駆け落ちの後始末を、僕らに求めるのはマジ勘弁して欲しい

たまとら

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パルスの血族

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ラルーナが死への階段を登った時。
タイタニアからは何のリアクションも無かった。
もっともこちらから連絡する手立てが無かったのかもしれない。
オベロン王は何も語らず、死への痛みに耐えているようだった。

ただ、ルザの樹海に接している領はタイタニア探しに火がついた。
ルザの樹海は別名"暗黒の迷い森"と呼ばれて国境にある。
中は暗く、近寄るだけで体内の感覚が狂っていく。
どんどん負の感情に囚われて、人型を維持できずに獣に変わり、彷徨ったまま出口がわからなくなると言われていた。

国境ゆえに、シーシュスも接している。
先代の領主もオベロンの出現に驚いてタイタニアを探していた。
もちろんライサンダーも。
だが、見つからないのだ。

ただ、このルザの樹海の周りには古くから言い伝えがあった。
夏至の時に"森の中から人影が手招きする"
"ある井戸の水が枯れて何かが上がってくる"
ロダ川も、夏至の時にポロロッカが起こる。

"夏至"と"水"それがタイタニアに繋がっていると研究者は信じていた。


ライサンダーは伝承にある井戸の全てに、夏至の前にパルスの髪を少し切って、封印した手紙と共に投げ込んだ。
血族としてのパルスの髪ならばタイタニアへの扉が開くかも知れないと思ったからだ。



~~そして、返事が来たのだった。


返事はユグロロという、崖の岩肌に巣を作る鳥が運んできた。
人混みの中、迷う事なくライサンダーの元へ飛んできた鳥は、通信文を落とした。
ライサンダーは詳しく綴った手紙を鳥に託した。
そうやって密かな文通のあと、タイタニアから鳥が魔道具を運んできた。


世界大戦以来、魔法は消えつつあった。
生活魔法すら使えない者も増えた。
魔道具を直に見た者はあまりないだろう。
魔道具など、御伽のようだ…。 
未知への興奮でライサンダーの尾はぶんぶん揺れる。
転移する魔道具。
……こんなもの、王に知られたら、反逆を疑われてしまうな。
タイタニア、全ての研究者が探すはずだ。
こんな物をポンと出すほどの科学力なのか。


まず、説明書通りに場所を空けた。
誰にも覗き込まれないようにする。
広い場所にソレを置く。
発動する様に少し力をながすと、直ぐに離れた。

魔道具がチカチカと点滅する。
そこから1メートル程の陣が辺りに広がった。
その上に光が流れる。
そして、噴水のように光が幕になって立ち昇った。

転移は知らない場所には出来ない。
転移した場所に、何かがあった場合、自分の細胞がその物と癒着する恐れがある。
その為に陣の上の物はすべからく消滅させられる。
排除する為の光が陣を掃除して、さらに風が湧き上がった。


ライサンダーはこの目新しい物に、食い入るように見つめている。

やがて陣の中に人影が浮かび上がり、ライサンダーは、片膝をついて迎えた。
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