駆け落ちの後始末を、僕らに求めるのはマジ勘弁して欲しい

たまとら

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パルスと愉快な仲間達 〜辺境〜

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はい、一目でわかりました。

あの日帰還されたライサンダー様が、スリングの中をお見せになられました。
そこには痩せて小さな黒猫がおりました。

ああ、この子が……。

私は侍従に指示を出して、ベッドとお医者様を手配しました。
そして奥様の元へとまいりました。
ノックに応えられた奥様は、私の顔を見て直ぐにお立ちになられました。
~~顔に出ていたとは!
家令としてあるまじきことですね。
反省です。


はぁはぁと全身で息をする姿に胸が詰まりました。
しかもこうなったのは、祖父である筈の王の爪だと聞いて、奥様も殺気をダダ漏れされて、お医者様に叱られておりました。

王女のお子様は二人。
白と黒……。
王はこの黒い小さなお子様を、いらぬ!
処分せい‼︎ と、仰ったと言うのです。

ライサンダー様はお子様は死んだ。
この子は私が遠縁から預かった子だ。
と、おっしゃいました。
そう言いながら、パルス様は弟君のシルフィ様を助け出す為に自分の手を取ったのだ。
自分はなんとか後押しをしてやりたいのだ。と。

はい、歳をとると涙腺はゆるゆるです。
おふおふと泣いてしまいました。
部屋の者は全て泣いておりましたので、恥ずかしくはございませんでした。
ただ耳が垂れてしまったのは、家令としてあるまじき事でございました。




メテオ様はそーっとパルス様を覗き込んで

「変な顔。」

と、おっしゃいました。
私はにこりとするだけです。
熱と腫れが引いた時、さぞかし驚かれるでしょう。
……ソレを思うと、尻尾がふさふさと揺れております。
その時のメテオ様の顔を想像して、愉快な気持ちになりました。

ふふふっ。
歳を取っても男は悪戯な子供ですね。



案の定、メテオ様は衝撃だったようです。 
それ以来、とても世話をなさっております。
今まで元気が良すぎて、ちょっと手に負えなかったメテオ様が、人の世話を……。
感涙でございました。



パルス様は、まず体を鍛えられました。
~~でしょうね。

そして体が出来てくると、私の所にいらっしゃいました。


貴族の子弟は、お茶の種類や生産地を教養として学びます。
でもパルス様は、そのお茶をいかに香り高く淹れられるか。
いかに窓磨きが効率よく出来るか。
いかにベッドメーキングが素早く出来るか。
を、教えて欲しいと頭を下げられました。

その姿には、弟の為に"死角をなくす"という決意が見え隠れしております。


私は、そっと涙をちょちょぎれさせました。
もちろんですとも。
決して手を緩めません。
完璧な執事に模せるように、私は力を尽くします。
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