ。
二人はそこから抜け出た。
正直、その穴は公認だ。
子供はそのくらいの方が良し!
というライサンダーの方針で、大人はぬるく見つめている。
そうとも知らず子供は真剣にコソコソしている。
ちょっとした楽しみで、パルスの尻尾もふるふると揺れていた。


町は城壁から伸びる石畳の道に沿っている。
直ぐ前に中央広場があり、そこから外壁に向かって東西南北の大門への道がある。

メテオは中央広場を伺った。
その真ん中には、馬にも飲ませられる水場があり、噴水がある。
子供が五人遊んでいた。

「ラース‼︎  ロペ!」

メテオが駆け寄ると一斉に振り向いた。
そして一斉にメテオの後ろのパルスに目を丸くする。
ラースはメテオより体積的に二倍はありそうな、猪の獣人の子だった。
他にもねずみや犬の獣人の子供が、珍しそうにパルスを見る。
ジロジロ見られる事に、パルスはもじもじと視線を落として
「よろしく。」と言った。

「とりあえず市場で何か食おうぜぇー」

おー! と全員で駆け出す。
中央広場から西に伸びる道は、庶民よりの商店が並ぶ。
市場は裏路地にはいって直ぐだ。

直ぐは、元気な子供の足でと言うことで。
パルスはしばらく寝込んでいる間に、自分がかなり鈍っていることを実感した。

熱と痛みで動く事を怠っていた。
こんな鈍い動きでは、シルフィを助けられない…。

わーっ‼︎

と消えていく小さな影を追いながら、パルスは唇を噛み締めた。
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